前作「完全寛解の謎」は、がんがどのようなトリックで寛解するのかをめぐるものだった。今回も基本的には同じ構造。特定の皮膚がんにかかった患者が、保険金を受け取るとみごとに快癒していく事例が連続。医師と、団信を扱う保険会社の担当者が組んでこの謎に迫る。
暗殺腫瘍とはぶっそうなタイトルだが、実際にがんを発生させることによる殺人は可能かという魅力的な設定も用意されて読み応えあり。
一作目でがんを消し、今度は意図的にがんを生み出すとはね。超有名な“あれ”をトリックに使うあたり、医師たちが読んだら大喜びだろう。
がん研究のオーソリティである岩木一麻は、実感として「がんと闘うな」とする一部の主張に本気で怒っている様子。そしてそれ以上に、金もうけにしかすぎないエセ治療のことも。
“犯人”の主張も、それはそれで筋が通っているように思え、考えさせられる。今回も、ミステリとしてはもちろん、がんとは何かを知るうえでとてもお勉強になったのでした。