事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「時間ですよ」(TBS) 第一夜

2008-08-03 | テレビ番組

57529954  森光子、船越英二がいとなむ五反田の銭湯「松の湯」。従業員の沢田雅美や岡本信人とともに、いかにもTBSらしい人情ドラマが展開される……はずだったのである。当初の脚本家は橋田壽賀子。

ところが、TBSの社員ディレクターだった久世光彦はその予定調和に満足できなかった。人情ドラマの枠組みはそのままに、沢田と岡本を蹴散らし、従業員役にスパイダースのボーカルだった堺正章と、新劇人だった樹木希林(当時は悠木千帆)をひっぱってきた。

彼らとからむ「隣のマリちゃん」に天地真理(第二シリーズ)、堺、樹木と「トリオ・ザ・銭湯」を組むお手伝いのミヨちゃんに浅田美代子を起用(第三シリーズ)してブレイクさせたのもこのドラマだ。

 後期のメインライターになる向田邦子が描くドラマは上質だったはずだが、子どもだったわたしの印象に残っているのはどうしたってマチャアキを中心にしたギャグシーンだった。

 わたしが忘れられないのはトリオ・ザ・銭湯のこんな場面。長男夫婦(松山英太郎・松原智恵子)にようやく子どもができたらしいという話になり……

健ちゃん(堺)「よかったねえ」
浜さん(樹木)「んー。でもねぇ、これをちょっと見てよ」
と、松の湯の面々の生活時間帯を描いたフリップを持ち出す(この時点ですでに不条理なのだが)。
健ちゃん「……?」
浜さん「ね?この夫婦、生活時間がずれてんのよ」
健ちゃん「てことは、いつ子どもをつくったわけ?」
浜さん「健ちゃん、あんた……」
健ちゃん「な、何いってんだよ!オレじゃないよー!」
もめる二人。そこへいきなり
お手伝いのミヨちゃん「すいません実はあたしですっ!」
健・浜「ばかばかしくてやってらんねーや」と退場。

間(ま)をいかした切れ味するどい演出もあって「時間ですよ」の視聴率はうなぎのぼりとなった……以下次号

参考テキストは画像の「『時間ですよ』をつくった男」(加藤義彦)

コメント (2)
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「久世塾」久世光彦ほか著 平凡社

2008-08-03 | 本と雑誌

58283348 21世紀の向田邦子をつくろう、というキャッチフレーズのもとに開講されたシナリオライター養成講座の講義録。タイトルからもわかるように、向田の畏友だった久世光彦が主催者となり、当代一流の脚本家たちが本音をさらしている。脚本が作品の叩き台であることに誇りを抱く旧世代、普通の女を徹底的に描く内舘牧子(三菱重工でOLをやっていたなんて初めて知った)、劇伴の極意を平易に語る小林亜星……意外な拾いもの。

脚本とは要するに、久世に代表される演出家との格闘なんだなあ☆☆☆★★

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「オトナ語の謎」糸井重里監修 新潮文庫

2008-08-03 | 事務職員部報

410118312009 いつの間にわたしたちは世間のマナーを身につけ、日々実践するようになったのだろう。「いつもお世話になっ」てもいない相手に、平気で「いつもお世話になっております」なんてことを条件反射的に口にしたり、一日付を“いっぴづけ”と読むようになったのはいつから?これがオトナになったということなのか……

「今現在」
「いちばんベスト」
「基本オーケー」(こう言われた場合、オーケーではないということ)など、この本でとりあげられているオトナ語の数々は、身内以外を排除する隠語であると同時に、きついことこの上ない世間を渡る過程で、できるだけ互いの神経を痛めないためのツールでもあるのだろう。

どうとでもとれるニュアンスに過大な力点を置いているわけで、日本および日本人の偉大なる(半分は皮肉)発明品と形容できなくはない……と弊社では考えているところでございます。兄弟本「言いまつがい」との併読はマストと手前どもはプレさせていただきます!

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小津。

2008-08-03 | 邦画

Oz  さあ、今回は文句なしの名作を特集。映画界にさん然と輝き、後進の映画人を歯がみさせる作品の数々。単にフィルムという物体であるにとどまらず、映像ソフトとして永遠に稼ぎ続けるおいしい商売でもある。封切られたときは、まさか小津自身もこんな時代がやってくるとは想像しなかっただろうが。
紹介する作品名はみんな漢字二文字です。

早春」(’56 松竹)
監督:小津安二郎 出演:池部良 岸恵子 淡島千景 浦辺粂子

 小津の特異さをつくづくと感じる。淡島千景の美しさにはおどろいた。池部良が二度と起用されなかったのが小津のカレーすき焼きを批判したから、という風説は本当だろうか。

岸恵子はもうちょっと年齢を重ねてからの方がずっと綺麗☆☆☆☆

晩春」(’49 松竹)
監督:小津安二郎 出演:笠智衆 原節子 杉村春子

 高名な笠智衆と原節子の京都のシーンだけでも何回目かなあ。ちょっと怖い眼をしたときの原節子は怖ろしく思うぐらい綺麗。

小津映画のタイトルの季節用語って、なにかのシンボライズ?☆☆☆☆

Bakushu麦秋」(’51 松竹)
 監督:小津安二郎 出演:原節子 笠智衆 杉村春子 佐野周二 菅井一郎

傑作。んもう大傑作。呆然とする。高名な小津映画はひととおり観たつもりだが、この作品が小津の最高傑作だと思う。妻も「『麦秋』がいちばん好き」と言っていた。淡島千景と三宅邦子って美人だったんだなあ。どうも小津作品では女優の美しさに驚いてばかりだが、撮る方のプロの技もあったのだろう。信号待ちのシーンの哀切さは比類がない。

生活の背後にさみしさを感じながら、わたしも老夫婦がつくづくとつぶやいたように思う。「今がいちばんいいときなのかもしれないねえ」と。歳をとるってことはさみしい。けれど、それだけじゃない。

椿三十郎」とは違った意味で満点だ☆☆☆☆☆

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