事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言2011年9月号~つけちゃうぞ。

2011-09-30 | ニュース

Oizumiyoimg02 2011年8月号「女の覚悟」はこちら

「(放射能)つけちゃうぞ」

毎日新聞の記者に鉢呂前経産相が言った(とされている)ことば。言ったかどうかもどうやら判然とせず、このことばが実際にどんなものだったか社によっても違っている。いずれにせよ、第一報を流したフジテレビは辞任への道を用意した形。確実なのは、そこにフジテレビの記者はいなかったということなのだが。

東京新聞も「メディアはもっと冷静になろう」と主張したように、あまりにもマスコミのレベルが低下していないか。報道しなければならないのは、「死の町」をどうするかなのに、文字どおり鬼の首を取っておしまい。スタンピード体質は相変わらずだ。それとも、鉢呂が経産相ではまずい事情がフジサンケイグループにはあったということなのかな?

「メッセージなんて何もないわ。紳助さんだって私に言われても困るわよ」

芸能界の御意見番とやらにされてしまったマツコ・デラックスの至言。自分たちの腰がひけているものだから、マツコになんらかのことを言ってほしくて芸能マスコミが殺到。これまたレベルが低いことだ。どうしてお得意の和田アキ子のコメントとりに走らないのだろう。ひょっとして暴力団がらみについては彼女にきいちゃいけないの?

「もう(セックスは)なしにしような」

宍戸錠が去年亡くなった奥さんと、45才のときに結んだ協定。「嫉妬するのも嫌だろうし、お前も他の男とやっていいから」。さすがエースのジョー。凡人のおよぶところではない。

探偵はBARにいる」ヒットと続篇製作決定記念の舞台あいさつで大泉洋。ススキノ探偵のシリーズ化はわたしもうれしい。

「さすがに1週間では僕以外は誰も来ない。こっちにいた人(松田龍平)は家で寝ていますね。あっちにいた人(小雪)は子どもを大事にしているし、端にいた人(西田敏行)は多分……釣りしてますね」

2011年10月号「コメント芸ふたたび」につづく

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地獄の黙示録

2011-09-29 | 港座

Apocalypsenowimg02_3 三人の軍人が登場する。

カーツ大佐(マーロン・ブランド)は陸軍士官学校(ウェストポイント)を首席で卒業し、数々の軍功をあげたが、ある時点でみずからのキャリアを投げ捨て、ベトナムからカンボジアへの国境を越え、現地民を組織化して王侯のようにすごしている。

ウィラード大尉(マーティン・シーン)は、本国での生活に耐えきれず、妻と離婚してまで戦場であるジャングルにもどってきた。彼の専門は暗殺

キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)は、騎兵隊の帽子をかぶり、サーフィンをするために村を焼き払うほどファナティックな男だが、情に厚く、ベトコン(チャーリー、と称される)にも一定の理解を示している。

ウィラードはカーツの暗殺を命じられ、キルゴアはウィラードの“闇の奥”への道行きを助ける。カーツが殺されるのはすでにアメリカ軍の制御がきかなくなっているからで、カーツの思想を理解しようとするウィラードは次第に壊れていく。ひとり意気軒昂なのはキルゴアだが、彼はヘリコプター(この映画の主人公だ)による襲撃の際に「ワルキューレの騎行」を大音量で鳴らして威嚇するなど、最初から壊れているとも言える。

三人の差は、そのままアメリカ軍、ひいてはアメリカという存在へのスタンスの差。ベトナム戦争をどう考えるかだ。

キルゴアのようにあの戦争が共産主義から世界を守る戦いだと信じていられるうちはいい。しかし少しでも懐疑的になってしまうと“史上最も無益な戦い”への絶望によって軍人たるプライドは雲散してしまう。

カーツはアジア人の単純さを愛し(だからアジア人蔑視の作品だと攻撃もされる)、みずからの絶望と恐怖を奇矯な王国を組織することでねじふせている。

ウィラードは彼に心酔しながら、一方で「ただの逃亡将校ではないことを息子に知らせてほしい」というカーツの弱さも理解している。したがってカーツの暗殺は、一種の救済であるかのように描かれる。

久しぶりに観て、やはり後半はグダグダになってしまったんだなあとため息。しかし、戦争の本質をこれほど的確に(撮影が混乱していたからこそなのだろう)描いた作品もない。一見の価値は絶対にあります。ぜひ。

Apocalypsenowimg01_2

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山口組と芸能界PART2

2011-09-28 | 芸能ネタ

Jingiimg01 PART1はこちら。 

興行の形式には三つあって

「手打ち興行」……いわゆる自主興行。会場費、ギャラ、宣伝費などの経費をすべて負担。したがってリスクが大きいが当たればでかい。

「売り興行」……歌手を呼びはするが、ギャランティなどは地元の興行師に請け負わせる。

「花興行」……自主興行の一種ではあるが、「○○親分何回忌追善興行」「○○芸能創立○周年記念興行」といった慶弔名目で、金主筋(スポンサー)である社長たちに入場券をまとめ買いしてもらったうえ、組関係者からご祝儀が入るために絶対に損のない形になっている。

やくざの興行形態の主流はもちろん花興行だった。しかしそこへ「手打ちで勝負や」と打って出たのが田岡三代目だったのである。

時代は前後するけれど、山口組が芸能界にからんだある事件があった。昭和28年の鶴田浩二襲撃。新聞記事にはこうある。

《鶴田浩二襲わる》
『(昭和28年1月)6日夜8時半ごろ大阪南区千日前の大阪劇場に出演中の新生プロ主催者映画俳優鶴田浩二こと小野栄一氏(28)が実演を終えて天王寺大道寺町旅館備前屋に帰ったところ押し寄せたファンの中にいた四人連れの男が同氏めがけコップを投げつけ後頭部その他に約一週間の傷を負わせて逃走した』

小さい事件のようだけれど、この四人のなかにのちの三代目山口組若頭、山本健一がいたことでもわかるように、山口組にとって芸能関係のしのぎは重要なものだったのだ。

その後、鶴田と山口組は関係を深め、田岡は子飼いといえる美空ひばりを育て上げて(小林旭との離婚会見に同席までしている)山口組芸能部門といえる神戸芸能社は勢力を強めていく。

山口組全国制覇についてはいろいろと語られているけれど、興行をひとつの手段として地方進出を果たしたのは事実のようだ。その意味で、芸能人がやくざと関係があること自体に罪はない、とする理屈はやはりちょっと無理がある。

ただ、「仁義なき戦い」でも語られた警察の“頂上作戦”以降、やくざが表立つことにはかなりの規制がかけられており、芸能界とずぶずぶ、という状態でもない。そのあたりは、またお勉強しましょう。

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山口組と芸能界PART1

2011-09-26 | 芸能ネタ

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実録 神戸芸能社―山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2009-11-18
  島田紳助の騒動の際には、大方の人が「芸能人は暴力団とつながっている」ことを「知っている」とした。

その背景には、警察の情報操作もあったかもしれない(もちろんなかったかもしれない)。ただ、警察が芸能人と組織暴力の接触についてマスコミに積極的にリークしてきた過去は確かにあった。美空ひばりがNHKと絶縁したのは実弟が山口組系構成員、というかバリバリのやくざだったから、が建前だし、暴力団関係の冠婚葬祭に演歌系の歌手が出席する姿は何度も報じられている。だからみんな思う。「芸能人はみんな」と。

そうだろうか。

やくざ側からの意見はないのかな、と思ったら、そっち系の情報で有名な、あの週刊大衆を出している双葉社から「実録神戸芸能社 山口組・田岡一雄 三代目と戦後芸能界」という、んもうどまんなかの書を見つけたので紹介。

この本の何が強いかというと、山口組三代目の田岡一雄の息子であり、東映でその名も「山口組三代目」や「やくざ戦争・日本の首領」をヒットさせた田岡満の全面協力があったこと。いやはや出てくる出てくるディープな情報と写真の数々。ちょっと紹介しましょう。

まず、やくざ映画をあびるほど高校時代から見ていて、なんとなく通じていると思っていたわたしですら山口組の実体をよく知らないことに気づく。おおざっぱにまとめると

・創立は大正5年というからまもなく100周年のこの団体は、当時の(いまもそうなのかはよく知らない)やくざの供給源、港湾荷役に始まっている。なぜ荷役が供給源なのかというと、港にはいつもいつもコンスタントに貨物が入ってくるわけではなくて、入港する船の数や季節によって激しく変動する。だから船会社や荷主は荷役(あ、いまは港湾労働者でした)と直接の雇用契約を結ばず、下請けを使う。この“人の確保”“契約の確保”で港は常にもめていて、暴力的な手段で解決されることが多かったわけ。そこから、荷役系のやくざが発生したのだった。

・創業者は山口春吉。神戸で結成されたこの組織を、菱の代紋のもとに強大な組織に育てあげたのは三代目の田岡一雄だった。このあたりは高倉健が田岡を演じた「山口組三代目」にくわしいです。港で、やっぱりもめてました。以下次号

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「96時間」 TAKEN (2008 フランス)

2011-09-25 | 洋画

Takenimg01 そりゃ、リュック・ベッソンだから多少の無理はしてるだろうと予測。

(ちょっとほどがあるでしょ、というくらい)溺愛する娘がパリでアルバニア人たちに誘拐される。元CIAのエージェントである父親(リーアム・ニーソン)は“人質奪回のタイムリミット”とされる96時間以内に連れ去られた(Taken)娘をどう取り戻すか……

無茶にもほどがあります。

彼の行く先々で、ためらいなく悪人たちは処刑されていく。もちろん一応ハードなやり口も仕方ないでしょ、という伏線ははってある。

ワーカホリックだったために妻は娘を連れて富豪と再婚しており、父親にとって生き甲斐は娘だけだということがくどいぐらいにくり返して説明される。

誘拐は人身売買という最低の目的のためであり、麻薬漬けにされた少女たちの描写を先にして、殺人の連続に感情移入できるように仕立ててある。

いやしかしやっぱりこれはやり過ぎ。ハリウッドとはコードが違うことをいつも感じさせるリュック・ベッソン作品群のなかでも、ダントツにしんどい。

ストーリーにしこんであるのは『パパの言うことをきかないとひどい目にあいますよ』という保守的なお説教(ある登場人物が、子どもたちに赤ずきんのお話を読み聞かせているのはその象徴)。U2なんてわけのわからないバンド(笑)のおっかけなんて不道徳なことをするからバチが当たるんですよ、って具合。

もちろんアメリカでも大ヒットしただけあって、美点も多い。誘拐直前に父親が娘にアドバイスするポイントは、携帯時代にまことに有効だろうし(逆に殺されちゃうリスクも大きいけど)、レザーファッションがアメリカっぽいリーアムのガタイの大きさが父親の慈愛を感じさせもする。妻を演じたファムケ・ヤンセンもあいかわらず素敵。

でもね、ネタバレになっちゃうけど、あれだけのことをしでかした父親は、やはりラストで死ななければならないと思う。それがお約束ってものじゃない?あ、そうか。リュックにはそんなハリウッドコードが通じないからうけるのかあ。

とりあえず、リーアム・ニーソンとファムケ・ヤンセンの子にしては、あの娘はちょっと背が低すぎるんじゃないすか、といいがかりをかまして気持ちを落ち着けますわたし。

……で、生き残ったからこそPART2がまた大ヒットしてしまいましたw

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「この国。」 石持浅海著 原書房

2011-09-24 | ミステリ

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この国。 (ミステリー・リーグ)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2010-06-10

おそらくは、柳広司のジョーカーシリーズへのカウンターとして書かれたものであろうと予測。オレなら、こうやると。

「攪乱者」で、現実の政権交代を先取りしてしまった石持なので、実はかなり政治的。独裁国家として異様な発達を遂げてしまったニッポン。秘密警察と反体制派との暗闘をさまざまな“ゲーム”として描く。

石持の周到なところは、警察国家であるニッポンを、北の某国のように特異に描きながらも、主人公の体制派と同様に妙に魅力的に描いているあたり。最初の「ハンギング・ゲーム」に顕著なように、ふたつの勢力の頭脳戦は、体制の側が強力だからこそ面白いのだ。その意味で、ラストはちょっと物足りなかったか。

国家管理された売春宿で、特定の娼婦の相手だけが殺されていく。どうやって犯人は彼女を相手にした男を判別したか、などミステリとしての魅力もたっぷり。続編は……この造りだと無理かあ。

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「まほろ駅前多田便利軒」 (2011 アスミック・エース)

2011-09-23 | 邦画

0224bc22199c45c387977358c1d6e747_n 三浦しおんの直木賞受賞作の映画化。まほろのモデルは町田ですって。わたしが小田急沿線に住んでいたころとは違い、やはり小田急沿線にいま住んでいる息子によると、町田は“すげーでかい街”なのだそうで、プチ新宿化しているのだとか。ふーん。

そんな便利な街なので、住民はそこで生まれると一生そこに住み続けるか、出て行ってもまた帰ってくると語られる。この設定はストーリーの核になっていて、ラストに効いてくる。

便利屋で日々をしのいでいる主人公(瑛太)のところへ、中学時代の同級生、行天(松田龍平。ぎょうてん、という名前が実にいい)が大晦日に転がりこんでくる。彼らふたりの、衝突しそうでしきれない一年間のお話。便利屋の仕事を通して、彼らふたりの過去が次第に観客に見えてきて……

テーマは「人生はやりなおせるか」。登場人物たちの多くは何らかの欠格やトラウマをかかえていて、そこから脱却できずにいる。自己完結できる街、まほろから出て行けないのはそのせいもあるだろう。

特に、ある事情をかかえている行天の走り方は、自我を守るために必須なのかもしれない。かなり研究したはず。主人公の軽率な行動で彼は小指を一度欠損していて、いまは回復している。やりなおせる人生の象徴。しかし、ある登場人物がラスト近くで小指を失う設定になっているあたり、うなるほどうまい。そう簡単にはいかないわな。

実は、わたしもこの映画のあるキャラと同じ経験をしたことがあって(不倫じゃないぞ!)、飄々と暮らしているはずなのに、ある時点で感情が激発してしまうのがよく理解できた。そんなわたしだからなのかもしれないけれど、この映画はちょっと“語りすぎる”ように思えた。瑛太や松田龍平の微妙な演技で観客を納得させているのに、どうもセリフで説明しすぎているのが惜しい。

監督(大森立嗣)のお父さんや弟がいい味で演じていたり、片岡礼子と鈴木杏がコロンビア人娼婦を自称するという(笑)、泣かせるキャスティングもあってかなり楽しめたので、そこんとこ次回はよろしく。ススキノ探偵のアシストと掛け持ちで松田龍平は忙しいことだろうけどさっ。

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「世界侵略:ロサンゼルス決戦」 World Invasion: Battle LA(2011 SONY)

2011-09-21 | 洋画

Battlelaimg03 おんもしろかったー。すげー面白かった。
全世界でヒットしたのに、評価は最悪。曰く

「これはSFではなく、単なる戦争映画だ」

「ストーリーに起伏がないのではなく、ストーリー自体がない」

だからいいのに(笑)。邦題も原題もB級テイストありありで、それは確かに当たっているんだけれど、それだけじゃないぞこの映画は。

想定外のスピードで地球に隕石群が襲来。しかしその隕石は世界の大都市近郊沿岸部にのみ落ち、着水前に減速するなど、ただの隕石ではなかった……。

もちろんこの隕石は宇宙船で、減速するために逆噴射する画が美しい。「スカイライン/征服」の連中がやったCGじゃないかな。あの、思えばチープな宇宙人襲来映画があったことは、この作品にとってよかったか悪かったか。

少なくともわたしにとっては、オープニングの幻想的なイメージが、マンションのなかの局地戦に収束してしまった「スカイライン」への不満をかなり解消してくれました。確かに宇宙人は世界中を侵略している!ってスケールの大きさはあるもの。ソニー、金かけてます

ストーリーは確かにシンプル。民間人が警察署で救助を求めているので、空爆が始まるタイムリミット前に救い出すのが前半。後半は、そこからどう帰還するか。それだけ。で、“ついでに”宇宙人の司令部を……(笑)

このストレートさが実にいい。「フルメタル・ジャケット」の後半、あるいは「プライベート・ライアン」の前半のように、観客が兵士と一体化できる。

男はしょーもねー生き物だから、たまにこんな戦闘シーンで闘争本能を昇華させとかないといけないんです。チャージですな。日ごろ、戦争反対とか言ってるくせにねえ。

多様な民族を抱え、建国伝説をもたないアメリカだからこそ、「民間人(まあ、アメリカ人ですけど)を救うために海兵隊員はなんでもやる」というモチベーションが兵士に常にチャージされている背景がよくわかる。米兵が強いわけだわ。

「俺たちは消耗品ですか?」

と不満をもらす兵士ももちろんいて、しかしここからが泣かせるのよ。実はほんとに泣いちゃいました。日ごろ、反米とか言ってるくせにねえ(さすがにあのラストはないだろうけど)。

のべつまくなしに銃弾は飛び交い、空には異様な飛行物体が……真の意味での近代戦を体験できる2時間。全米公開が3月11日だったのは偶然にしても、ひたすら疲れた。帰りはがっつりと焼肉ラーメン食べました。チャージ。

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「マネー・ボール」2球目

2011-09-20 | スポーツ

Moneyballimg01 1球目はこちら

「得点力を評価する場合、チームの平均打率に注目するのがこれまでの常識だった。ところが、冷静に比較分析してみると、チームの総得点と平均打率は関連が薄い。むしろ、出塁率や長打率のほうが、総得点とはるかに密接なつながりを持っている。また、多くの監督を有名にしたサインプレー……バント、盗塁、ヒットエンドランなど……は、たいてい、的外れか自滅行為だとわかった。」

……併殺をおそれてエンドランを多用した某監督(王監督ですけど)はきいてますか。

「守備に関するデータは、数字としては存在意義があっても、言語としては意味がない」

……これには解説が必要だろうか。つまり、失策の数が多い選手=守備が下手な選手という式は成立しないというのだ。逆もまた真なり。つまり、果敢に打球に攻めてファンブルするリスクを背負う選手と、最初から追いかけない選手のどちらが守備がうまいか。失策数の多さでヤクルトの宮本や巨人の坂本は責められているけれど、無謀ともいえるくらいに打球にくらいつく彼らの、いったいどこが守備が下手だというのだろう。

「この職務(GM)は、手押し車に乗っかって惰性で坂道を下るレースのようなもので、年の初めに車をつくることまではできるが、あとは勢いにまかせて坂を下るしかない」

……これは嘘です。ビリー・ビーンほどシーズンインしてからもトレードに熱心なGMはいない。ペナントレースの前半戦の勝率よりも、後半戦の勝率が常に上回っている事実は、アスレチックスをどれだけフロントが把握しているかを示している。実は陰でポンコツあつかいされていた松井秀喜獲得の正しさは、いかにもアスレチックスらしい。

もちろんセイバーメトリクスがすべて正しいわけではなく、なにより他のチームも採用しはじめたので効果は減じている。でも、選手として挫折した男が、マネジメントで勝ち進む物語が面白くないわけがない。まもなくブラピ主演映画が公開される。こりゃ、楽しみだなあ。

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「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」 マイケル・ルイス著

2011-09-19 | スポーツ

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マネー・ボール (RHブックス・プラス)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2006-03-02

軍隊を退役し、缶詰会社の警備員として暇をもてあましていたある人物が、一念発起して野球のデータ化に取り組む。どのような数字が得点に結びつき、どのような数字に意味がないのか……結果は野球人にとって認めがたいものだった。曰く

・犠打は相手にアウトを進呈する行為にすぎない

・盗塁は成功率のわりにリターンが小さい

・打点は偶然の要素が大きく、勝負強さを示すとはかぎらない

・エラーの数はその選手の守備力を示すものではない(『H』か『E』の分かれ目は主観的だから)

……そしてもっとも重要なのは出塁率であり、長打率であるとした。これが有名なセイバーメトリクスという考え方。提唱したのは警備員だったそのビル・ジェームス。そして実際のチームマネジメントに活用したのがこの書「マネー・ボール」の主人公であるオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンだった。

野球ファンなら狂喜すること確実(あるいは激怒するかも)。以下のようなフレーズが満載だから。

「そもそも高校生選手に賭けるのは分が悪いのだ。スカウトはとかく高校生の選手を、なかでも投手をほめあげる。しかし高校生の段階でその選手の将来を予見することは不可能に近い。まだ肩が完成していないから、スカウトの評価基準はたったひとつ。速球のスピードしかない。けれども本来、投手のいちばん重要な能力は、力まかせの剛速球ではなく、打者をあざむくテクニックにある。」

「データに信頼を置けるところが大学生選手のありがたい点だ。高校生選手にくらべて試合数がはるかに多く、対戦相手も充実している。サンプルの規模がじゅうぶん大きいので、真の実力がより正確に表れる。」

……これを日本に敷衍できるかは微妙。日本においては高校野球が特別の地位を占めているから。むこうの人たちは甲子園の中継を見て「日本のプロはレベルが低いなあ」と誤解するほどだというし。全盛期のPL学園は、ぶっちゃけ当時の六大学とどちらが強かったのだろう。2球目につづく。

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