グレタ・ガルボの美しさに文句のある人はいないと思う。ニューヨークのどこかで静かに生きていた彼女は、美女という概念がおそろしく変化した近年の映画を、どんな思いで観ていたのだろう。
「ニノチカ」Ninotchka (‘39 米)
監督:エルンスト・ルビッチ 脚本:ビリー・ワイルダー 主演:グレタ・ガルボ
ソ連からパリにやってきたガチガチの共産党員ニノチカ(ガルボ)は、プレイボーイの伯爵と出会い……テンポが遅かろうがモノクロであろうが、ウィットに富んだ会話の妙は古びない。グレタ・ガルボの美しさには目がくらむ。左翼少年だったころに、このユーモアが理解できただろうか。
反共を主張するなら、このぐらいの余裕がほしいよね☆☆☆★★★
「細雪」(‘83 東宝)
原作:谷崎潤一郎 監督:市川崑 主演:岸恵子、佐久間良子、吉永小百合
邪悪と無垢の共存する三女を演じた吉永小百合がすばらしい。この人、いつもの被害者演技を捨てれば、もっともっと大女優になりえたと思うんだけど。年齢を重ねるにしたがって美しくなる希有な女優。佐久間良子がこんな器用な芝居ができる人だとも思わなかった。つまり、監督がうまかったのだろう。女々しい婿役の石坂浩二もけっこうけっこう。画面の美しさも圧倒的。
要するに『和風の邪悪な若草物語』☆☆☆☆
「レディ・イン・ザ・ウォーター」(‘06 米)
監督:M.ナイト・シャマラン 主演:ポール・ジアマッティ
展開のかったるさに早送りしそうになる。すべてをアパートの住人だけで解決しようとするストーリーにはさすがに無理があるぞ。アメリカ版「めぞん一刻」か。でもなにかこの作品には心惹かれるものがある。おそらくは二十年前ならヒロインに選ばれるはずもないブライス・ダラス・ハワードのくせの強いルックスのせいだろうか。
なさけない独身男をまたしてもポール・ジアマッティ好演☆☆☆★