2011年5月号「英才教育」はこちら。
「われわれは持てる英知を結集し、社会資本を注ぎ込み、原発に代わる有効なエネルギー開発を国家レベルで追求すべきだった」
カタルーニャ国際賞授賞式における村上春樹のスピーチ。大きく報道されたので原発推進派からはかなりの感情的反発をくったようだ。もちろん村上の発言は正しいし、日本の方向性を示しているが「すべきだった」と過去形で語ることで、日本が損なわれてしまったと強調しているととるか、もう遅すぎると判断しているととるか……
「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」
自民党の石原伸晃幹事長が記者会見で。あの親にしてこの子あり、という意味でとりあげたのではなくて、めずらしく正鵠をついている点もあるから。「『原発推進なのか、反対なのか』という問いがあるが、簡単な話ではない」という彼の判断はおそらく正しい。原発推進派とカテゴライズされる人たちの多くは反・市民運動なのであり、反・反原発なのだろう。反原発を標榜する人の多くも、実は反保守、反国家主義だろうし。だからもうちょっとユルユルな形でないと原発の縮小・廃止はおぼつかないような気がする。地道にいきましょう。
「ヤクザとつき合うときは、親分とだけつき合え」
東映の任侠・実録路線をぶちあげた岡田茂東映名誉会長の名言。彼は先月亡くなってしまったけれど、二十世紀末の日本映画界は善くも悪しくもこの人が代表している。線の細い二代目にはあの味はどうしても出せない。とにかく岡田茂はエピソードの宝庫。わたしが好きなのは、仕事のなかった若山富三郎のために……
「(若山も)金に困っとるやろ。(映画のギャラ)一本分渡しとけ」
いいですなードンブリな映画界。
2011年7月号「Wish You Were Here」につづく。