事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その108 「福家警部補の考察」大倉崇裕著 東京創元社

2019-08-24 | 日本の警察

その107「殺人鬼がもう一人」はこちら

警視庁版コロンボ、福家警部補シリーズ第5弾。例によってわたしはこの女性刑事が苦手です(笑)。

コロンボの場合は“犯人にとってのみ”悪魔のような男だけれど、視聴者にとっては天使のような存在でもあった。

でもねー、この警察とは思えない装いと、冷たいお汁粉&お酒の大好きな女性は、単に意地悪な権力者にしか見えないんだよなあ。

特に犯人が魅力的である場合にそれは顕著。罪悪感を感じることのできない主婦や、バーテンダーであることに誇りをもっている女性相手だと、格が違うとしか。この二人は実にいいですよ。

フジテレビ版の檀れいと必死で脳内変換しながら読み終えました(笑)

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日本の警察 その107 「殺人鬼がもう一人」 若竹七海著 光文社

2019-06-26 | 日本の警察

その106「東京輪舞」はこちら

女性刑事、女探偵とくれば、男社会である警察や犯罪の世界で、けなげにがんばっている姿がまずうかぶ。若竹七海が生んだ名探偵、葉村晶シリーズがまさしくそうだし。

ところが、警視庁の吹きだまりと揶揄される辛夷ヶ丘(こぶしがおか)署に不倫がらみで(という噂)飛ばされてきた三白眼の大女、砂井三琴は違う。いやーその悪いこと悪いこと。現場から金目のものいただくなんてましなほうで、後半に至っては……

ついに日本の警察小説、犯罪小説もここまできたかとうれしい。ひっかけも周到で、年末のミステリランキングを賑わすことは確実。

その108「福家警部補の考察」につづく

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日本の警察 その106 「東京輪舞(ロンド)」月村了衛著 小学館

2019-06-15 | 日本の警察

その105「凶犬の眼」はこちら

週刊ポスト連載作品。なぜかすっかり高齢者向けの雑誌となったポストの読者層に、実はぴったりの題材かもしれない。「機龍警察」の月村了衛が、ひとりの公安警察官の半生を描くことで、田中角栄、オウム真理教、小泉純一郎、そして安倍晋三に至る黒い裏面史を読者に叩きつけています。

ロッキード事件、東芝のCOCOM違反、国松警察庁長官狙撃事件、そしてオウム真理教のロシアルートまで、すべての事件にひとりが関わるのはさすがに無理筋。しかし、組織として硬直化し、腐敗が進行する警察のなかで、主人公の砂田は常に“静かに敗れ続ける”ため、説得力が半端ない。

ロッキード事件が、中国に外交上の比重を高め始めた田中角栄を排除するためのアメリカの陰謀とするあたりはまだストレートな方。国松長官の狙撃は、拳銃の射程などから考えると、オウム信者の犯行だった可能性は低く、明らかにプロの仕事だと断ぜられ、刑事部はそれを知っていたのに公安が握りつぶしたとする説は信憑性がある。

作品を貫いているのは、刑事警察と公安警察の相克。そして“田中角栄的なるもの”をどう評価するか、だ。

「いい政治というのは、国民生活の片隅にあるものだ。目立たず慎ましく、国民の後ろに控えている。吹きすぎていく風。政治はそれでよい」

威勢のいい発言をくり返し、常に前面に出てくる現首相との違いにしみじみ。もっとも、月村は終章で安倍晋三批判をくり広げるが、そちらは残念ながらストレートすぎて芸がない感じ。

彩りとして、KGBの女スパイとの微妙な関係も描かれ、同僚との結婚が失敗に終わるあたりも渋い。でも結局この人、もてまくりなあたりがちょっとうらやましい。あ、わたしもそろそろポストの読者世代かあ。

その107「殺人鬼がもう一人」につづく

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日本の警察 その105「凶犬の眼」柚月裕子著 KADOKAWA

2019-04-29 | 日本の警察

その104「脇坂副署長の長い一日」はこちら

孤狼の血」の続篇。映画が壮絶だったので誤解されがちだけれども、原作はわりに薄味な、というか冷静な筆致だった。最後の年表にはやられたけど。

今回は少し違う。国光というやくざが登場し、これがなかなか泣かせる男で、前作の騒ぎのために田舎の駐在に左遷させられた日岡も彼に激しく影響される。

前作は「仁義なき戦い」そのものの広島抗争。今回は山口組のトップと若頭が同時に殺された山一抗争が舞台。

あの事件そのものがよくわからないので(業界の話なのであの筋の人たちはさぞや面白く読んだだろう)、やくざの組織と名前を登場人物一覧でチェックしつつ……そんなことはしなくても実はいいのでした。

複雑な背景がありながら、国光と日岡の関係を追っていけばよかったのだ。仁義なき戦いどころか、仁義や任侠ばりばりの世界が描かれる。

柚月裕子の狙いは次第にこちらの方向にあるんだと思う。こってりした、人間ドラマの方に。でも酒田の人間であるわたしにとっては、薄刃を使うような佐方検事シリーズに期待したいってのが正直なところ。

その106「東京輪舞」につづく

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日本の警察 その104「脇坂副署長の長い一日」 真保裕一著 集英社

2019-04-03 | 日本の警察

その103「紅のアンデッド」はこちら

この装幀で、アイドルが一日署長としてやってくる日のドタバタが描かれるとくれば、かなりコミカルな味わいなのかと誰だって思う。

ところが、このアイドルは自ら進んで一日署長に手を挙げたと知れるあたりから色調はいっきにシリアスに。消えた警官、不審な動きをする長男、帰らない妻、中学校への侵入事件、県警の派閥争い……次から次へと事件が起こり、副署長みずからが動かなければならない設定づくりはさすが真保裕一。そしてこれらが一気につながるあたりのドライブ感も。

しかしこの警察小説(フロスト警部ものに明らかに影響を受けている)で最も心に残るのは中間管理職のつらさだ。

刑事のときは犯人をひたすら追いかけていればよかったのに、という脇坂副署長の嘆きは説得力がある。こんな毎日がつづいたら確実に過労死するのに、脇坂がギブアップせずに邁進するのはなぜなのか……ここに、真保が本当に言いたいことがあったはず。警察小説でなければ、この感動はない。

その105「凶犬の眼」につづく

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日本の警察 その103「紅のアンデッド」川瀬七緖著 講談社

2019-03-28 | 日本の警察

その102「隠蔽捜査7 棲月」はこちら

法医昆虫学捜査官シリーズ6作目。

昆虫学が捜査に次第に利用されるようになり、赤堀も正式に雇用される。が、そのために組織の論理で不自由になっていくあたりはよく考えてある。

ファナティックな性格なので、読者がひいてしまう(わたしはひきます)ヒロインの背景に、異常な父親との関係があったという設定は果たして必要だったろうか。もちろん、今回の真犯人の異常さと対比させるためだったとしても。にしても世の中には嫌なヤツばっかり、って気にさせられますこのシリーズ。そのとおりかもしんないけど(笑)

「脇坂副署長の長い一日」につづく

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日本の警察 その102「棲月 隠蔽捜査7」 今野敏著 新潮社

2019-03-06 | 日本の警察

その101「コールドケース」はこちら

大森署の名物署長となった竜崎が、部下を掌握しきっていることが何度も強調される。いつもそうだけど今回はあざといくらいだなあと思っていたら、なんとラストで……なるほどね。県警の人事の季節に読むのにぴったり。いやしかしキャリアは降格人事をくらったら普通は辞めるという決めつけもすごい(笑)

今日は職場で所属長のハンコ押しネタで盛り上がったので、竜崎の毎日の押印回数ってどれだけなんだとつくづく。

その103「紅のアンデッド」につづく

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日本の警察 その101 「コールドケース 真実の扉」WOWOW

2019-02-27 | 日本の警察

その100「その鏡は嘘をつく」「刑事の怒り」はこちら。いやはや警察関係でこんなに特集するとは。

世に「イヤミス」というジャンルがある。読み終えて、しっかり嫌な気分になるミステリね。今だと湊かなえあたりが代表選手だろうか。

わたしはそっち系が苦手で、なるべく読まないようにしているの。そうです根性なしです。ところが、この「コールドケース~真実の扉~」はイヤミスどまんなかでしたー!

アメリカのテレビシリーズ「コールドケース~迷宮事件簿~」を翻案。わざわざWOWOWがワーナーから権利を買ったあたりに気合いを感じる。わたし、それ見てないけど。

で、その気合いに比例してキャストがすごいんですよ。連続ドラマ初主演の吉田羊、上司に三浦友和、同僚に光石研滝藤賢一、そして永山絢斗。魅力的でしょ。実際にこのアンサンブルはいい感じだった。しかも脚本に瀬々敬久が参加していて、監督は全10話を「SP」の波多野貴文が担当。気合い。

ゲストが毎回すごいんだ。第1話になつかしのルビー・モレノが登場してびっくり、そして田口トモロヲ吹越満ユースケ・サンタマリア筒井道隆江波杏子、大好きな篠原ゆき子、そしてあろうことか木内みどり、山口果林、仲代達矢が共演!

でもさあ、あつかう事件は毎回毎回残虐で不道徳きわまりない。刑事たちのサイドストーリーも悲劇的。別に、にこやかに笑う刑事たちのストップモーションで終わってくれとまでは言わない。七曲署じゃあるまいしね。カタルシスとはおよそ無縁のイヤミス状態なのはきつかった。

でも、このドラマ、ファンは多いはず。実はわたしも途中でやめられなくて、DVD5枚を正月に一気に見てしまいました。え、去年の暮れにシーズン2をやってたの?うわあどうすっかなあ。

その102「棲月 隠蔽捜査7」につづく

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日本の警察 その100 「その鏡は嘘をつく」「刑事の怒り」薬丸岳著 講談社

2019-01-23 | 日本の警察

その99「MOZU」はこちら

法務技官として少年たちの更生に尽くしていた夏目が、娘を通り魔によって植物状態にされたこともあって刑事に転職。その顛末は「刑事のまなざし」によって描かれ、TBSで椎名桔平主演でドラマ化された。冒頭の「オムライス」のオチは怖かったなあ。

以降、夏目は穏やかで家族思いの名刑事としてシリーズ化。普通の刑事とは経歴の違いもあって別の観点から事件を(マイペースで)捜査する。つまりは名探偵である。つまりはわたし好み。早く新刊が出ないかな。

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日本の警察その99 MOZU (TBS=WOWOW)

2019-01-12 | 日本の警察

その98「冲方丁のこち留」はこちら

初めて逢坂剛の「百舌の叫ぶ夜」を読んだときは驚愕した。こんなに面白い小説があるのかと。

上梓された当時は「このミステリーがすごい!」はまだなかったので……あ、週刊文春のベストはあったはずだな。調べてみたら山崎洋子の「花園の迷宮」につづいて2位になっている。当時の文春ベストは江戸川乱歩賞受賞作がいつも強かったので(それに反発したのが宝島社のこのミスだったわけ)、事実上のベストだな。

一種の叙述トリックも仕込まれていて、殺し屋である百舌の視点でストーリーを追っていくとひっかけられることになります(トイレのシーンとか)。百舌も、彼を追う倉木も、得体の知れない感じがあって、しかも公安警察官が主人公というのも新しかった。

その後、「幻の翼」「よみがえる百舌」など、続篇が数多く書かれたわけだが、なんでまた2014年にTBSとWOWOWがドラマ化し、あろうことか劇場版まで製作されたかの事情はさっぱり。このご時世に盛大に登場人物たちがタバコを吸いまくるのは、見ていていっそ爽快でしたが。

わたしはこのシリーズのファンだからすべて読んでいるわけだけど、倉木に西島秀俊、美希に真木よう子というコンビは正解だと思った。西島秀俊は最初から最後まで苦虫をかみつぶしたような表情だし、真木よう子も屈託ありあり。これ、原作どおりですから(笑)。しかし大杉警部補役に香川照之というのは、彼のうまさはありながら大丈夫なのかと思った。だって彼はのちに……

連続ドラマを毎週見るということができない人なので、いざDVDで見始めると歯止めがきかない。シーズン1もシーズン2も劇場版もスピンオフも一気に。まとめて見たんだからストーリーもよく把握できて……グラークα作戦?ダルマ?なんのことだっけ。ああおれはミステリ読みとしてもドラマ視聴者としても失格だ(泣)。

でもわたしはこのドラマを、百舌を“あの人”が演じているというだけで満足した。あの役柄を演じられるのは、確かにあの人しかいない。

その100「刑事の怒り」につづく

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