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「気まぐれコンセプト」は、1981年からビッグコミックスピリッツに連載され、以降一度も休載せず、誌上最長の連載となっている4コマまんがだ(Wikipediaより)。相原コージの「コージ苑」、吉田戦車の「伝染るんです」、高橋留美子の「めぞん一刻」など、80年代初期のスピリッツは最強だったので、このころはよく読んでいた。
ネタとしては、要するに広告代理店などの“業界人”の生態を描くことで、結果的に世の中のトレンドを先取りしてしまえ、という欲張りなお話。登場人物たちが勤務する白クマ広告社と荒鷲エージェンシー(電通や博報堂よりもワンランク下の代理店という設定)が、メーカーやTV局との間でどのようにちゃらんぽらんに金を稼いでいるか、どんな苦境も笑ってごまかしているかがギャグの中心。生活のすべてがセックスに奉仕され、広告屋だからよオレたちは所詮よ、と自虐的になりながら、片側では猛烈なプライドが体液のように流れ出ている。まことにアンビバレントな連中だ。原作は「バブルへGo!!」を監督している馬場康夫。作画は馬場の同級生の松田充信。馬場は日立の宣伝部出身だから、むしろメーカーの側から代理店をさめた目で見ていたことになる。
前回、とにかくホイチョイはトレンドのパイオニアたらんとしていると言ったけれど、おかげで彼らの著作は文庫化されることもなく、再刊もめったに行われない(「東京いい店やれる店」だけはケータイサイトでしっかり商売にしている)。テレビの内情をおもしろおかしく暴いた「OTV」など、いま読んでも十分に面白いと思うのになあ。まあ、これが流行りものをネタにしている宿命だろう。
おかげで「気まぐれコンセプト」は、84年以降、一度も単行本化されていなかったのだ……しかしこれはホイチョイの狙いだったことがわかった(狙いじゃないと思うけど)。07年の1月に、二十三年分を再編集し「気まぐれコンセプトクロニクル」として刊行したのだ。これはすごかった。千ページに及ぼうかという量(おかげで重くて重くて)と、常に時代と“軽薄に切り結んでいる”姿勢が圧倒的。いい女とやることを第一義に考える姿勢はそのままなのに、やはり登場人物の行動は時代に影響をうけまくっていることがいやでも感じとれるようになっている。まさしく、クロニクル(年代記)だ。これだけの量があるとギャグはくだらないのに傑作に思えてくる。結果的にホイチョイの代表作になったかも。
そしてやっぱり業界の狂躁が激しいのはバブルの時代。馬場が「オレがやらんで誰がやる!」とばかりに撮った映画が「バブルへGo!!」だ。次号最終回。