かぶれの世界(新)

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今ここにある危機、市場は咀嚼できるか

2005-08-03 17:32:12 | 社会・経済
ロンドンの同時爆破テロに対し市場は反応しなかった。中国人民元の切り上げ後急上昇した円は何もなかったように切り上げ前の状態に戻った。原油価格が61ドルを越えても物価は安定、雇用は増え、昨日のナスダックは4年ぶりの高値をつけた。昨年6月以来の米国連銀の短期金利上昇でも長期金利は上昇せず、GMや金融機関の苦戦はあるものの企業全体の利払い負担が軽減した、未だに住宅ブームも衰えを見せない。仏蘭の国民投票でEU憲法を否決した時下落したユーロもここに来て値を戻しつつある。

アナリストは同じ情報を見ているはずなのに全く逆の見方をしており混乱してしまう。たとえば7月の報告でクレディ・スイス・ファースト・ボストンは第3四半期に世界経済は転換点を迎え上向くと予測し、三菱証券は日米ともに年後半にかけて景気減速を予測している。グローバル市場はいろいろな出来事を底なし沼のように飲み込み咀嚼して、全てを相対的な価値で換算し位置づけしてしまう。逆に反応しないように見えても、実は事前にリスクとして織り込まれていたと説明される。全く分かりにくい。

しかし、我々の身近に市場が咀嚼できないような事件、或はそれが転換点となってそれ以降の市場もしくは世の中の流れを変えてしまう事柄が迫っていると私は思う。確かに今まで危機的な状況などといわれた事件や状況も咀嚼され市場に織り込まれ表面的には忘れ去られた。中国人民元の切り上げの価値はアナリストによって分かれるがいずれにしても評価に織り込まれた。依然人為的な不透明さはあるがサプライズを嫌う市場から見ると予測可能な領域が増えたと歓迎されている。

私は、世界市場がそう簡単に咀嚼できない事件が近々に起こるとすれば、それは米国住宅バブルの破裂であると見ている。世界市場は依然米国景気、即ちGDPの7割を占める好調な消費に頼っている。米国の住宅バブルは日本と違い個人住宅が主であり、過去4年間で個人負債が5割増え約11兆ドル、そのうち7割が住宅担保の借り入れと報じられている。住宅価格上昇の16%は現金化され消費に回っているらしい。先に報告したように住宅価格上昇を当て込んだ住宅ローンが増えている。しかし幾らなんでも一部の地域の住宅価格上昇は異常である。この構図が崩れたときのインパクト連鎖はITバブル破裂に勝るとも劣らないのではないかと危惧する。米国は全力を挙げて住宅バブルの軟着陸を講じなければならない。

郵政民営化の行方も先月「郵政民営化の視点」で報告したように日本の構造的なパラダイムが将来どうなるかを決める決定的な要因となりうる。短期的には当然政局流動化の市場インパクトが予想される。しかし、長期的にはもっと深刻で法案が可決されるか否かで日本のあり方を決める政策決定プロセスが近い将来かなり違ったものになる可能性がある。本件は日本市場は当然として世界市場に与える影響も大きく、最近では珍しく世界中から注目されている。直近の影響よりも今後の流れを決める転換点になると私は予測する。■


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