映画俳優であるということは、作品ごとに自分の顔を記録し、後世に伝えることができるわけだ。美男美女の基準は時代によって変遷するので、具体的な画像が残るのはいいことばかりではないだろう。これが伝説だけなら、今ならただの下ぶくれかもしれない小野小町の美女あつかいは永遠に続くわけだし。しかし、今回特集するのは、死後数十年たっても匂うような美しさで魅了し続ける美男の系譜だ。
「新平家物語」(‘55 大映)
監督:溝口健二 出演:市川雷蔵(清盛)、久我美子(時子)、千田是也(頼長)
三部作の第一部。物語としてちょっとはずまない感じだけれど、平清盛の青年時代がまさしく武家の台頭と軌を一にしてあたり、歴史ものとしては面白い。まあ、吉川英治の原作を読めばすむ話なのだろうが。市川雷蔵の若武者ぶりはいい。
毒婦役の木暮実千代の艶っぽさにクラクラ☆☆☆
「雨月物語」(‘53 大映)
監督:溝口健二 出演:森雅之、京マチ子、田中絹代
いったいどうやって撮ったんだろう、というカットが随所にみられる。大映技術陣のレベルの高さが知れる。それにしても森雅之。亡霊も惚れる色男という設定がこれほど似合う俳優もいない。京マチ子がアイドル顔であることも再確認。
マジで金がかかったに違いないモブシーンなど、映画黄金期でなければ……☆☆☆☆
「ときめきに死す」(‘84 ヘラルド・エース=にっかつ)
監督:森田芳光 原作:丸山健二 出演:沢田研二、杉浦直樹、樋口可南子
捨て駒であることに我慢できずに自決するテロリスト。微妙な題材だけど沢田研二にぴったりな役柄。彼を世話する闇医者に杉浦直樹。絶対に彼でなければならなかった、と思わせるぐらいの演技をみせる。クルミの伏線はみごと。丸山健二の原作とはずいぶんと違ったテイストだけど、こりゃ確信犯でしょ。それにしてもジュリーは綺麗。
「涼しいですね」と連発されるセリフが空気感を伝える☆☆☆★★★
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