事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「スカイ・クロラ」The Sky Crawlers('08 プロダクションI.G.)

2008-08-20 | アニメ・コミック・ゲーム

Theskycrawlers  2度観た。それだけの価値のある作品。2回目はポイントを貯めてゲットした招待券で入ったのでえらいことは言えないんだけど。

 森博嗣原作による世界観がまずすばらしい。戦争すら民営化され、国民はテレビのニュースで他人ごとのように戦況を知る時代。実際に戦闘に従事するのはキルドレと呼ばれる不老不死の少年少女たち……

うる星やつら/ビューティフル・ドリーマー」や「攻殻機動隊」「イノセンス」などで常に“リアル”への懐疑を訴えてきた押井守が、若い観客のためにつくりあげた作品、ということになっている。最初に観たときは、しかしそれは何かの冗談ではないかと思った。【永遠に生きられる】ということは【死んでいる】こととほぼ同義ではないかという陰鬱なメッセージが、はたして若い連中に受け入れられるのかと感じたから。

 加瀬亮と菊地凛子が吹き替えたキルドレたちは、陽光あふれる空中戦以外は、暗く、ひと気のない基地や娼家で、まるで幽鬼のように生気なく日々をすごしている。

行きつけのダイナーの入口で、老人が力なく座り込んでいるシーンが何度も挿入される。
「あれ、意味がわかんなかったな」といっしょに観ていた中学生の娘に言うと
「“生きてない”って感じだから、キルドレは自分たちみたいだって思ったんじゃない?」
娘よ、ナイス。そうかも。

 しかし2度目に観たときは、彼ら彼女らがとった行動が、どんな生にも意義を見つけていこうという、ちょっと恥ずかしいくらいのポジティブさにあふれていることが理解できた。特にラスト。ヒロインの毅然とした表情は(エンドタイトルがはじまっても絶対に席を立たないこと!)キルドレにとっての“永遠”の意味をワンショットで示していてすばらしい。

「イノセンス」の暗さに辟易した観客(わたしわたし)にとっても、これからの押井作品にふたたび期待をいだかせるに十分な傑作。女性整備士を演じた榊原良子(パトレイバーの南雲隊長です)が、キルドレの不幸をうけとめる大人を感じさせて泣かせる。戦闘シーンもすげーぞー。

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明細書を見ろ!08年8月号~年金の不思議Ⅱ

2008-08-20 | 明細書を見ろ!(事務だより)

08年7月号オモテ面はこちら。裏面はこちら

前号で、戦後すぐの年金支給開始年齢は55才だったのに、日本人の平均寿命が男子50才、女子54才だったので支給対象は数万人しかいなかったと説明しました。それが現在では男子78.6才、女子85.6才という長寿大国となり、加入者7000万人に対して受給者は3300万人。半分もの人が受給対象になるという制度は保険の論理から完全に逸脱しています。おまけに社会保険庁はあんな具合ですから、将来の年金というものに不安をいだき、こんなことなら掛金を払うのはムダなんじゃないか……と考える人は当然出てきます。

掛金の収納率が目標を大幅に下回っているのは「払えない」人の増加と同時に、「払わない」層が明らかに増えているからです。老後の生活は自己責任でやる、年金なんて当てにしてられるか、ってとこかな。近ごろの年金行政がメチャクチャであることを考えると、その理屈は感情的には理解できます。でも、損得で考えたらどうでしょう。

いきなりみもふたもない話をするようですが、どう考えても年金の掛金は支払った方が得ではないでしょうか。なぜなら

・わたしたち給与所得者にとっての国民年金である『基礎年金』部分は、満額支給だとおよそ年額80万円。そのうち1/3が国庫負担なので80万円×1/3=26万6千円程度は国が支払ってくれるのです。この国庫負担はまもなく1/2になることが決定していますから、80万円×1/2=40万円がころがりこむ理屈。年金に入っていない人は、この40万円を毎年放棄し、同時に自分の支払った税金が国庫負担の名のもとに他人の財布に貢献することになるわけです。ガマンできます?

・みんなが老後に受け取る老齢年金のことしか意識していませんが、しかし現在の受給者3300万人のうち、600万人は遺族年金か障害年金を受け取っています。つまりおよそ1/5は、配偶者の死亡や自分の病気などの、一種の不幸をカバーする年金を受け取っているのです。そんな生命保険的色彩において、こんな手厚い制度は民間では絶対に実現できません。

・初手から誤解が多いようですが、そもそも年金というのは「自分が働いて積み立てたお金を老後に受け取る」貯蓄とは性格が違います。現役世代が掛けているお金が、いちど集約されて老齢者などの受給者に配分される……つまり世代間互助が基本にあるわけ。少子高齢化などで現在より受給するレベルは下がり続けるでしょう。それでも運用益を期待するよりはリスクが小さいと考えられます。

……問題は、その年金のお金を集約するのが「国」だということです。この存在は(言葉は悪いですが)胴元としては圧倒的に巨大な存在なのに、前号までにお伝えしたようにどうもたよりない。っていうかずるい。自分も公務員なので天につばするようですが、役人は天下り先を確保するためならなんでもやるし、掛金をぶっこ抜くぐらいは平然とやってのけます。したがって彼らの動きをキチンと注視し、この制度を文字どおり「国民の年金」にしていく必要があるはずです(われながらうまいオチ)。

08年9月号につづく

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