事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ドラマへの遺言」倉本聰& 碓井広義著 新潮新書

2020-04-11 | テレビ番組

遺言だから倉本聰の発言には遠慮がない。とんねるずとの「火の用心」は失敗作だったとか、ビートたけしへのむき出しの嫌悪とか。

「勝海舟」降板のあたりはわかっていてもなお、渋い。現在、朝ドラの脚本家の降板劇が話題になっているが、こちらは果たして……

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「ゆとりですがなにか」(2016 日テレ)

2019-07-20 | テレビ番組

宮藤官九郎にはぜひとも訊いてみたいことがある。書き始める前に、どれだけ精緻な箱書きを用意しているのか、と。

ひょっとして書いているうちに自然に伏線が刈りこまれ、平仄が合うのだとすれば(どうにもそんな感じなんですよ)、おそろしい才能というべきだ。

いきなり最終回の話で恐縮だが、童貞の松坂桃李が小学生たちに性教育の授業を行うという皮肉で必死なシーンと、上司と関係した婚約者(安藤サクラ!)のことがどうしても許せず、結婚式をボイコットしようとする岡田将生の必死さがシンクロ。この展開はよほどの手練れな脚本家でなければ、あるいはドラマの神に愛される天才でなければ書けないはずだ。

タイトルどおり、世代のお話。上の世代から勝手にレッテル貼りをされてしまうのが世代論というものだが(ちなみに、わたしの世代は筑紫哲也によって“新人類”とネーミングされた)、ゆとり世代(まあ、便利だから勝手にレッテル貼りしよう)への上からの圧力がどれだけ強力で理不尽かがこのドラマで理解できる。

もっとも象徴的なのが、岡田将生の就活中の妹(元AKBの島崎遥香)だ。学生生活のほとんどを就活にささげたのに内定がもらえない彼女のいらだちは、まるで生殺与奪の権を従前からにぎっているかのような上の世代の醜さを露わにする。

それだけだとあまりに表層的なので、ここで登場するのが若者の話を“ひたすらに聞く”ことを商売にしている吉田鋼太郎だ。彼は若者を癒やすテクニックを持っているが、しかし私生活では最低の人間であることが息子(柳楽優弥)によって暴露されるおかしさ。そして、その最低の親子関係を感動にもっていくのが宮藤官九郎の得意技でもある。いやー泣かされた。

え、好評につきスペシャルドラマもオンエアされてたの?そっちも見なきゃ!

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「逃げるは恥だが役に立つ」(2016 TBS)

2019-07-08 | テレビ番組

情熱大陸、エヴァンゲリオン、真田丸(笑)などのパロディから各回がスタート。コンバースを履いて走るウエディングドレス姿の森山みくり(新垣結衣)のバックに

「契約結婚」

「小賢しい女」

などの字幕がかぶさる。そう、このドラマは「小難しい男」津崎平匡(星野源)と「小賢しい女」みくりの「契約結婚」のお話。まあ、解説するまでもなく、みなさん見ていたんでしょうけれども。

しかしこれはきわどいテーマだ。石川達三の「僕たちの失敗」を持ち出すと年齢がバレバレだけど、視聴者の共感を得るにはハードルが高い……ということでオープニングのパロディを初めとしたギャグが過剰なほどしこまれているんでしょう。あ、この手法は「99.9 刑事専門弁護士」と共通している。

就職の一形態として「事実婚」を選択するみくり。これだけだとお茶の間(死語)からバッシングを受けるのは必然なので、このカップルはセックスをしないルールを確立する。だけれども次第にお互いを、という流れは、視聴者が容易に予想できるがために受け入れられたんだと思います。このひねりはうまい。

星野源雑談集1」(マガジンハウス)を読んで、特にケンドーコバヤシとのエロトークに驚愕。そうか星野源の魅力とは、おしゃれな楽曲とエロとの落差にあるんだなと気づく。ということで、人気のこのドラマを見なくてはとレンタル。初回こそリズムが悪かったけれど、次第次第に面白くなる。高視聴率納得。

信長協奏曲」に続いてコミックの原作。レベル高いっすねほんとに日本のコミックは。肌合いとしては小林じんこの「風呂上がりの夜空に」に近いかな。

箱入り息子の恋」にしても、漫画からいきなり飛び出してきたような星野源の存在がなかったらおよそ成立しないお話ではなかったか。そしてこのドラマはセックスの部分から目を背けてばかりではない。その意味でも、新垣結衣とエロを軽快に語れる星野源は貴重な存在だ。

それとやっぱりラストの恋ダンスの素晴らしさよね(古田新太がさすがにうまいんだ)。つい練習したくなりました(しないけど)。日本版「40才の童貞男」として傑作。

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「信長協奏曲(コンチェルト)」

2019-06-18 | テレビ番組

フジの月9において、まあ、悪くはない視聴率ではあったけれども、さほど騒がれずにいた印象だったのに、劇場版は大ヒット。心底おどろきました。

ということでドラマ版と劇場版を続けざまにレンタル。

ああ、このストーリーはよく考えてあるとびっくり。戦国時代にタイムスリップした高校生サブロー(あまり成績がよくないので歴史を知らないのが後半に効いてくる)が、信長の身代わりとなり、“平成の常識”で天下統一にほぼ成功する。

平和を希求する姿勢で部下の心をつかむあたり、周到。しかし、ご存じのように織田信長は残虐な一面もあり(延暦寺の焼き討ちがその好例)、そちらは本物の信長の判断ということに……なるほど、協奏曲だ

豊臣秀吉が実は信長への復讐のために策謀をめぐらしていたり、視聴者がみんな信長は本能寺で死ぬことを知っているのでどう結末はどうつけるのかさっぱり読めない、とか(だから解決篇である劇場版がヒットしたのだろう)アイデアがてんこ盛り。

これはもう、まず原作の漫画がよくできているのだろう。ただいま鑑賞中の「逃げるは恥だが役に立つ」にしても、日本のコミックって本当にレベルが高いんだなあ。

信長&明智光秀(ミッチーと呼ばれる)の小栗旬は、高校生役がギリだいじょうぶ(笑)。秀吉(サルくん)の山田孝之は、邪悪さをむき出しにして楽しそう。池田恒興(ツネちゃん)の向井理は、ふたりの主君の間でゆれうごく感じをうまく出していた。

最高だったのは松永弾正の古田新太。タイムスリップしたやくざが、戦国の世が性に合っていて成り上がり、

「え、笑っていいとも終わったの?

と驚くあたりの愛敬がうれしい。問題は、妻を演じた柴咲コウ。信長をつねに「うつけ」と呼ぶツンデレぶりが激しく魅力的。そうだよ「おんな城主直虎」はこの線でやるべきだったんじゃないですか柴咲さん!

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99.9 刑事専門弁護士 シーズン2(TBS)

2019-06-03 | テレビ番組

シーズン1はこちら

高視聴率で終えたシーズン1から2年近く経ってシーズン2のオンエア開始。なんとTBSはここで主要キャストを変更してきた。

パラリーガルがごひいき渡辺真起子からアジアンの馬場園梓に。そして同僚の弁護士役が榮倉奈々から木村文乃へ。近ごろ絶好調の木村だけど、この変更はどうしてだろう。

まあ、低視聴率にあえいだとは言え、「神の舌を持つ男」でコメディエンヌとしての冴えを見せた彼女のことなので安心。というかわたし、彼女のことがけっこう好きなので全然OK。

今回の柱になっているのは「裁判官ははたして公正か」だ。シーズン1で東京地検のビッグボスだった奥田瑛二を辞任に追いこんだ斑目法律事務所の面々は、笑福亭鶴瓶が“眼だけは笑わない”演技で怖い東京地裁の裁判官と対決する。

「ええ判決せぇよ」

と同僚や部下に声をかける鶴瓶。いい判決とはなにか。元裁判官である木村文乃は彼を尊敬しているが……

シリアスなテーマをあつかっているだけに、むしろ喜劇的工夫が満載なのはシーズン1以上かもしれない。片桐仁の

「明石、行きまーーーす!」

は耳に残るし、TBSの伝統である楽屋オチも健在だ。にしてもサプライズゲストが長江健次、田中美奈子、IZAM、最終回にいたっては庄野真代って、どういうチョイスなのだろう(笑)。

シーズン1は父親をめぐる冤罪をあつかっていたために、沈鬱な表情をうかべることも多かった松本潤だが、2ではドラマの主体は木村文乃がなぜ裁判官を辞めたかに移ったため、むしろのびのびと親父ギャグをかまし、周りをふりまわす悪魔っぷりが加速している。

このどSぶりこそがこのドラマの最大の美点ではないかと思う。シーズン3の制作は必至でしょ。

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99.9 刑事専門弁護士 シーズン1 (TBS)

2019-05-06 | テレビ番組

刑事訴追されてしまえば有罪率は99.9%。日本の司法のゆがみがこの数字に集約されている。裁判所と検察との距離は、弁護士とそれに比べてはるかに短いらしい。

その事実に驚いたTBSのプロデューサーが、この企画を日曜9時というTBSの看板時間帯で実現。なんで今ごろ観てるんだよと突っこまれそうだけど、わたしはほら、ドラマを毎週見るという習慣がないし、ただひとつ観ている大河ドラマのすぐ後の時間帯なので、その頃は原稿をまとめていますから(笑)。

検察と警察、そして裁判所の問題に切り込んだ作品といえば、近年では周防正行の「それでもボクはやってない」や、是枝裕和の「三度目の殺人」が思い出される。だから本来はこの二作のように、陰鬱で陰惨なお話になるはず……ならないんだなあ(笑)。高視聴率はそのあたりの工夫によって達成されたのだろう。

とにかく徹底的にコメディタッチで押しまくる。斑目(まだらめ)弁護士事務所のスタッフ、松本潤香川照之はオヤジギャグを競い、榮倉奈々はプロレス(特に新日)に夢中、マギーと片桐仁という、ほぼキャラがまるかぶりのふたりをコメディリリーフに使うぜいたくぶり。彼らのスラップスティックな動きは見ものだ。

てなことを言いつつわたしは、渡辺真起子のセクシーさにクラクラきているんですけれども。

思えばわたしは松本潤のドラマを見るのは初めてだ。わたしは彼の特徴は“暗さ”だと思っていて、冤罪被害者の息子という設定はそれなりに似合っている。ただ、こんなに喜劇がうまい役者だとは知らなかった。日本でいちばんスーツにリュックが似合う人かも知れない。

わたしは女性の審美眼に問題がある男として有名だけど(とてもうれしい……わけないだろ)松本潤というのは美男なんですか?そのあたりをつきつめると怒られそうなのでやめておきます。

さあ早くシーズン2を借りなければ。

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「鹿男あをによし」 (2008 フジテレビ)

2019-04-15 | テレビ番組

わたしは万城目学のファンだ。なにしろ彼の小説は全部読んでいるくらいだし、映画化された「鴨川ホルモー」「プリンセストヨトミ」「偉大なる、しゅららぼん」も見逃していない。

わたしは綾瀬はるかのファンでもある。度外れたコメディセンスと天然なコメント、そして運動神経には恐れ入る。

わたしは夏目漱石の「坊っちゃん」も好きだ。よくよく考えると主人公は不幸のかたまりで、しかし彼の伝法な語り口と、あのラストには泣かされる。

ということで、万城目学原作、綾瀬はるかがヒロイン役、下敷きになっているのが明らかに「坊っちゃん」なストーリー……だからオンエアから十年以上たってわざわざ「鹿男あをによし」のDVDをすべてレンタルしたわけではないの。

それはひとえに多部未華子のためなのだ

決して美人とはいえない(自信なし)彼女が、映像になるとどうしてあんなに魅力的なのだろう。特にけなげで一生懸命な役をやらせたら天下一品。「フィッシュストーリー」「深夜食堂」「デカワンコ」など、彼女から目が離せなくなってしまう。

このドラマでも、ある事情で剣道の対抗戦に優勝しなければならなくなり、彼女は無理をして優勝盾をゲットする。感動。むかしの青春ドラマのよう。逆に言えば、現代において青春ドラマをやろうと思えば、鹿をしゃべらせるぐらいの仕掛けが必要なのかと思い知らされる。

原作は直木賞候補になったけれど、選考委員だった渡辺淳一が石田衣良に向かって「今度のにはまいった。鹿がしゃべるんだよ」とお手上げだった話は紹介しましたよね。

ドラマでは主演の玉木宏は綾瀬はるかと結ばれるかのように描かれたけれど、原作において綾瀬はるかの役は男(笑)。万城目学はその後、「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」という一種の続篇に、ある夫婦を登場させており、それはどう考えても玉木宏と多部未華子なんだよね。そっちもドラマ化してくれないかなあ。

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極私的朝ドラ史PART34「ひよっこ2」

2019-03-28 | テレビ番組

PART33「ひよっこ」はこちら

読者からお知らせをいただいたのに、学校事務職員がまさかこの時期に「夜なのに朝ドラ」を見ることはないだろうと思っていた。でも昨日の第三回をたまたま見てびっくり。そして今日の最終回で号泣。

手練れの脚本があると、ここまで最初の2分で泣かせてくれるのか。そこからずーっっっと泣かされました。岡田惠和マジック!

「よく考えるとこれって『ちゅらさん』の北関東版よね」

妻は泣きながらも冷静。うん、だからいいんじゃん。

「みね子ぉ」

「ちよ子ぉ」

このやりとりだけで泣かせてくれます。

わたしはリアルタイムですべてを見ていたわけでもないのに(だから妻にいちいち「これはどういう役?」と確認)登場人物たちに即座に感情移入。バスの運転手まで、徹底的に書き込んである。有村架純の髪のサラサラ具合は尋常じゃありません。

おみごとです。もちろん「ひよっこ3」はあるんですよね岡田先生!「ちゅらさん5」もお忘れなく。

急に思い出したんだけど、すずふり亭の先輩コックのやついいちろうは、わたしと息子が東京に行ったときにいきなり電車でいっしょになった人でした。当時は髪がチリチリ。東京って芸能人でいっぱいなんだと息子は誤解したはず(笑)。

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「阿部一族」(1995 フジテレビ)

2018-11-05 | テレビ番組

原作森鴎外。あの、殉死をめぐるお話。気分爽快な時代劇になりようがない。完成からオンエアまで2年もかかっているのはそんな事情もからんでいるかも。

しかしそこを、脚本古田求、美術西岡善信、監督深作欣二というものすごいスタッフと、山崎努佐藤浩市真田広之渡辺美佐子麻生祐未(大好き)という豪華キャストで強引に感動大作にもっていった。この頃のフジテレビは気合いが入っていたんだなあ。

とにかく面白い。

武家の社会が嫉妬に満ちていたことは現代の会社にも通ずる。そこで開き直って一族が籠城する、ってあたりはストを打つって感じだろうか。違うか。

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「赤めだか」(2015 TBS)

2018-05-07 | テレビ番組

何度でも言います。わたしは談志が嫌い。多くの人が落語の革命児だと賞揚していることはもちろん承知していて、弟子の有能さは他の一門をはるかに凌駕していることも承知しています。でも嫌い。

彼が落語における芸そのものよりも、落語というメディアに意識的で、おかげで現在にいたるまで(廃れていてもおかしくなかった)この“古典”芸能が生き延びているのだとも思う。でも生理的に受け付けないんだよなあ。

弟子の立川談春が書いた「赤めだか」のドラマ化とは勇気ある企画。あの原作自体がすばらしかったのはもちろんだが、落語をネタにしたドラマに外れなしの伝統は今回も守られた。要するに、生半可な覚悟では落語に取り組むことなどできず、したがって気合いの入ったドラマにならざるをえないんでしょう。

古くは「幕末太陽傳」があり、近年では「タイガー&ドラゴン」「しゃべれども しゃべれども」「落語娘」「寝ずの番」そしてあの「の・ようなもの」「の・ようなもの のようなもの」があった。

伝統的に、これらにおいて、落語を落語家自身が語ることはないあたりが妙味。このドラマにおいても、

談志→ビートたけし

志の輔→香川照之

志らく→濱田岳

そして主役の談春は二宮和也

いずれもみごとな落語家っぷりなのである。そして本職たちが脇をかためるのも伝統。柳家喬太郎(談志に否定されていたはず)、三遊亭円楽(先代の役)、春風亭小朝。おかしいのは春風亭昇太で、本人役で

「いやーよく談志の弟子なんかやってるよね。おれは(おとぼけで有名な)柳昇の弟子でよかったなー」

これ、彼がいつも言ってることです(笑)。

泣かせの脚本で有名な八津弘幸らしく、感動させてくれる。で、仇役に選ばれたのは芸能評論家(リリー・フランキー)。談志は彼に激しい口調でこう放つ。

「おれのことはおれが一番よくわかってる」

あ、おれが談志が嫌いなのはここだよな、と納得。演者である彼よりも先に、評論家としての彼がどうしても前に出てくるから。

談志の噺ばっかりになってしまいましたね。脚本、演出、役者、すべて上質なドラマでした。薬師丸ひろ子をナレーターにもってきたのは見事な芸だったなあ。

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