事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

崖の上のポニョ~半魚人としてのポニョ

2008-08-16 | アニメ・コミック・ゲーム

Ponyo02 「人魚姫としてのポニョ」はこちら

「崖の上のポニョ」をひと言で表現すれば『覚悟』の物語だ。ぶっちゃけ、嫁取りのお話なのである。封切り直後にこんなメールが。

ジブリは初日に観ることにしているので、娘と行ってきました。いっしょに同じものを観るなんて久しぶりです。おもしろかったけど、5歳であんな約束(?)していいのかな、大丈夫なのかな、って心配しています。心変わりするじゃないですか、大きくなるにつれ……。

 わたしも、ちょっと心配。この読者もわたしも、人魚姫の哀しい結末を知っているからね。宮崎駿は、人魚姫のストーリーから、「人間の血」「好奇心あふれる姉妹」「心変わりがあると泡になってしまう」といったエッセンスを抽出しながら、同時に人魚姫にあった悲劇性をひっくり返して使っている。あのお話は(アンデルセンは自身の最高作だと思っていたらしいが)こどもにはつらすぎるし、殉教って感じが息苦しいからだろう。だから“海のお話なのに金魚”がモチーフになっているし、その金魚が象徴するのは“東洋”だろう。

 同時に、愛をつらぬく人魚姫というテーマは一貫している。宮崎がポニョに与えたのは、自分でもコントロールできないくらいのひたむきさなのだ。ポニョが波濤のてっぺんを走り抜ける姿は、宗介と会うためなら地球なんかどうなってもいいとする彼女の暴力性までよくあらわしている。こりゃー将来きついぞ宗介。受けとめられるのかこの激情を。

 この嫁入りがすべて女性主導で決定されるのは宮崎作品らしい。あの人の映画は常に女性が強いからね。「ポニョが半魚人でもかまわない?」と嫁のお母さんは考えてみればすごいことを言うのだが、すでに宗介の母(山口智子は「ライラの冒険」につづいて好演)は腹をくくっている。もうちょっと安全運転にこのお母さんは心がけてほしいけど。娘の将来を案じて右往左往するポニョの父親フジモト(所ジョージ)が、結果として娘を手放すきっかけをつくってしまうあたりも皮肉だし、宗介の父親(長嶋一茂)にいたっては船から一度も陸地におりないのである。

 宗介のモデルは宮崎駿の長男の吾朗。ってことはY町から宮崎家に嫁いだY中の卒業生がポニョってことか。息子の結婚に実は色々と感じることがあったのか(^o^)?

後半のキーとなるトキさん(宮崎の母親がモデル)とのアクションが、いつもの宮崎作品のように“動きが感情をゆさぶる”レベルに達していないのは残念だけど、オープニングのクラゲいっぱいの描写から“鉛筆ですべてを描写する”姿勢は凄味がある。「となりのトトロ」(お母さんの歌)や「千と千尋の神隠し」(トンネルを嫌うポニョ)など、ジブリファンへのサービスもいっぱいだ。「天空の城ラピュタ」の女盗賊ドーラを演じた初井言栄レベルの演技を見せた吉行和子の吹替もすばらしい。入場料を払うに足る映画。ぜひ。

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崖の上のポニョ~人魚姫としてのポニョ

2008-08-16 | アニメ・コミック・ゲーム

Tnr0712080844000p1 みなさんおはよーございます。ぼくは宗介。5才です。これからアンデルセンの人魚姫のお話をします。

むかしむかし、深い深い海の底に、6人姉妹の人魚のお姫さまたちが住んでいました。お姫様たちは15才になると海の上をながめることがゆるされていました。一番下の人魚姫が15才になった日、海の上では船でパーティがひらかれていました。王子さまの誕生日だったのです。人魚姫はその王子さまをひと目で好きになりました。

その夜、嵐がやってきて船はまっぷたつ。王子さまは海の底へと沈んでいきます。人魚姫は王子さまを助けましたが、王子さまが気がついたときにそばにいたのは人間のお姫さまでした。人魚姫は人間になって王子さまと会いたくてしかたがありません。そこで海の魔女の家へゆき、しっぽを人間の足にかえる飲み薬をもらいました。魔女はこうつげました。「もしも王子がほかの女と結婚するようなことがあったら、お前は泡になって消えてしまうよ」と。薬の代金は人魚姫の小さな舌。人間になるかわりに、人魚姫は声をなくしてしまったのです。

お城で王子さまのそばでくらすことができるようになった人魚姫ですが、歩くたびにナイフに切りさかれるような痛みが走ります。そして声が出せないので嵐の夜に王子さまを助けたのが自分であることも話せません。それでも人魚姫は王子さまのそばにいるだけでしあわせでした。しかしある日、王子さまはとなりの国のお姫さまと結婚することになってしまいます。あの日、気がついた王子さまのそばにいたのはそのお姫さまだったのです。結婚式の夜、お祝いのために足の痛みをこらえながら人魚姫は踊りました。もう、王子さまに会えないと知りながら。朝の最初の光がさしこむと、人魚姫は泡になってしまうのです。そこへ5人のお姉さまたちがあらわれました。海の魔女から、美しい髪とひきかえにもらったナイフをもって。このナイフで王子さまの心臓をつき、その血をあびれば人魚姫はまた人魚にもどれるのです。

まもなく朝がやってきます。眠りこんだ王子さまのそばに立った人魚姫は、それでもナイフを使うことができず、そのまま海に身をおどらせたのです……あれ?トキさんもう寝ちゃったの?しょうがないなあ。それでは人魚姫のお話はこれでおしまいです。みなさんさよーなら。

……宗介くんご苦労さん。長々と「人魚姫」を彼に語ってもらったのは、この物語をふまえていないと見えてこないものがたくさんあると思ったから。宗介は「崖の上のポニョ」の主人公。トキさんは宗介のお母さんがはたらく介護ホームの入居者で、なかなかの意地悪ばあさんなのだが……さて、お話のつづきはまた明日です。

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