事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「インクレディブル・ファミリー」Incredibles 2(2018 ディズニー)

2018-08-21 | アニメ・コミック・ゲーム

ディズニーの映画だ。当然、シンデレラ城の上をティンカー・ベルが舞い、列車が疾走する。

ピクサーの映画でもある。例のデスクランプがぴょんぴょん跳ねる。

でも、シンデレラ城はチープなアニメになっているし、デスクランプの映像は暗い。音楽はクールなジャズ系。もう、この時点でもってかれました。

要するに監督のブラッド・バードは、この14年ぶりの続篇で、またしても60年代のスパイ・アクション、もっと限定するとエージェントものにこの作品を仕立てたという宣言だ。007とか、ナポレオン・ソロとか、ディーン・マーチンのサイレンサーものとか、ジェームズ・コバーンの電撃フリントとかね。

同世代のわたしはつくづくと賛同する。また、あの能天気なシリーズが見たいよな。よく考えたら、トム・クルーズがミッション:インポッシブルの第4作の監督にブラッド・バードを起用したのはトムの慧眼であると同時に必然だったのではとすら。

今回も絶好調です。アニメ史上最高の興行収入になったのも納得。テーマは「未来のミライ」と同様なんだけど、こちらの脚本は練りに練り上げられてます。怪力で賞賛を浴びていたMr.インクレディブル(三浦友和はやっぱりうまい)が、ゴムゴムの実を食べたような妻(黒木瞳おみごと)の活躍に切歯扼腕し、子育てに翻弄されるあたり、続篇の窮屈さを微塵も感じさせない。

悪役の理屈もちゃんと納得できる話だし(ピザが遅れたらおれだって怒る)、長女(なんと綾瀬はるか)の恋愛が妨害されるのが、記憶を消し去るスパイ組織の論理であるあたり、うまい。

ここまで来ると、やっぱり提案したい。トム、次のミッション:インポッシブルの監督はまたブラッド・バードでどうなんだよ。イラスティ・ガール(ゴムゴムのおかあさんね)のセクシーさを、あんたほどわかってるヤツはいないはず。わたしの大好きなエドナ(ヒーローたちの専属デザイナー。わたし待ち受け画面は彼女でした。おそらくイーディス・ヘッドがモデル)的な存在(きっとそれは007のMに相当する)を導入してさあ……あ、すっかり製作者目線になってしまいました。

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「未来のミライ」(2018 スタジオ地図=東宝)

2018-08-18 | アニメ・コミック・ゲーム

ああきっといろんな人から怒られるんだろうな。

でも正直に言います。子育てって、めんどくせえ、疲れる、眠い。わたしはどうしても泣き止まない息子のクチを自分の乳首にもっていったこともあるし、眠らない娘に布団の上で「お願いですから寝てください」と土下座したこともある。

今となっては懐かしい、と思う親が多いのかもしれない。でもおれは忘れてない(笑)。

細田守の新作は、その子育てがメインテーマだ。

おばあちゃん(声は宮崎美子)とおかあさんを待つ長男のくんちゃん(上白石萌歌)。帰ってきたおかあさん(麻生久美子)は、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていた。子育てにおいて、もっとも緊迫する場面ですね。

でもくんちゃんは未来と名づけられた妹という存在がまだ理解できない。おとうさん(星野源)はそれなりに子育てに奮闘するが、それが一種のポーズであることすら妻に指摘され、困惑。わかるわー、これ細田の実体験だろうし、わたしの本音でもあります。

で、くんちゃんはようやく気づく。妹は敵だと。親の愛を全部ひきうけていたはずなのに、こいつがそれを覆したから。彼は攻撃に出る……

めんどくさいでしょ、くんちゃんって(笑)

で、彼のもとへさまざまな人物がやってきて教えさとすんだけど、くんちゃんあんまり成長しないんですよ。これは、実際に子どもを育てた人ならわかるはず。他人の子はすぐ大きくなるのに、自分の子はいつまでも成長しない。

だから細田はこう考えたんだと思う。「一気に大きくなった未来ちゃんをお兄ちゃんに会わせよう」わかるー。わかるけれども、子育てを追体験するのはやっぱりちょっとしんどいことではありました。

近未来の東京駅の造形や、家の造形で歴史を語るあたりは周到。壮絶にかっこいい、しかし股関節に問題のある人物が登場するあたりから面白くはなるんだけど、それまでがちょっとね。「時をかける少女」「サマーウォーズ」のファンとしては、やっぱり脚本は奥寺佐渡子にお願いしたほうがいいんじゃないかと……。

にしてもこれほど声優が豪華とは知りませんでした。山下達郎のテーマソングは最高。

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「江口寿史 KING OF POP Side B」宮本大人編 青土社

2018-08-08 | アニメ・コミック・ゲーム

画集「KING OF POP」が出たのを機に行われた江口寿史展を、そのままぶちこんだ、わたしのような江口ファンにはたまらない1冊。
そのキュレーターが宮本明大准教授。すばらしい仕事だ。

「すすめ!!パイレーツ」(オーナーの「リトラクタブル・ライトのまね」ってネタは最強でした)「ひのまる劇場」そして天下の少年ジャンプで女装の男の子を徹底的に美しく描いた「ストップ!!ひばりくん!」から、以降の“作品が載っているだけでありがたい”現在まで、みごとな鳥瞰図になっている。

わたしはつくづく思う。江口とほぼ同世代で、江口と同じような音楽を聴いてこれたことは幸せだったなあと。

そしてわたしがいちばん漫画に耽溺していた時期に、ジャンプでは江口寿史、チャンピオンにはとり・みきが同時に連載していたのだ。わたしにとってのマンガ黄金時代。

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「いっぽん!」佐藤タカヒロ著 秋田書店刊

2018-07-04 | アニメ・コミック・ゲーム

これはさすがにつらい。酒田に在住しながらチャンピオンで連載を続けていた佐藤タカヒロさんの訃報。週刊誌で連載することがいかにしんどいか。業界の人から「すばらしい人だったの」という電話もあったのに。

むかし、教職員組合の事務職員部報で彼のことにふれたことがあった。再録します。

少年チャンピオンを読んでいる部員なら、なぜ部報でこの作品をとりあげるかお気づきのはず。はっきり言ってこの柔道スポ根ヤンキー漫画は

・画はまだまだあらい。

・展開は「柔道部物語」(小林まこと)「スラムダンク」の亜流

……なのだけれど、なにしろ舞台が驚くべきことにわたしの地元酒田で、

・酒田高校VS黒羽高校

なんて試合が組まれているのでうれしい。お察しのように佐藤は酒田の出身。それどころか現在も酒田に住んで連載を続けているのだ(ウチの学校のご近所さんらしい)。これは応援してやらなくては。がんばれ佐藤!大金持ちになってもっと住民税を払ってくれ(笑)。

2005年11月30日号「ちがった人たち」より

……茶々を入れていられたうちはよかった。ご冥福をお祈りします。

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ドカベン終了。

2018-06-29 | アニメ・コミック・ゲーム

読売新聞には言いたいことが山ほどある。でも、一面のコラム「編集手帳」の素晴らしさだけは文句のつけようがない。今月の23日はひときわ素晴らしかった。

石毛幸一くんをご存じだろうか。かつて神奈川県の明訓高校野球部でショートを守った。実家は中華そば屋で、出前の手伝いの合間にのれんの下で懸命に素振りをした

◆山田太郎に里中、岩鬼、殿馬といった1年生が躍動するチームで、先輩のなかには影の薄い登場人物がいた。のちに東大に進む近眼の右翼手・北くんは甲子園の決勝打でヒーローになったけれど、はて石毛くんに見せ場はあったか?子供の昔、誰かとそんな話をしたのを思い出した

◆水島新司さんが週刊少年チャンピオンで連載する野球漫画「ドカベン」シリーズが、来週号で完結するという

◆この話題が伝わったおとといから、同世代と話すのが楽しい。微笑三太郎は転校生だったとか、土井垣キャプテンは明訓の監督になったあと急にプロ入りしたとか。ドカベン山田はむろん、脇役やさらにその脇役まで丁寧に描かれたことがこの長寿漫画のひそかな醍醐味だろう

◆連載は1972年に始まり46年続いた。漫画通の同僚によれば、北くんも野球の道に進み、今は東京に本拠を置く球団でマネジャー兼打撃投手をしているらしい。石毛くんは?

……わたしもドカベン世代。もちろん石毛のことはよく憶えている。確かに、見せ場はあまりなかった。センター山岡は塀際の魔術師として見せ場もあったし、江川卓そのものである中二美夫(なにしろ江川学院の生徒ですから)、めちゃめちゃに足が速い香車とか、いいキャラが夢のように。

そうか、ドカベンが終わるのか。通算205巻。金字塔だ。

あぶさんが終わるときに、でもまだドカベンがあるもんなと油断していたらこうなった。銀行の記入例のような名前の、瞳がないキャラが主人公。だからこそ、これだけ人気が長続きしたのだろうか。野球ファンの野球愛をうけとめる装置としての山田太郎。今でもわたしは好きです。大好きです。

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今月の名言2018年5月号PART2 追悼 高畑勲

2018-06-04 | アニメ・コミック・ゲーム

PART1「やめないでいかないで」はこちら

「パクさん、俺らはあの時精いっぱい生きたんだ」

盟友、高畑勲の死に宮崎駿は涙をこらえきれずに。

わたしは「火垂るの墓」を泣けそうすぎて見られないという根性なし。そんなわたしにとって高畑勲の最高傑作はテレビ「赤毛のアン」でした。マシュー・カスバートの死を静かに静かに描いたあの回を見ながら、学生だったわたしは、四畳半のこたつで号泣していました。

PART3「豪腕の秘密」につづく

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「ソーセージ・パーティ」Sausage Party (2016 SONY)

2018-05-03 | アニメ・コミック・ゲーム

セス・ローゲンジョナ・ヒルジェームズ・フランコが声をやってるとくればこうなるわな(笑)。予想した以上にセス・ローゲンの色が濃く、要するにシャレがきつい。まことにけっこうでした。

にしても、ソーセージとパンの恋愛って……うわぁいやらしいな。R指定は望むところだったんでしょう。やるなーアメリカ人たち。こういうところはほんとに凄い。

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いしいひさいち

2018-04-20 | アニメ・コミック・ゲーム

 

いしいひさいちは、わたしにとって漫画界最高のヒーローだ。

「がんばれ!!タブチくん!!」にノックアウトをくらい、学生時代には、いしいが設立に参加したチャンネルゼロの「漫金超」を購読し(季刊ということにはなっていたが、いつ出るかわからないので油断できなかった)、ミステリや政治ネタの鋭さに驚き、そしていまも朝日新聞で毎日新作が読める状況を楽しんでいる。

大好きなキャラはなんといってもヤスダ。元ヤクルトスワローズのへろへろ変化球ピッチャーとタブチのかけあいはおみごとだった。

「お、お中元か」

とタブチ家に遊びに来たヤスダ(このあたりですでにおかしい)

「おれにもひとつくれ」

「誰がやるか」

「いーじゃねえか、へるもんじゃなし」

「確実にへるんだよこれは!」

笑ったなあ。

いしいひさいちの人嫌いは有名な話で、とにかくほとんどオモテに出てこない。作品にはあふれるほどふれることはできても、いしい本人がどんな人なのかはさっぱり。

そんな謎の人を「文藝」が大特集。「文藝別冊 総特集いしいひさいち」は、彼の数少ないコメントが網羅してあって最高だった。この人の隠遁は、放っておくと過激なコメントをどうしても炸裂させてしまうからでは、と思うくらいに大放出。

「私は漫画を描いていながら、子供の頃から現在まで漫画を読む習慣がありません」

「そもそも4コマ漫画に起承転結というセオリーは存在しません。起承転結に則って4コマを描く作家はプロにはおりません」

「いがらしみきおさん、業田良家さん、しりあがり寿さん、とり・みきさんなどなどなどはより洗練されていて、私のお笑いはすでに古くさく感じています」

「朝日新聞の連載を始める際、全集をもらってはじめてサザエさんを読んだのですが国民漫画ができるだけ多くの人に愛されねばならないことの代償でしょう、4コマ漫画としては平凡、作家としては凡庸というのが正直な感想でした」

正直すぎる(笑)。そしていがらしみきお、吉田戦車西原理恵子、しりあがり寿、大友克洋などが特別寄稿していて、特にとり・みきの、いしいひさいちは絵がうまい!という主張に納得。あー面白かった。

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「リメンバー・ミー」COCO (2017 ディズニー)

2018-03-24 | アニメ・コミック・ゲーム

鶴岡まちなかキネマから電話がかかってきて、どうやら正月からやっていた抽選に当選したらしく、商品券3000円也をいただけることになる。貧乏な夫婦はさっそく引き換えに出かけることに。

「あのアニメが見たいわよね」

リメンバー・ミー。ピクサーの作品だ。でもどうなんだろう。メキシコの死者の日(「007/スペクター」のオープニングでおなじみ)を題材にしたってあたり、どうなの。前はピクサーである瞬間に映画館に向かったものだけど。

見た連中がみんな絶讃。しかも男親たちが「絶対泣く」と。それはやはり拝見しなくては。妻に

「泣くかも」

「ハンカチは用意した?」

「はいはい」

まずは「アナと雪の女王」のスピンオフ「家族の思い出」が同時上映。すっかり内容を忘れていて(妻にいたってはあの大ヒット作品を観ていない)、どうしてこの姉妹はいっしょに住んでいなかったっけと考えこむ。まあそれはいいとして、例の氷を利用したCG大爆発はないのかな……来たぁ!

そしてその寒さの直後にこの作品。シンデレラ城にかぶさるテーマがマリアッチ風なのに期待高まる……素晴らしかった。泣き始めたのは妻の方が先だったし。

ピクサー作品のキモが、CGよりも徹底して練られた脚本であることを再認識。原題が主人公のひいおばあさんである「Coco」なので、彼女で泣かせることは最初から明かされていたのだ。やるなー。

それ以上に、画面のリズムがすばらしい。シーンとシーンのつながりにはちゃんと気が配られていて、観客のテンションが次第に高まるようにつくってある。死者の国の描写は……近ごろどっかの国の映画で観たような(笑)。

このご時世にメキシコを舞台に作品をつくろうとしたスタッフの気概もうれしい。壁なんかつくってる場合か。エンドタイトルが始まっても絶対に席を立たないこと。もうひとつの感動が待っています。傑作!

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「KUBO クボ/二本の弦の秘密」Kubo and the Two Strings(2016 GAGA)

2018-02-04 | アニメ・コミック・ゲーム

「うわ。泣いちゃったぜ」

鶴岡まちなかキネマで見終わって。

「泣く?そういう映画だった?」

妻よ、三十年もいっしょに暮らしてきて、こんなに距離を感じたことは……

舞台は中世の日本。何かから逃げ出した女性が小舟で荒海を漂っている。彼女はついに波の力に負け、海底の岩に叩きつけられて気を失ってしまう。夜が明け、彼女はこどもの泣き声で目を覚ます。彼女の子、クボは生きている……

圧倒的に暗い展開。母は次第に心が壊れていく。彼女の世話をするクボは、近くの村で三味線で折り紙をあやつりながら物語ることで糊口をしのいでいる。しかしクボは、最後まで語ることがいつもできない。その物語は母親の実体験であり、彼女はそれを最後まで思い出すことができないからだ。

黒澤明と宮崎駿の映画がもとになっている展開はそれだけで素晴らしい。折り紙がさまざまな生き物となって画面をはずませる。しかしそれ以上に泣かせてくれるのは、タイトルの二弦(二本と日本のダブルミーニングは偶然だろうけど)の意味と、物語を終結させる満足感が観客と共有できるラストのためだ。

わたしは日本語吹替版で見たんだけど、字幕版では声優はシャーリーズ・セロンレイフ・ファインズマシュー・マコノヒールーニー・マーラ、そして70年代の映画好きなら忘れられないはずのブレンダ・バッカロ!すごいな。

でも吹替版もすごいのよ。しんちゃんの矢島晶子はクールだし、父親(あ、ネタバレ)のピエール瀧はホット。母親役は田中敦子さんなので「攻殻機動隊」の少佐が母性をむき出しにしている!おまけにラストに流れる「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」(作ったのはジョージ・ハリスンだけど弾いたのは彼といろいろあったエリック・クラプトン)には向こうからの要請で吉田兄弟が参加!んもう何がなんだか。おばあちゃん役は意外なシンガーだし。

製作しているのはライカという会社。そのCEOが監督のトラヴィス・ナイト。彼はナイキの創業者の息子で、ストップモーションアニメにこだわっている。えーと、ウォレスとグルミットを思い起こしてください。コマ撮りです要するに。パーツをとっかえひっかえして一週間に3秒しか撮影できないとか。バカだなあ。

でもバカしか作れない作品がこれだ。母親の顔にうっすらと残る傷痕とか、どれだけ手間かけてるんだ。「え、あれCGじゃなかったの?」妻はいきなり感激しています。傑作!

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