事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

真田丸 第四回「挑戦」

2016-01-31 | 大河ドラマ

第三回「策略」はこちら

前回の視聴率は初めて下降して18.3%。うーん、よくわからないな。あんなに面白かったのに。

速報を久しぶりに熟読して、むかしの視聴率オタクとしてはやはり色々と面白かった。スマスマの30%超えは一種のイベントなので当然。「あさが来た」の好調も、大河+どてらい男(女だけど)だと思えば納得できる。いまは極貧の「おしん」よりも、金をひたすらに稼ぎ、そしてうまく使った女性の一代記の方がうけるんだろう。

それでは、遅咲きの智謀の人と言える真田信繁の物語の人気はこれからどうなるんだろう。今回のタイトルは「挑戦」。あ、やっぱりディック・フランシスの競馬シリーズのように全部二文字でいくのか。いくつかはダブるんだよねきっと。

「度胸」「帰還」「敵手」「奪回」あたりはいかにも。名作「利腕」はともかく、「重賞」「配当」は無理か(笑)。

先週、信繁が紐を細工しているシーンが挿入されていることからもわかるように、史実を取り入れながら奔放にやってやろうという三谷幸喜の意図は見え見え。今回も真田信繁が、信長(吉田剛太郎)のあの名ゼリフ

「お主が何をした!」

と明智光秀を面罵するシーンを現場で見ていたという設定。「新選組!」の初回で、近藤勇、土方歳三、坂本竜馬、桂小五郎がいっしょに黒船を見に行っていたシーンを書いて壮絶に批判されたのにこりてない(笑)。先週の密書の件を、まずは信長の息子が疑い、家康が裏事情を把握し、結局は単に真田家が“生き残るだけ”だったことを冷徹に。

信繁(堺雅人)と信幸(大泉洋)はそれぞれに工夫して姉と義兄を守ろうとするが、なんといきなり本能寺!え、まだ第四回なのに?

おいおいちょっと待て。肝心なキャストが発表になってないんじゃないのか。豊臣秀吉は誰なの?……あー、そう来たかあ。

で、わたしは予想するんだけれど、これからこのドラマにはジャニーズ系がじゃんじゃん起用されるような気がするんですよ。特にSMAP。三谷ドラマでNHK大河は手打ちにかっこうの場だ。まずは「笑の大学」の稲垣吾郎から始まって……視聴率はちょいと回復して19%台と読みました。

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今月の名言 2016年1月号 正義の味方~追悼ポール・カントナー

2016-01-30 | ニュース

Jefferson Starship "Jane" (HQ)

2015年12月号「落ち着け。」はこちら

「ちまちました作品ばかりが受賞していて、日本映画が沈没しているのはそういうところにも理由があると諦めていたので、物凄くうれしい。ブルーリボンは正義の味方という感じ」

……「日本のいちばん長い日」でブルーリボン賞をとった原田眞人監督の発言。こういうことを言ってるから評論家に嫌われて(笑)。しかしマイベスト日本映画2015が彼の二作だったことを考えると、やはり正義の味方かもブルーリボン賞。

「本質を見ない枝葉末節な議論で、テレビ入りの委員会でこんなことばかり言っていては、民主党も支持率は上がらないのではないかと心配している」

……例のパートで25万円の収入発言を攻撃された安倍首相の反撃。あまりくどくど言いたくはないけれど、やはりこの人は一国の長たる器ではない。どしっと野党の(わたしもあの質問は低レベルだと思った)ことばを受け止め、上質のユーモアで返すぐらいの芸当を……無理か。無理だろうな。

「いい人とだけ付き合っているだけでは選挙落ちちゃう」

……甘利経済再生担当相が辞任会見で記者の質問に答えて。
これほど正直な発言はなかなか聞けるものではありません。同僚のなかには「甘利さんかわいそう」という人もいた。「え、なんで?」「秘書が悪いんでしょ?罠にはまったんでしょ?いい人っぽかったのに」そういう考え方もあるかあ。こういうことを日常的にやっているんだ、というあたりに嘆息するというのが有権者として正しい態度ではないかと。そのため息は政治家と同時に、利益供与を政治家に期待する側にも向けられなければならないはずだ。

本日の一曲は追悼ポール・カントナーとしてジェファーソン・スターシップの「ジェーン」。エアプレーン時代からのファンには怒られそうだけど、わたしアルバム「フリーダム・アット・ポイント・ゼロ」が大好きだったんです。え、ジェファーソン・スターシップを知らない?いえいえ、ユーミンのファンなら「グレイス・スリックの肖像」でおなじみではないかと。

2016年2月号PART1「まだ罪のないほう」につづく

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ぼくのわたしの2015 読者篇PART2

2016-01-29 | 読者レス特集

The Doors "People Are Strange"

PART1はこちら

大河盛り上がってますね!もう勝頼が…勝頼が…っ(涙)
混む前に上田城に行っておいて良かった?☆

わたしの2015年は「長男誕生!」でした!
しかも2015年3月31日午後…
もちろんすぐ学校に電話しました。分娩室から。異動予定のお世話になった先生達に直接報告できて良かった?
この4月から復帰予定です!
育休手当金もフルでもらって、保育園も1歳クラス!
ナイスだ息子よ??

……お、おめでとうございます。なんて親孝行な子だろうか。それにくらべてうちの子たちときたら、生まれるのが日曜の早朝だったりするものだから出産費用が高くついて高くついて(泣)。

しかし誕生日によって運不運というのは確実にあるんだな。学校事務職員ならご存知のように(前にも特集したし)、育児休業手当金は基本的には1才までの支給。特別な事情がある場合のみに1才6ヶ月まで支給される。

この、“特別の事情”というのは正確に言うと

・育児休業に係る子について、当該子が1歳に達するまでに保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが1歳に達する日後の期間について、その実施が行われない場合

……よくもまあこんなに持って回った言い方ができるものだ。要するに保育園に空きがないとき。だけれども山形県の場合は待機児童ゼロなので、この理由は使えない。他の事情は

・配偶者が死んだ

・配偶者が病気になった

・離婚した

・もうすぐ下の子が生まれる

なんて場合。要するにあれよね、少子化対策なんてこの国では全然本気になんかやってないってことでしょ。やれやれです。

PART3につづく

本日の一曲もドアーズ。並外れたセンス。今さらですけどほんとに。

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甘利辞任

2016-01-28 | 国際・政治

The Doors - Touch Me

甘利経済再生相(皮肉な役職名になってしまっている)が辞任。

「はめられた」

という理屈でしのごうと与党の誰しもが思っていたに違いないし、そのムードも流れていた。わたしも実はそうなるのかなと思いました。(週刊文春に)第二弾があるとマジで自民党の誰も思いつかなかったとは思えないので、結局はなめていたのだろう。文春も新潮もおれたちのお仲間じゃないかと。

そうはいかなかったんだな。釈明を宜野湾市長選よりもあとにもってきた工夫は有効だったとしても。

内閣にとって(というかあの首相にとって)怖いのは、第三弾がどんな内容なのか“わからない”ということなんだと思う。だから必死になっているのだろう。

明日の読売の論調は素人だって想像できる。

「TPPをまとめあげたのに花道を飾れなかった」

てな感じで遠回しに読者の視線をよそに向けようとするに違いない。わたしがあの主筆ならそうする。

本日の一曲はドアーズの「タッチ・ミー」。実は夢のようなアレンジじゃないのか。久しぶりに聴いて、んもう止まらずにリピートし放題でした。

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ぼくのわたしの2015 読者篇PART1

2016-01-28 | 読者レス特集

Tom Cruise Ben Stiller Mission Impossible Parody

ラーメン篇はこちら

さあ今回から読者篇にまいりますよ。みなさんの2015年はどのようなものだったかというと……

2015 おもろかったのは、映画になった「新版 スタハチ」だな。

……うっそー。いやいきなり嘘ってことはないが、スタスキー&ハッチって映画になってたんですか。知らなかったなあ。スタさんハッつぁんのTVシリーズは、TBS系列局がなかった山形県のガキが東京に出たときに、その反動もあって見まくってたおぼえがあります。

火曜10時は「刑事コジャック」と交互にやっていて、テリー・サバラス(驚かれるでしょうが木村拓哉とそっくりです)が放つ「スタブロフ!」ってのも好きだった。ええそうですとも意味不明でしょうとも。

主演はポール・マイケル・グレイザー(スタスキー)とデヴィッド・ソウル(ハッチ)。で、このデヴィッド・ソウルの歌った「やすらぎの季節」というちゃらいタイトルのエンディング・テーマが大ヒットしたのでした。

新版の主演はベン・スティラーオーウェン・ウィルソン。どんな映画だか想像つきます(笑)。今度、ディスカスしてみよう。

わたしの2015は、ももクロのコンサートで手を振ったら目が合って手を振り返してくれたこと…ではなく、母校のアーチェリー部が創部26年にしてついに全国制覇してくれたことです。創部当時のメンバーの一人として、ものすごく感慨深いです。顧問の先生にお祝いメッセージを送ったところ

「あの頃のお前たちがいたから、山形に残って頑張ってこれた」

との返事にめちゃくちゃ泣けました。本当に嬉しい出来事でした。

……いいんでしょうか。「事務職員へのこの1冊」なんて場でこんないい話を紹介してしまって。こりゃー確かにめでたい。ほんとうによかったねえ。

PART2につづく

ということで本日はベン・スティラーの本領をご覧いただきます(笑)

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ぼくのわたしの2015 酒田ラーメンランキング

2016-01-27 | 食・レシピ

読書篇はこちら

去年もラーメンを食べまくった。ええもうそりゃあ食べましたとも。なんといっても酒田におけるラーメン激戦区の学校に勤務しているメリットは、いる限り享受する覚悟でございます。ということで今回は、あくまで酒田を中心としたお話。

2015年のラーメン界は(大きく出たな)、酒田ラーメンの人気がなお上昇した年だったと総括できる(大きく出ました)。雑誌やテレビでとりあげられることが増えたのがその証拠。そして、マスコミでとりあげられるからますます客が増えるという循環。まあ、いいことなんでしょう。

なかなかラーメン屋が安定しなかった東泉町の交差点に、酒田唯一の二郎系をうたう「麺や 土門」が開店し人気を集め、もとから人気店だった「満月」「新月」は、平日でも開店前に行列ができている。

かと思えば、池袋大勝軒の分裂騒動が影響したか「優勝軒」は秋に閉店。某有名店は閉店の噂があったけれども、年明けからもちゃんと営業してました。

さて極私的ラーメンランキング。あくまで酒田周辺の、2015年だけの話ですから誤解のないように。ラーメンファンは過激だからなあ。

1.「とみ将」酒田市市条字荒瀬167
やさしい味健在。次第に人気が出てきて路駐すらできない状況になってるのは困る。

2.「」酒田市亀ケ崎5-13-19

テレビにとりあげられて一気にメジャー化。わたしは味噌味中華が好き。

3.「らーめん いち」三川町大字猪子字大堰端363

ここの辛味噌ラーメンがわたしは好きです。イオンシネマに行くときだけじゃなく、定番化。貼り紙もなんもなしに休業していたときはあせった。このあいだも元気に営業してました。ホッ。

県外では、長岡で食べた青島食堂ってのはおいしかったな。次号、読者篇PART1につづく

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「淵の王(ふちのおう)」 舞城王太郎著 新潮社

2016-01-26 | 本と雑誌

酒田の図書館から5冊、遊佐の図書館から5冊借り、正月に9冊読み切って、残るはこの「淵の王」。

うーん、舞城王太郎かあ……と逡巡するのにはわけがある。彼の作品は、読者に緊張を強いるじゃないですか。さりげないやり取りにものすごい意味をこめていたりするものだから、のんべんだらりとした“楽しみとしての読書”の姿勢では蹴散らされてしまう。

いやもちろん舞城に翻弄されっぱなしでもいっこうにかまわないわけだけど(ディスコ探偵のときはそうでした)、お正月に読む本って感じでもないかな……でも返却期限が近づいているし、いったるか!

読み終えて呆然とする。いま、おれって感動してる?この、軽佻浮薄なやりとりしかできないかのような若者たちのお話に、五十を過ぎて、ど感動してしまいました。すげー。

みっつの中篇からなる。「中島さおり」「堀江果歩」「中村悟堂」。タイトルになっている若者たちの、一見おだやかな生活。しかし例によって彼らの発することばには、二段三段下に深いものが潜んでいる。会話の冴えはあいかわらず。

で、いずれもラストにとんでもない展開が待っていて、これは「新潮」に載ったから純文学じゃろと予想していたのに、小野不由美の「残穢」にも匹敵する大ホラーだったのだ。ひいいい。

問題は、それぞれの主人公の物語を、誰が語っているかだ。主人公の人生をほとんど把握していて、彼らを応援してはいるのだが……よく言えば守護天使であり、悪く言えば背後霊のような存在。しかし、この存在は現実にまったくコミットできず、主人公たちもその存在に気づいていない。小説と読者の関係に似ているかもしれない。

だからこそ、狂気と恐怖によって翻弄される主人公たちに、最後の最後で……とするラストが大きな幸福感を読者に提供してくれるわけだ。いやあ傑作。今回も舞城に翻弄されてしまいました。あまりに面白かったので一気読み。返却期限にちゃんと間に合いました。

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オリエント急行殺人事件 第五夜

2016-01-25 | ミステリ

第四夜はこちら

さて、乗客を全員集めて萬斎の種明かしが始まる。名探偵の見せ場の典型。しかしちょっと待て。まだ第一夜の途中じゃないか。あと3時間はどうするの?!

ここからが実はオリジナル。三谷幸喜が「いかにして十二人が集結し、殺人を立案し、実行したか」の部分。要するに忠臣蔵です。

娘を失った元女優が冨司純子。彼女の復讐の念がすべてのスタート。最も佐藤浩市を恨んでいるにもかかわらず、しかし軽妙なのはさすが女優という設定だ。

大石内蔵助に当たるのが松嶋菜々子。冷静で頭が切れるということで殺人計画立案を依頼され、渋々うけいれる。彼女を補佐するのが沢村一樹。彼はなかなかいい味を出してました。ふたりが恋仲であることは最初から明かされている。

第一夜でほとんど活躍することのなかった二宮和也は、佐藤浩市の秘書として彼の動向を探るという、これまた赤穂浪士的な動きを任される。佐藤の寝室でちょっとしたポカをやってしまうなど、愛敬担当。

問題は、キリスト者として殺人はどうあっても神が許さないと主張する八木亜希子。ルメット版ではイングリット・バーグマンが演じて、アカデミー賞を彼女にもたらした役。まあ、賞にめぐまれなかった彼女への論功行賞的なオスカーだったのだけれど、それにしたっておいしい役なのだが……まあ、三谷幸喜のお気に入りだし、フジテレビ出身アナだから仕方ないか。

それから、絶世の美女として登場する伯爵夫人がというのもちょっとつらい。映画では、絶頂期のジャクリーン・ビセットが演じていたので説得力があったのだけれど(以下自粛)。

さて、批判も多かったこの作品。しかしわたしは楽しんだ。もっともっとこんなドラマをつくってほしいと痛切に思う。ミステリが探偵小説と呼ばれていた時代の、無邪気な謎解きを長時間かけて描くというのはテレビにしかできない芸当。文字通り老優となった田村正和をドルリー・レーン役に起用して、「Yの悲劇」はいかがですか三谷センセイ!

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真田丸 第三回「策略」

2016-01-24 | 大河ドラマ

 

第二回「決断」はこちら

前回の視聴率は、及ばないだろうと思ったのに大台を超えて20.1%。「イッテQ」のスペシャルがあり、イモトと同時に、しゃべらないベッキー(たかが不倫じゃないか、なに騒いでんだ)がいたにもかかわらず。

数字だけでなく、マスコミの論調もこの大河に好意的なようだ。「新選組!」のときとはえらい違い。その背景に、講談調の面白さを残しながら、(大泉洋に徹底してシリアスな演技をさせるなど)歴史ファンに気を使っていることがあるんだと思う。でも、読者の歴史オタクはやはり厳しいです。

「本多正信に鷹の世話をさせるシーン、石川数正に『徳川家臣に裏切りはない』と言わせるシーン、歴史好きにニヤッとさせる部分もいいでしょう。でもねえ、新府城での家康のやけどのシーン、穴山との対面前のシーン、何よりも最後の決断のシーンは……三谷さん、あのねえ、清洲会議とは状況がちがうでしょうよ。

さあ第三回にとっととまいりましょう(笑)。

「船出」「決断」ときて今回は「策略」。ディック・フランシスの競馬シリーズばりにすべて二文字でいくんだろうか。ミステリファンの三谷幸喜ならではの趣向。

しかし真田家の物語をつむぐ上で、もう“策略”を使っちゃうのか。早すぎないか……いやいや、その名に恥じない策略っぷりでした。昌幸(草刈正雄)の上杉への密書をめぐる深謀、信繁(堺雅人)の近在との争いにおける戦略、そして黒木華と長澤まさみのラブコメ騒動。最後に、信幸(大泉洋)の腹芸。うん、策略というタイトルにふさわしい回だった。それぞれのエピソードの順番が、こうでなくてはならないと納得できるあたり、さすが三谷幸喜と思わせる。どんだけ面白くなるんだ。

清須会議」で黒田官兵衛を演じていた寺島進が、戦国とは結局は博打の連続だと醒めていてうれしい。長澤まさみはやはり東宝ラブコメの女王だとつくづく。

今週の名ゼリフ。

「そなたは、嫡男だ」

この昌幸から信幸への言葉が、一年間をつらぬくテーマになるわけよね。視聴率は常に予想を上回るので22%台に上昇と読んでます!

第四話「挑戦」につづく

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オリエント急行殺人事件 第四夜

2016-01-23 | ミステリ

第三夜はこちら

さあネタバレ全開でいきます。

クリスティの「オリエント急行殺人事件」が最初に邦訳されたとき、そのタイトルはなんと「十二の刺傷」(笑)。ばればれです。いつもは閑散としているはずの寝台車が満室だったことでもわかるように、要するに全員が共犯だったのである。ただし、ひとりだけ殺人を行っていない人物がいて、はたしてそれは誰なのかという謎は用意してある。

クリスティは掟破りな人で、全員が犯人なパターンなど生ぬるい。登場人物全員が殺されてしまう「そして誰もいなくなった」もまだまだ。某有名作品においてはついに読者の怒りをかってしまい、失踪事件まで起こしている。

さて、それでは彼らの動機はなにか。佐藤浩市は軍人の娘を誘拐し(リンドバーグの事件がモデル)、身代金をせしめたが裁判で無罪となっている。だから軍人とその妻の身内、使用人、友人たちが総がかりで復讐したわけだ。

しかし疑問が残る。この事件は大々的に報じられ、多くの人の記憶に残っている。そのために萬斎は佐藤浩市の正体を見破るのだ(脅迫状を帽子入れにのせて火をつける描写は秀逸)。

とすれば、誘拐事件と乗客が全員なんらかのつながりをもっていることは容易に判明するだろう。偶然として片づけるにはどうしたって無理がある。彼らは佐藤浩市を恨みに思う架空の犯人をでっちあげはするのだが、どうもこのあたりはしんどい。

犯人たちにとって最大の計算違いは、言うまでもなく関ヶ原で列車が雪崩のために止まってしまうこと。そして途中で雪が止んでしまったことだ。雪の上に足跡がない以上、犯人が寝台車に乗っていることは萬斎でなくても指摘できる。

ここからはその萬斎の独壇場。ひとりひとりを食堂車に呼びつけ、尋問開始。このドラマでいちばん面白いのはここでした。名探偵が容疑者をなぶるのは古畑任三郎でさんざんやったことだしね。以下次号

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