事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

消えたあの人たち①~デブラ・ウィンガー

2007-06-30 | 洋画

Rosanna_arquette わたしが昔大好きだった女優ロザンナ・アークェット(TOTOの『ロザーナ』は彼女のことを歌ったもの)が、一本のドキュメンタリー映画を撮りあげた。タイトルは「デブラ・ウィンガーを探して」SEARCHING FOR DEBRA WINGER。タイトルはロザンナの代表作「スーザンを探して」DESPERATELY SEEKING SUSANにひっかけてある(と思う)。

あの「愛と青春の旅立ち」「愛と追憶の日々」(名作!)「シェルタリング・スカイ」でハスキーヴォイスが印象的だったデブラが、なぜ引退(完全な隠居ではない)してしまったのかをロザンナ自身が多くの女優たち(34人!)にインタビューすることで追うコンセプト。

 ウーピー・ゴールドバーグ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ローラ・ダーンなどが、妻であり母であり、同時に女優であることのむずかしさを語る。印象的だったのはショーン・ペンの妻、ロビン・ライト・ペン

「わたしは仕事を年に1本にしぼっているの。だから、いい脚本だと思っても、家庭を優先して断ることもあるわ……でもね、完成したその作品を観ると別の人が演じているわけよね?『わたしの役』を。そんなとき、わたしはすごく嫉妬してしまうの。それはもう、どうしようもないほど。」

 ジェーン・フォンダのコメントも重い。女優の本質を突いているのだ。
「わたしのキャリアをふりかえると、そんなに数は多くないんだけれど(8回くらいかしら)“凄い”と思える瞬間があるの。やりがいのある映画で、とてもむずかしいシーンを演じきったとき、それを感じたわ。セックス?くらべものにならないわよ(笑)」

Searching_for_debra_winger  しかしこの苦しみ、喜びがありながらも、いまも十分に美しいデブラ・ウィンガーはあっけらかんと語る。

「(引退を)全然後悔していないわ。女優に未練はないの。この家にいることに完全に満足している。」

 共演したリチャード・ギアを「レンガの壁を相手に演技をしているようだった」と切り捨て、大先輩のシャーリー・マクレーンを「自己中心的」と評価した(言うか?普通)毒舌ぶりは健在だ。デブラに限らず、役をゲットできるかが、実力よりもFuckable(やれるか)であるようなハリウッドへの嫌悪感は多くの女優が語っている。

 しかしそのことの是非をこの映画は論じているわけではない。芸能一家に生まれ育ったロザンナが、生き方に(他の業種のはたらく女性と同じように)迷い、悪戦苦闘する『あがき』こそがこの作品のキモなのだろう。

 デブラのような選択に限らず、いつの間にか、あるいは派手に消えていった有名人をこれから不定期に語っていこうと思う。次回は時任三郎だ。お楽しみに。

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日本の警察 その6 ~ 隠蔽捜査

2007-06-29 | 日本の警察

Innpeisousa   さて、「新宿鮫」と同様にドロップアウトしたキャリアを主人公にした警察小説がいま評判になっている。今野敏(びん)の「隠蔽捜査」シリーズ(新潮社)だ。

  今野というのはなかなかとらえどころのない作家で、アクションものをしばらく書き続けていたかと思えばSFに走り、格闘家として空手塾を開いているしアニメの愛好家でもある。ひょっとしたら宗教が入っているかも。右翼っぽいのは確か。ノベルズ系の作家らしく、とにかく著作の量が圧倒的なのでうかつに手を出せないでいたのだ。

 しかし評判を聞きつけて「隠蔽捜査」を読んでたまげた。めちゃめちゃに面白いのである。2作目の「果断~隠蔽捜査2」にしても、ページを開いたら絶対にやめることができない。でも読者を選ぶ作品かも知れないなあ。なにしろ主人公竜崎がこんな野郎だから。

 キャリアたちの競争は、国家公務員Ⅰ種の試験から始まるのではない。そのはるか以前からすでに始まっている。
 受験という制度は、何かと批判の対象になる。竜崎は、負け犬たちが批判しているだけだと考えていた。受験勉強には、集中力と持続力が必要だ。さらに計画性も大切だ。言うなれば、一つのプロジェクトだ。遊びたい、さぼりたい、楽をしたいという欲望を抑え、ひたすら目標に向かってこつこつと努力を続ける。受験勉強に近道はない。そして、結果は、はっきりしている。
 竜崎は小学生の頃から努力していた。中学受験、大学受験、そして、国家公務員甲種の試験。すべて狭き門だった。
 詰め込み教育などという言葉があるが、知識は詰め込まなければ増えはしないのだ。子供に好き勝手をさせていたら、漢字は覚えないし、九九も覚えない。

……やなヤツでしょう?(笑)
大学は東大しか認めず、キャリアのプライドを隠そうともしない。しかし彼のプライドはこんな哲学に裏打ちされている。

彼にはエリート意識がある。エリートには特権とともに当然大きな義務もつきまとう。本気でそう考えているのだが、それがなかなかまわりに理解されない。

……ノブレス・オブリージュを地で行っているわけだ。「隠蔽捜査」のなかで、竜崎の息子は大麻に手を出してしまう。その不始末は竜崎を苦しめるが、彼は一度たりとも職位(警察庁長官官房総務課長)を利用してもみ消そうなどとは発想しないのである。以下次号。

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明細書を見ろ!07年6月ボーナス号

2007-06-28 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Be_set さて、本日も給与明細を読まないウチの職員への叱咤ネタ。

 どうもこの事務だよりを出してから景気のいいネタがなくてもうしわけない。今回も辛気くさいお話です。

 その前に前号の続きをちょっと。
 住民税の増額によって大幅に手取額が減ってしまったわたしたちの給料ですが、所得税が減っている、という理屈は残っています。そして、住民税というのは毎月の給料からしか天引きされません
 つまり、この期末勤勉手当からはさっ引かれない。手取りはめずらしく増えるはずだっ!

……残念でした。今度は、ボーナスそれ自体が減額されているのです。昨年のボーナスの支給月数と今年の分を比較すると、次のようになります。

 去年の夏のボーナスが期末手当と勤勉手当を合計すると2.1月(つき、とわれわれの業界では読みます)。
今年はそれぞれ0.05月分が減額されますから合計してマイナス0.1月のちょうど2月(につき、とわれわれの業界では……)ということになります。

  これは、昨年の県人事委員会勧告で「来年夏までに段階的に0.2カ月引き下げ、年4.2カ月とする」とされた部分の完結編。

実は山形県の場合、他の県に比べてボーナスの月数が最初から少ないのです。昨年、ほかの全都道府県が国に準じて0.05カ月引き上げるなか、山形だけが独自に据え置いているため。この“貸し”はいつ返してもらえるもんだか。

 さて、ちょっと不思議な点があります。公務員のボーナスは、【期末手当】と【勤勉手当】の合算です。しかし今回はなぜか期末手当の方しか減額されていないのです。これはどうしてでしょう。

 うがちすぎ、と言われそうですが裏がありそう。

 おそらくは、将来導入されるかもしれない『評価』『給与』のリンクの一環として、はたらきによって額が上下するであろう勤勉手当の方を温存しているのではないかと思われるのです。振幅をなるべく大きくしておこう、と。

 他県の例を見ておきましょう。たとえば大阪府の場合、昨年の評価育成システムの評価結果により、勤勉手当の月数には0.61~0.838月の幅があるのだとか。

 つまり評価が高い職員には0.8月以上の勤勉手当を支払い、低い職員は0.6月そこそこしか払わない……露骨といえばこれほど露骨なシステムはありません。まあ、それ以上に大阪府の場合、独自にボーナスの4%がカットされているのですが。

6月号はこちら。 8月号はこちら。

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日本の警察 その5 ~新宿鮫Ⅱ

2007-06-27 | 日本の警察

Shinnjukuzame新宿鮫」の魅力が、徹底した取材による(「ラジオライフ」誌を読みこんで警察無線を研究した結果も含む)警察内部の詳細であることは否定できない。

老練な刑事が嗅覚をはたらかせて事件を解決するのも警察なら、権力闘争に明け暮れ、同期の失点を待ち望んでいるのもまた警察の実情なのだと教えてくれる。

 ちなみに一度だけ鮫島役に真田広之を配して映画化もされたんだけど(失敗作です。晶は田中美奈子が演じました。はは)、どんな格闘シーンよりも印象深かったのは鮫島の使う特殊警棒の一閃だった。拳銃や手錠だけが警官の装備かと思っていたら、とんでもない武器も彼らは用意しているのだった。

 また、舘ひろしでテレビドラマ化もされていて(こちらの晶は島谷ひとみ。わりとよかったです)、隠語の数々が字幕付で解説されていたのには笑った。ディテールにこだわった姿勢こそ新宿鮫最大のポイントであることを、NHKはよくわかっていたのだと思う。

その、警察が使う隠語をいくつか紹介しよう。

にんちゃく……人相と着衣

ビラ……逮捕状

タレ……被害届

マルガイ……被害者。あまり“ガイシャ”は使われないそうだ。

マグロ……轢死体

レンコン……回転式拳銃(そのルックスからだろう)

ハム……公安(公の字を分解した)

あかいぬ、あかねこ……放火

マルジー……暴力団

ベントウ……執行猶予

ゲソ……足痕跡

くつがさね……不倫。男の靴を重ねることから。

L2(エルツー)……運転免許行政処分歴照会

カクヒ……最上級機密(マル秘の上をいく)

金バッヂ……国会議員

白バッヂ……検事

マンジュウ……死体

ラジオ……無銭飲食(←無線)

んもう隠語の多さといったら学校どころの話ではない。しかもなんか陰惨。まあ、一般の人にすぐ理解してほしくない、というのもわからないではない。

 しかしやっぱり隠語の多い業界というのは病んでます。調子こいて警官の前で使わないようにしましょうね。警官が使うということは、そのまま常習的犯罪者も使う傾向があるってことだから。

次回は「隠蔽捜査」

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日本の警察 その4 ~ 新宿鮫Ⅰ

2007-06-26 | 日本の警察

前号繰越

Shinjukuzame_1 「新宿鮫」シリーズは、それまで悲惨なほど売れず、『永久初版作家』と揶揄された大沢在昌がブレイクするきっかけとなった。「このミステリーがすごい!」でいきなり第1作がトップを飾り、最新作まで9作が刊行されている。列挙してみよう。

『新宿鮫』(’90年)シリーズ第1作。「このミス」第1位。主人公鮫島の孤立の背景。

『毒猿 新宿鮫II』(’91年) 台湾の職業凶手(殺し屋)との死闘。「このミス」第2位。

『屍蘭 新宿鮫III』(’93年) 臓器売買をめぐる罠。意外な殺人者。

『無間人形 新宿鮫IV』(’93年)直木賞受賞作 。歌舞伎町に出回るシャブの陰に……

『炎蛹 新宿鮫V』(’95年) 南米から持ち込まれた害虫を追う鮫島。

『氷舞 新宿鮫VI』(’97年) 殺人の背後に透けて見える公安の動向。

『灰夜 新宿鮫VII』(’01年) 新宿をはなれた鮫島に訪れる危機。

『風化水脈 新宿鮫VIII』(’02年) 高級車窃盗団の“洗い場”に潜む新宿の歴史。

『狼花 新宿鮫IX』(’06年)広域暴力団と手を組もうとするキャリアとの対決。

……常に一定の質を保っているあたりはさすが。正直にいうと、しかし1作目は過剰な評価だったと思う。ミステリ業界で、ここは大沢を売り出してやろうという気運がはたらいたのではないだろうか。

 キャリアでありながら所轄(新宿署)の刑事として恐れられる鮫島と、彼を支援する窓際族の課長。そして鮫島の恋人はロックグループのボーカル晶(しょう)……設定だけみると完全にオトナの童話だ。

 わたしはこの晶がじゃまでじゃまで仕方がなかったが、どうやら彼女の存在が人気を支えてもいる。しかし大沢も、いい歳をした警官とヒットを連発するミュージシャンとの恋愛には無理があると考えたのか、晶は次作あたりで消えていくことになりそうな気配。

Booka5  このシリーズを読むと、新宿がいかにも外国人だらけで一触即発であるかのように見えてしまう。最新作ではナイジェリア人(!)が薬の密売を。わたしが知っている新宿とは様相が違いすぎる(T_T)。しかし第2作「毒猿」は傑作なのでぜひ一読を。新宿御苑での死闘はすさまじく、結末は苦い。

 さて、設定として新しかったのは鮫島がキャリアだったこと。昔ながらの刑事といえば、背広から開襟シャツの衿を出し、扇子をパタパタさせながら街のヤクザを恫喝する……たとえが古すぎますか。

 鮫島は違う。国家公務員上級試験をパスし、何ごともなければ警察庁あたりでブイブイいわせていたはず。だから新宿署なんて犯罪多発地域で現場にいるような人事は本来ありえないのだ。しかしある「秘密」をにぎってしまい、正義感から権力に盲従することができなかった鮫島は、一種の飼い殺しのように新宿にとどめ置かれる……以下次号

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日本の警察 その3 ~ 踊る大捜査線

2007-06-25 | 日本の警察

前号繰越Police

 それでは、警視庁が他道府県警から別格あつかいされているので、単にあがめ奉られているかというとちょっと違う。

 有名なのは「警視庁と神奈川県警の仲の悪さ」だ。どうしてこの日本で1位と2位の人口をかかえる都県の警察の関係が険悪なのかは判然としない。おそらく1位と2位の規模であるそのこと自体、つまりライバル意識が原因だろうか。多摩川をはさんだ二つの警察は、情報を提供しないなどで足を引っぱり合っている。

 だから犯罪を成功させようと思えば、狛江の銀行(城南信用金庫が駅前にあった)を襲ってそのまま川崎に逃げれば成功率高いんじゃないか、と学生時代に考えたことがある(^o^)。でも、たとえばスピード違反をやっちゃっても、県境を突破できるだろうというのは甘い。追跡パトカーはどこまでも追いかけてくるそうだ。

 まあ、仲が悪いのはこの東京都と神奈川だけではなくて、要するに全国どこでも警察はなわばり意識が強い。刑事の動機付けは“獲物(=犯人)を追う”ことだから、自然なことではある。でもその弊害が、たとえばグリコ=森永事件のときに、滋賀県警と大阪府警などの連携がとれなくて犯人を取り逃がしてしまった失態につながったりもする。

 まあ、他県との連携がとれない程度ならまだしも、警察内部においても手柄あらそいは日常。くわえてキャリア制度というのが話をややこしくしている。

 いま日本には27万名ほどの警察官がいる。しかしそのなかで、意志決定のほとんどをわずか500名のキャリアとよばれる国家公務員採用試験上級甲種合格者が行っていることをご存じだろうか。

 おそらく十年ほど前なら警察関係者しか知らないネタだったろう。しかし「踊る大捜査線」(フジ)がそのシステムをいっきにメジャーにしたわけだ。  このキャリア制度はめちゃめちゃに強固で、三十代前半でいきなり地方の署長を経験させるとか、なかでも東大閥が圧倒的に強いとか(だから「踊る~」の室井管理官は東北大出身なので苦労をしている)、ノンキャリアは出世してもここどまりとか、まるで制度そのものをキャリアが楽しんでいるかのようだ。

 青島が言うように「事件は会議室で起きているのではなく、現場で起きている」かもしれないが、彼らには事件解決よりも優先する事項がてんこ盛りにある。警察官として最高のポスト「警察庁長官」への出世レースこそ最優先なのだ。

 小説でこの制度を露わにしたのがあの「新宿鮫」である。以下次号

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プレステージ('06)

2007-06-24 | 洋画

Prestege_2 19世紀末のロンドン。若き奇術師アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)は、中堅どころの奇術師ミルトン(マイケル・ケイン)の元で修行をしていた。
しかしある日、アンジャーの妻で助手のジュリアが水中脱出に失敗し死亡。事故の原因はボーデンの結んだロープが外れなかったことだった。これを機にアンジャーは復讐鬼へと変貌し、2人は血を流す争いを繰り返すことになる。
その後、結婚し幸せな日々を送るボーデンは、新しいマジック「瞬間移動」を披露するのだが…。

 マイケル・ケインが冒頭で、ある少女に告げている。

「一流のマジックは、タネも仕掛けもないことを観客に確認させる“プレッジ”、次にパフォーマンスを展開させる“ターン”、そしてなにより観客の予想を超える“プレステージ(偉業)”で成立するんだよ。」

 説明しながら彼が行うマジックは、少女に鳥かごを見せ(プレッジ)、小鳥をそのなかに入れてその鳥かごを一気にたたみ(ターン)、心配する彼女に無事な小鳥を見せて感激させる(プレステージ)……。

 このマジックは劇中で何度かくりかえされる。復讐の連鎖から抜けられない二人のマジシャンの行く末を、小鳥がマジでシンボライズしているのだ。

 いかん。どう語ってもネタバレになるような気がする。上映前に監督の「結末を知らせないでください」というメッセージが出るし、確かにあのひっかけを観る前に知ってしまったら不幸かもしれない。ただ、最も大きなひっかけには観客の多くが途中で気づくことだろうと思う。問題は、もう一発でかいトリックがあってこれが多くの映画ファンの逆鱗に触れたらしいのだ。あれは卑怯だろ、と。

Img4  しかしよく考えるとあのトリックについては、いちばん最初のシーン(数多くのシルクハットが野原にころがっている)から提示されているのだ。つまり“プレッジ”は行われているわけ。ターンにあたる復讐合戦は確かに陰惨だが、要するにマジシャンという奇矯な人種である彼らは、もう復讐がどうしたとかいう動機すら見失い、お互いのタネをいかに暴くかに盲目的に固執しているにすぎない。ウチの職場のマジシャン教師もだいぶ変わっているしね。

 観客の多くが怒ったことから、プレステージに欠陥があったと思われるようだけれど、しかし映画館を出てから「……あ、そうか!だから水中脱出のときの結び目をあいつは『おぼえてな』かったんだ。……あのマジックを限定100回しかやれないのはこんな理由か!」という具合に何度も納得できるお得な一本なのである。

「メメント」のクリストファー・ノーランが“スクリーンのなかで行われるマジックは誰も不思議だとは思わない”ことまで計算した映画。ぜひ、チャレンジを。

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舞妓Haaaan!!!('07 東宝)

2007-06-21 | 邦画

Maikohan  中盤に、今にも倒れそうな様子で植木等が出てくる。息もたえだえ、といった感じでセリフをつぶやき、静かに去っていく。この作品が彼の遺作となり、エンドタイトルに讃辞が大写しになる。

 彼の出演に監督の水田伸生(日テレのディレクター。かつて『マジカル頭脳パワー!』などのバラエティも手がけた)がこだわったであろうことは予想できる。

全盛期のクレージーキャッツの主戦場はまさしく日テレ。「およびでない?」で一世を風靡した「シャボン玉ホリデー」が記憶に焼きついている世代の水田にとって、自分の作品に植木を刻印するのは夢だったのだろう。同世代のわたしにはよーくわかるのだ。

 「舞妓Haaaan!!!」は、その植木等が平均(たいら・ひとし)を演じた無責任シリーズ、あるいは森繁久彌の社長シリーズの直系に位置している。

そうでもなければ、あの阿部サダヲを主演に(!!!)東宝が邦画番線で作品を封切るものか。いやーしかし時代は変わったなあ。

 直系だけに、途中まで舞妓オタクの阿部サダヲが「舞妓さんと野球拳をする夢をかなえる」までのサラリーマン喜劇だったのに、しかし宮藤官九郎の脚本は次第に逸脱していく。

 背後に家庭をまったく感じさせない阿部(だから植木のまっとうな後継者なのだ)と、置屋の息子で悲しい過去をもつプロ野球選手の堤真一の意地の張り合いがヒートアップし、彼らの狂気がそれぞれのパートナー(ちょっとネタバレになるので関係は言えない)の柴咲コウと小出早織をまきこんでとんでもないことになっていく……

 宮藤のセリフはあいかわらず絶好調。いきなりプロ野球を引退して俳優になる堤に阿部が吐く罵倒が最高なのだ。

「おまえはスポーツ新聞の住人か?ここ(スポーツ欄)からここ(芸能欄)に引っ越しただけか?」

笑ったなあ。

しかし計算違いもある。阿部サダヲのテンションがのべつまくなしに高いため、舞妓とのお座敷遊びに突入するまでが上滑り気味。まあそれでも、次第に着るものが派手になっていくキムラ緑子(「パッチギ!」二作はよかった)とか、グループ魂&柴咲コウのとんでもないテーマソングとか、にやりと笑えるネタは満載。あまり期待しないで、時間つぶしのつもりで観れば納得の一本かも。

 東宝のサラリーマン喜劇を観るのって、つまりはそういうことじゃないですか。

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日本の警察 その2 ~ アンフェア

2007-06-20 | 日本の警察

Unfair 前号繰越

 さて、日本の警察が一応「自治体警察」になっていることにふれた。

 ところが首都東京においては、内部において公安部(公安が「部」になっているのはここだけ)が強大であり、トップが本部長ではなく警視総監でワンランクもツーランクも上であるなど、他道府県とは別格扱いされている。

 それ以上にわたしたちに警視庁がなじみ深いのは、数多い刑事ドラマがほとんど警視庁管轄を舞台にしているからではないだろうか。前号の「太陽にほえろ!」にしても、あそこは正確に表記すれば「警視庁七曲署強行班捜査一係」における事件の数々なのだ。

踊る大捜査線」は警視庁湾岸署。「西部警察」はその名のとおり警視庁西部警察署。これら所轄(しょかつ)から、“桜田門”あるいは“本庁”と呼ばれているのが、東京都警察本部である警視庁。皇居の桜田門前にあるのでこの名が通称になっている。

むかしの古めかしい建物は、TBSの「七人の刑事」のオープニングでいつも映っていたからおぼえている人も多いだろう。芦田伸介など、彼ら七人の刑事は【警視庁捜査一課】のメンバーだ。

 ここが刑事の“花形”と呼ばれるのにはわけがある。捜査一課への異動は、単なる人事異動ではないからだ。

 警視庁管内において(つまり東京都で)大事件がおきると、所轄に捜査本部が設置される。講堂や道場などに大量の会議用テーブルが運びこまれ、電話が何回線も敷設される場面でおなじみ。捜査の主導権は桜田門からやってきた連中がとるので、ショカツがくさるあたりは「踊る~」で何度もくりかえされた。しかしその桜田門とショカツの合同捜査のなかで、有能だと認められた刑事だけがリクルートされるのだという。

 捜査一課のなかで、ドラマでとりあげられることが多いのは強行犯捜査3~10係。大部屋に100人の刑事がたまっているらしい。プライドの高いのがそんなにかたまってるのか。なんか、想像するだけで息苦しい。いちおう古畑任三郎や「アンフェア」の雪平もここにいることにはなっているのだが……。

 まあ、その実力以上に刑事ドラマに彼らがよく登場するのは、撮影所が東京にあることや(だから東映京都で撮影されることが多いテレビ朝日の場合は、京都府警が舞台になったりする)、田舎に設定すると毎週事件が起こることが不自然になるしね。

以下次号

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日本の警察 その1 「太陽にほえろ!」

2007-06-18 | 日本の警察

Taiyo_scotch 酒太りの中年男のデスクで電話が鳴る。

「はいっ、七曲署捜査一係……なに?矢追町で死体発見?ジーパン、すぐ行ってくれ!」
「わかりました。ボスッ!」

♪ちゃっちゃっちゃーらら~ん♪とやけに足の長い長髪刑事が走り出す。

 おなじみ「太陽にほえろ!」によくある風景。さて、石原裕次郎演じるボスは、あのものすごい貫禄で“係長”ってのは階級的にはどうなの?と思ったことはないだろうか。

ジーパン刑事の松田優作はどのくらい給料をもらっているんだ?彼らは国家公務員なのかそれとも都道府県職員なのか……わたしたちは彼ら警察のことをほとんど知らないことに気づく。

今回の特集は、主な警察小説やドラマをテキストに、彼らの実態をちびっとうかがっていこうという趣向。全容まではとてもとても。なにしろ知り合いがいないもんだから情報が入んなくて。

Shoken01  でもまったく知り合いがいないわけじゃない。高校の同期生は2名が警察官となり、今は刑事をやっている。先入観があるせいかもしれないけれど、やっぱり目つきは鋭い。そのうちのひとりとちょっと前にいっしょに飲んだときのこと。

「オレやぁ、こないだまで警視庁さ出向しったんだ」

「へー」

そのときはよくわかっていなかった。警視庁に行くというのは、そりゃーたいそうなことなのであろうと考えたくらい。
ところで、警視庁って何だ。

 日本の警察は、基本的に自治体警察になっている。各都道府県の公安委員会の管轄の下、警察本部がおかれているのだ。これは、戦前の国家警察の専横が日本をゆがめたとGHQが判断したため、各自治体に権力を分散させたわけ。

 最初は市町村にまで分散させたのだけれど、財政負担がきびしくて(ついでに国家警察的性格を復活させようという意図もあって)途中で棚上げになっている。まるで義務教育費国庫負担制度の行く末をみる思い。

 山形県の場合は、山形県公安委員会の下に山形県警察本部がある。そのトップが“本部長”だ。ところが、東京都の場合には東京都警察本部とはよばず、警視庁と呼び、そのトップが警視総監。なにか違った上級組織のように考えられがちだが(実はそうなんだけど)、基本的に警視庁とは東京都警察本部のことなのである。県警ならぬ「都警」だ。

 まあ、警察は《格》を重要視する世界だから、首都の警察は違った性格も付与されているのだが、それはまた別の話。【もちろん続きます

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