事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言 2015年8月号PART1 SNSの帝王

2015-08-31 | ニュース

Jackson Browne - HOLD ON HOLD OUT

2015年7月号「コメント芸人の対決」はこちら

どわっ、ネットがつながらない!パソコンやルーターをどういじくっても復活しない。こういうときは本当にへこむ。

「あら、電話も通じないわ」

奥さんナイスつっこみ。一帯が不通になっていたのでした。強風の影響ですって。ホッ。

「世界各国が平和を願って努力する現代において、日本だけがそれに関わらない利己的態度をとり続けることは国家の責任放棄だ」

ひとつの考え方としてあるだろうなと思う。よくいえば仲間外れにされたくない、悪くいえば列強に伍したいという方向性。安保法制をめぐり、あの乱暴な提案がありつつ現内閣の支持率がさほど下がらない(とわたしは思う)のは、こう考える人がある程度いることを示している。問題は、こうフェイスブックで断言したのが、滋賀4区選出の武藤貴也衆院議員であることだ。ツイッターでの

「戦争に行きたくないという考えは極端な利己的考え」

と安保法制に反対する若者を批判した、その浅薄さを知ってから冒頭の書き込みを読んでほしい。ましてや、この議員は国会議員という地位を利用して露骨な蓄財に励んでいる。利己的なのはどっちだ、と各方面からつっこまれたことであろう。

にしても、この人はフェイスブックで理屈を述べ、ツイッターで若者を攻撃し、LINEで資金を集めている。SNSの帝王とでも形容できそうだ。生身でやっていることが、出会い系サイトで知り合った青年と議員会館での買春というのもなんか一貫している。

それにしても滋賀県のみなさん、この議員の器というものが見抜けなかったですか。単なる極右青年を国会に送られてもなあ。あ、なんとこの人はうちの奥さんの高校の後輩だ!彼女に教えてやるべきか……

「菱(ひし)が割れるぞ。本格的に、だ」

山口組の分裂が確定的になったことをうけて大阪府警の幹部が放った言葉。山一抗争の例を見るまでもなく、内部でもめると、その争いは陰惨になる。落としどころがないので。

今回はどうなるのだろう。暴力団と同列にあつかってはいかがかと思うが、2015年8月末、次世代の党、日本維新の会も分裂の危機にあり、自民党は党首選が行われない模様。まあ、ここで対立候補を出せない方が不健康だとは思うが。PART2につづく

本日の一曲はジャクソン・ブラウンの「Hold On Hold Out」。決してI Love Youという歌詞を使わなかった彼が、この曲で(ちょっとだけ)使っています。学生時代に聴きまくった曲。きのう、国会前に集ったみなさんに捧げる。

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運動会~山形県スポーツ県民歌

2015-08-29 | うんちく・小ネタ

山形県スポーツ県民歌

今日は運動会。生徒も職員も盛り上がった。

この、あまり他国には見られないイベントを、文科省は教育制度として輸出する心づもりなのだとか。うーん、発展途上国には確かに有効な制度かもしれないけどねえ。

まず、もちろん思い切り体育会系なイベント。しかも発祥が海軍兵学校なので、軍国的なのは仕方ないのか。

うちの運動会も

「あのさ、白組が白軍(はくぐん)とか黄組が黄軍(おうぐん)、ほいでオレンジ組がオレ軍なのはいいとしよう。でも赤組が赤軍(せきぐん)なのはまずくないか(笑)」

校内放送では

「各組の幹部は図書室へ集合」

山口組の分裂が大ニュースになっているときに「幹部会」もあぶない(^o^)

他県の読者にはわからないでしょうが、今年はなぜかスポーツ県民歌まで登場。もっとも、これはモンテディオが勝ったときにサポーターが絶唱することが影響したか。

いやそれ以前に、他の県にはスポーツ県民歌ってないんですか。知らなかった-。しかも作者は超有名どころ。

わたしの世代は子どものころから歌いまくり。歌詞はこうです。

月山の雪 紅染めて
ほがらにあけゆく 新生日本
おこすは力 若き力
今先駆けて 我ら立つ
スポーツ山形
フレ-フレ- ヒップヒップフレ-

これが確か四番まである。新生日本ってあたりが戦後。
モンテディオが「月山山形」とチーム名が変更されそうになったのはこの歌の影響もあったか。

ただねぇ、最後のヒップヒップフレーってのがよくわからない。
今日同僚たちに質問したら

「やったろ?お尻ふってフレーフレーって」
「単なるかけ声ですよ」
「意味なんてないんです」

そうだろうか。ほんとにそうなの?

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「明治維新という過ち」 原田伊織著 毎日ワンズ

2015-08-28 | 本と雑誌

発売五カ月で5刷。かなり売れている。

著者は広告畑の人で、学生時代に反全共闘の活動にまい進した人、と聞けば世代と政治的スタンスはわかりやすい。ただ、この書では、尊王を訴えて成就したはずの明治維新とは、実は単なる長州の狂信的テロリズムによって成ったものだと主張されている。

司馬遼太郎(同じ大阪外語大卒なので尊敬はしていると何度も何度も強調される)が「竜馬がゆく」などで語った、明治維新が“日本の夜明け”であるとする考えは、勝者である薩長によってつくりあげられた、ねじまがった歴史観だと。

傾聴に値する、と思いました。

松下村塾は、実は吉田松陰が興したのではなく、前からあった塾に、なんとなく松陰が塾頭のような形で参加していたというのは初耳。彼のやったことが無茶なのは、大河ドラマでいかにヒロイックに描かれようが自明ではある。しかも彼の主張が帝国主義的で、大陸へ日本が進出すべきだとしていたのは有名な話。

それではなぜ若い無茶なお兄ちゃんが歴史的存在になりえたかといえば、誇るべき出自もなく、何らかの後ろ盾が必要だった山縣有朋が、みずからの過去を彩るために松陰を引っぱり出したと著者は主張する。

なるほど。日本海軍を鼓舞するために坂本龍馬がヒーローにまつりあげられたのと同じ構図というわけか。

その、狂信的な長州の精神的支柱になったのが水戸学。いやあ水戸光圀、徳川斉昭、そして徳川慶喜はぼろっくそに書かれております(笑)。

わたしが不思議なのは、神国だの尊王だのと天皇を崇めたてる言辞を弄する方々こそが、実は天皇を利用することに長けていること。御所に向けて、ひとり長州のみが砲を向けた経験があるあたり、天皇制をツールとして見ていることがよくわかる。

先日見た「日本のいちばん長い日」でやれやれと思ったのは、「陛下」という語が出てくるたびに条件反射のように気をつけをする将校たちの姿。そんな彼らも、最後のところで“陛下を諌めよう”とまでするのだ。ひいきの引き倒しとだけでは片づけられない問題を含んでいる。

明治という、長いけれども無限ではない時間のなかで、日本が天皇中心の国に一気に染まったのは、なにしろ明治維新が尊王という狂信によって形成され、それは今も変わらずに続いているからだと、この書で納得できました。

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極私的朝ドラ史PART14 京、ふたり

2015-08-27 | テレビ番組

PART13はこちら

89年後期は大阪制作の「和っこの金メダル」。ここで、ちょっと視聴率が下がる。ケチのつきはじめはヒロインの交代劇。当初決まっていた女性が民社党の広報ポスターに決まっていたために下ろされてしまったのだとか。公共放送は不偏不党が大原則だと。

へーっ!知らなかったですなあ。いまの会長にそのあたりを是非うかがいたいものだ。その、急に決まったヒロインは渡辺梓、夫には荒井紀人……すみませんまったく顔もうかんできません。

90年前期は男性が主演の「凛凛と(りんりんと)」。テレビジョンを開発するお話だったのはおぼえている。やけにさわやかな青年、田中実が主役だったことも。でも、数年前に彼が自殺していたことは失念していた。

つづく90年後期は「京、ふたり」。畠田理恵と山本陽子のダブルヒロイン。漬物屋さんのお話。これはヒットしました。かなりコテコテのストーリーなイメージがあったのでわたしは敬遠していましたが。

畠田はのちに将棋の羽生善治と結婚して芸能界から引退。あまりにもわかりやすい美貌だったので、むしろ正解ではなかったかと思う。

それよりも不思議なのが山本陽子だ。

70年代にテレビで次々にヒットを飛ばしていた彼女なのに、そのキャリアに比して現在の境遇はちょっとどうなのかなあと思う。芸能界のルールから、なにか逸脱してしまったのだろうか。

確かに、彼女と噂のあった男性たちは不幸な末路をたどったけれど、決して彼女のせいではないだろうに。それとも、そんなイメージこそが芸能界ではタブーなのだろうか。なんかこの号は男性自殺特集になってしまった。

そして、問題の「君の名は」にうつる。久しぶりの一年もの。主演は鈴木京香。鉄板の企画のはずだった。しかし……以下次号

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極私的朝ドラ史PART13 青春家族

2015-08-25 | テレビ番組

PART12はこちら

86年後期は「都の風」。主演の加納みゆきはブレイクしないで終わった。へー、黒木瞳も出てたのか……まったく記憶にございません。

脚本の重森孝子は、前にもふれたけれども浦山桐郎の愛人だった。本妻との間で揺れ動く浦山こそ火宅の人だったので、檀一雄のあの小説は彼に映画化してほしかったかも。あ、深作欣二もたいがいでした(笑)。

87年前期は黒柳徹子のお母さんをモデルにした「チョッちゃん」。主演は古村比呂。面白そうなのにまったく観ておりません。北海道のお話だから道産子のうちの奥さんは熱心に見てたっしょ。

古村比呂も家庭に入ることを選択した。相米慎二の弟子、榎戸耕史監督のデビュー作「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」(東映)で、バービーボーイズのコンタと共演していたのを映画館で観てます。

87年後期は若村麻由美主演の「はっさい先生」、88年前期は藤田朋子の「ノンちゃんの夢」、後期は山口智子「純ちゃんの応援歌」。なんっもおぼえてないです。にしてもいい女優をこのあたりはそろえたなあ。視聴率も安定。

89年前期は新機軸、ダブルヒロイン。清水美砂といしだあゆみで「青春家族」。スレンダーな美女ふたりを母娘としてキャスティング。女性の一代記が続いたのでタイトルからしてもホームドラマに回帰してみせたというところ。

当時41才のいしだあゆみは朝ドラ主演女優として最年長だとか。ちょっと驚く。洋画の世界では、そのあたりが女盛りなのに。ちなみに、その頃いしだあゆみをナマで見かけた人がいて、あまりに美しくてクラクラきたそうです。うん、なんかわかる。

清水美砂が米兵と結婚したのにはたまげたけれど、今村昌平作品「うなぎ」「赤い橋の下のぬるい水」における、女の不可思議さを体現した演技はすばらしかった。

このドラマでは、稲垣吾郎がデビューしている。SMAPが古畑任三郎に出たとき、田村正和が

「稲垣さん、『青春家族』拝見してましたー」

と実は芸能通だった発言で笑わせてくれましたっけ。そういえば、このころはあのグループのなかで、稲垣が断トツに売れてたんだよなあ。以下次号

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「肝心の子供」 磯崎憲一郎著 河出書房新社

2015-08-25 | 本と雑誌

ブッダに始まる三代の物語。彼らの心のなかの情景と、彼らのとった行動との乖離が泣かせる。

史実がどのようなものかはわからないけれど、ブッダの出家とは、このようなものだったんだろうなあと思わせてくれる。あまり彼らに感情移入をさせず、時間と血の流れを(わざと)淡々と描いています。

これがデビュー作って、面白い作家だなあ磯崎って。

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「贖罪の奏鳴曲」「追憶の夜想曲」 中山七里著 講談社

2015-08-24 | ミステリ


酒鬼薔薇聖斗の手記が出版されて騒がれている。

猟奇的なシリアル・キラーが14才の少年だったあの神戸の事件はショッキングだったし、彼がどんな思いでいるのか、どんな思いで子どもの首を切ったのか、知りたい人が多いわけだからベストセラーはうなずける。

自分が酒鬼薔薇になる可能性はなかったろうかと、誰しも怖れたはずだ。

特に、医療少年院という施設が彼をどうあつかったか、施設を出てからどう生きてきたのかなど、誤解を恐れずに言えば興味は尽きない。

しかし、読んだ人に訊くと、医療少年院に関する記述は驚くほど少ないのだという。となれば、むしろ中山七里のこのミステリの方が殺人者の闇に迫っているのではないか。

主人公の弁護士、御子柴礼司は、高額の謝礼をとるが、被告を無罪か、悪くても執行猶予付きまでに減刑させる辣腕で知られる(ブラックジャックがモデル)。

彼には、少年のころに少女を殺してしまった過去があり、医療少年院に収監される。その後、ある理由のために弁護士をめざし、司法試験に一発合格。名を変え、悪徳すれすれの弁護活動に励んでいる。彼をそこまで駆り立てるものは何なのか……

原の直木賞受賞作「私が殺した少女」には、そのタイトルへの批判が相次いだ。主人公に感情移入できないのではないかと。

もちろん探偵の沢崎が実際に少女を殺したわけではないのにこの騒ぎ。とすれば、実際に殺しているこのミステリにはもっと批判される要素がつまっているはず。しかしここをしのいでみせるあたりが中山の剛腕。

続篇の「追憶の夜想曲」も込みで、真の意味での贖罪とはなにか、読者に静かに語っている(あ、ちょっとネタバレっす)。


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極私的朝ドラ史PART12 はね駒

2015-08-23 | テレビ番組

PART11「澪つくし」はこちら

「はね駒(こんま)」は、ミスマガジンとしてグラビアデビューした斉藤由貴が飛躍したドラマ。わたしも少年マガジンで彼女を拝見しましたが、絶句するほど可愛かった。そりゃもうほんとに可愛かった。連続テレビ小説に起用される前に、すでに「スケバン刑事」で主演していたし、「卒業」でヒットをとばしてもいた。

でもわたしにとって彼女は完璧に映画女優だった。特にデビュー作「雪の断章 情熱」のすばらしさときたら!

この映画は、佐々木丸美の、今でいうライトノベルが原作(なんてことだ。いま創元推理文庫でイチオシされているのはこの本です!書店へ急げ)。

でも、脚本の田中陽造と監督の相米慎二がまったく違ったタイプの作品に仕上げた。孤児の斉藤由貴と、彼女を庇護する青年たち(榎木孝明と世良公則)。そこで殺人事件が起こって……

例によって過剰に歌が挿入され、異様な長回しがさく裂し、天真爛漫で美しい斉藤由貴の、その美しさと無垢が悲劇を生むストーリーに説得力を与えている。相米慎二は少女を撮らせたら天下一品でしたから。

そんなにすばらしい映画ならあらためて特集すればいいようなものだけれど、DVDがどこにもないんですよね。ディスカスにも存在しない。製作はキティ。権利関係でもめているのかなあ。

斉藤由貴はその後、敬虔なモルモン教徒のイメージを裏切るように尾崎豊などとスキャンダルに。いっそこの路線で行ってくれればとも思ったけれど、一般人との結婚を機に、家庭を優先する生活に入ってしまった。

「吾輩は主婦である」などを見ればわかるように、彼女は日本の芸能界において数少ない本格的なコメディエンヌなのだ。ああもったいない。

あ、「はね駒」の話でしたね。それまで、やくざか刑事の役しかやっていなかったイメージの小林稔侍が父親役でお茶の間に一気に浸透。だけでなく、このドラマは夫役に渡辺謙、母が樹木希林、初恋の人に沢田研二など、オールスターキャストが用意されている。視聴率も高く、成功作。だからこそ、斉藤由貴には別の道を歩んでほしかったなあ……以下次号

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日本のいちばん長い日PART4

2015-08-22 | 邦画

PART3はこちら

クーデターの常道通り、兵士たちはマスコミに向かう。そのために放送局はわざとわかりにくい造りになっているという噂もあるくらい。しかしこの8月14日から15日にかけての蹶起は、NHKから録音盤を奪取するという明確な目的がある。同時に、自分たちの思いを国民に伝えたいと。

しかしその行動は、日本放送協会の職員(またしてもびっくりの特別出演あり)によって阻止される。むかしはNHKにも立派な人たちがいたんですねえ。

軍人たちは今度は暗殺に走る。標的は鈴木首相と迫水秘書官。同じころ、阿南は官邸で自決する。

腹に短剣を突き刺し、「介錯は無用」とつぶやく阿南を、後ろから撮った映像は日本人にとってもショッキングだ。その後、阿南は首の頸動脈をさぐり……

クーデターに失敗した若者たちの最期はもっと即物的だ。宮城(きゅうじょう)に向かい、天皇を仰ぎ見ながら次々に頭を自ら短銃で射抜いていく。これも、後ろ姿。この一日、天皇のまわりは死で満ち溢れている。

この映画のラストは、玉音放送。しかし、放送を聞いて号泣する国民は描かれない。そこにいるのは、その声の持ち主。彼の徹底した孤独な後ろ姿で幕を下ろす(英語題名はTHE EMPEROR IN AUGUST)。

昭和天皇がここまではっきりと描かれたのは、ソクーロフの「太陽」以来か。あの作品ではイッセー尾形が演じ、ナポレオンを信奉し、同時に断罪されることを怖れて(かどうかははっきりと描かれない)独裁者の象徴である机上のナポレオン像を隠す小心さも見せた。

実像がどちらの作品に近いかは、わたしたちにはうかがい知ることはできない。ただ、彼の長男が、現在の首相の政治姿勢にいらだち(確実だ)、戦没者追悼式のお言葉に「反省」をわざわざ挿入したエピソードなどを知ると、裕仁という人物の長い戦後がどのようなものだったか、少しは理解できる気がする。

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日本のいちばん長い日PART3

2015-08-21 | 邦画

PART2はこちら

純粋で、陸軍の不敗を信じる若者たち。日本帝国陸軍が敗けたことがないことを誇りとしている。ということは逆に、敗け方を知らなかったということでもある。

本土決戦を主張し、二千万人の犠牲があれば日本は勝てると彼らは興奮して語る。二千万人を失い、焦土と化した『戦勝国』がどんなものか、彼らは想像しようともしない。

「本土決戦となれば、もう桜は見れないな」

老人である鈴木首相のつぶやきが観客に突き刺さる。

東京は空襲で半分が焼け、地方に標的は移る。広島と長崎に原子爆弾が落とされ、ポツダム宣言を受諾するかで閣議は紛糾する。

この映画は、1945年8月の政治状況をまことにわかりやすく解説してくれる。

・陸軍の若手たちは、ポツダム宣言を受諾するなら、クーデターを起こして軍事政権を樹立させようと考えている。

・阿南は、閣議でひたすら戦争継続を主張することで若手の暴発を抑えようとする。

・鈴木首相は、ソ連が介入したことで、終戦が遅ければ遅いほど、たとえば北海道が占領されるなどの影響を懸念する。

・ご聖断(天皇の判断)によって終戦にもちこむしかないと考えた首相は、しかしそのために自分は死刑になるだろうと思っている。

……こんな状況下、いちばん長い日が始まる。

天皇の玉音放送の録音盤(旧版でも、二枚あったことに驚いた)の争奪戦だ。聖断を不服とする若手軍人たちは「蹶起だ!」と突っ走る。権力者たちがベンツで移動しているのに、彼らが自転車で走るのが、その純粋さ、その脆さを象徴している。

畑中少佐を演ずる松坂桃李は、旧版の黒沢年男に匹敵する熱演。額の血管がぶち切れそうです。他にも、大場泰正、田中美央、関口晴雄、田島俊弥など、まったく知らなかった役者たちが光っています。やっぱり、軍人やらせると日本の役者はうまいなあ。以下次号

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