探偵ガリレオ=天才物理学者湯川を福山雅治に演じさせ、ワトソン役の刑事を女性に変更して柴咲コウをキャスティング、そしてオンエアは月9、脚本は周到な福田靖……高視聴率の要素がすべてそろい(わたしもなかなかの企画だとは思った)、実際に月9としては久しぶりの視聴率を稼いだ。が、もう少しなんとかならなかったろうか。予想した以上の、サプライズな楽しさが感じられないのだ。
理系作家である東野圭吾がくりひろげる奇抜なトリックは、映像化するだけで原作の読者たちはうれしいはず。アルミ板のデスマスクや、緊張感のない首つり現場など、そうかこんな物理現象だったかと画で見ると納得できるし。そこへもうひとひねり、ミステリとしての仕掛けがあってもよかったなあ。最終話に『あの人』を出すようなケレンがもっともっと仕込んであれば……まあ、ぜいたくな話ではあるんだけど。しかし初回のオンエアが最高視聴率で、次第に低下していった要因は、こんなケレンのなさにも由来していると思う。悪い意味で月9的恋愛ドラマになってしまったのだ。
福山は一種の無色な存在を破綻なく演じている。帝都大の准教授ってそんなにお金もらえるのか、ってくらいファッショナブルだけどね(笑)。でも柴咲コウの方は『可愛さ』と『刑事としてのガッツ』は感じられても、ミステリの登場人物としての“キレ”がないし、あくも強すぎた。声もこんなに聞きづらかったろうか。犯人役では、無邪気な殺人者としての深田恭子が……実に興味深かった。
さて、いよいよ「容疑者Xの献身」が公開される。悲恋のふたりは堤真一と松雪泰子。地道な演技派と福山×柴咲のとっぽさの掛け合わせはどう評価されるだろう。本来のワトソン役である北村一輝が大きくフューチャーされることを望むけれど(なにしろ大ファンだし)、テレビでの最終回が最低視聴率だったってあたりが心配っちゃ心配。原作の、あのひっかけもどう映像化するものだか。まあフジテレビのことだからさまざまな興行上の“仕掛け”はかますことだろう。公開初日にスペシャル(プリクエル……前日譚になるとか)をオンエアするらしいしね。テレビドラマが映画化されることにいつもわたしは懐疑的。しかしあのテーマソング(「知覚と快楽の螺旋」)がスクリーンに流れることを、少し期待もしているのだ。いい客だよオレはよ。
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