事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「死者との誓い」R.ブロック著 PART2

2008-08-26 | ミステリ

Block PART1はこちら

 マット・スカダーのシリーズはこれまでに16作刊行されている。以下はネットからひっぱった著作リストだ。原題がまたすてきなのである。

過去からの弔鐘The Sins of the Fathers 1976 
冬を怖れた女In the Midst of Death 1976 
一ドル銀貨の遺言Time to Murder And Create 1977 
暗闇にひと突きA Stab In the Dark 1981 
八百万の死にざまEight Million Ways to Die 1982 
聖なる酒場の挽歌When the Sacred Ginmill Closes 1986 
慈悲深い死Out On the Cutting Edge 1989 
墓場への切符A Ticket to the Boneyard 1990 
倒錯の舞踏A Dance At the Slaughterhouse 1991 
獣たちの墓A Walk Among the Tombstones 1992 
死者との誓いThe Devil Knows You’re Dead 1993 
死者の長い列A Long Line of Dead Men 1994 
処刑宣告Even the Wicked 1996 
皆殺しEverybody Dies 1998 
死への祈りHope to Die 2001 
すべては死にゆくAll The Flowers Are Dying 2006

……調べてみて初めてわかったのだけれど、このシリーズ、最初は売れなかったのだという。それが「暗闇にひと突き」と「八百万の死にざま」(86年、監督ハル・アシュビー、主演ジェフ・ブリッジス、ロザンナ・アークェットで映画化されている。800万というのはニューヨークの人口のことです~「この腐りきった、くそ溜めみたいな市(まち)に何があるのかわかるかね?何があるのか?八百万の死にざまがあるのさ」~)の成功によって書き継がれ、ブロックはとうに終了させようとしたにもかかわらず、現在もつづいている。

 さて、スカダーとはこんな男だ。
 かつてニューヨーク市警の警官だったスカダーは、犯人を追う途中で跳弾のために少女を死なせてしまう。警察を辞め、妻子とも別れた彼は、次第に酒に溺れるようになってしまう……この、アルコールとのたたかいがシリーズの基調音。AA(Alcoholic Anonymous……ピクサーの「ファインディング・ニモ」で、鮫たちが血を我慢するために語り合っていたのはこの集会のパロディ)と呼ばれるアルコール依存症自主治療協会の存在など、スカダーを読まなければ吾妻ひでお(アル中失踪マンガ家)の著作まで知ることはなかっただろう。

 スカダーの断酒は、何度も失敗しながら現在も継続中であり、高級娼婦だったエレインとの恋愛に物語はシフトしている。浮かび上がってくるのはニューヨークという都会のナマの姿だ。以下次号

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「死者との誓い」ローレンス・ブロック著 田口俊樹訳 二見書房ザ・ミステリ・コレクション

2008-08-26 | ミステリ

513t5a6x8vl ……ニューヨーク市警には、単語の頭文字を並べたこんな隠語がある。少なくとも昔はあった。新米警官が警察学校でまず教えられ、刑事部屋では何度も聞かされることばだ。ゴヤコッド(GOYAKOD)。ケツを上げてドアを叩く(Get Off Your Ass and Knock On Doors)。
 そして、たいていの事件がそうした労を惜しまぬ地道な捜査で解決するのだ、と教えられる。が、それは嘘もはなはだしい。たいていの事件は自然に解決するのである。夫を撃った妻は警察に自ら通報し、コンビニエンス・ストアを襲ったホールドアップ強盗は、たまたま通りかかった警察官の腕に飛び込み、失恋した男は恋人の血糊がついたナイフをベッドの下に隠したままにして、そんなふうに事件は解決するのである。自然に解決してくれない事件も、その大半はタレ込み屋の情報によって解決するのだ。腕のいい職人でなければいい道具は使いこなせないと言うが、それはお巡りとタレ込み屋の関係にはあてはまらない。
 しかし、自然な解決も望めず、悪玉の名を(それが善玉の名の場合もある。タレ込み屋も嘘をつく。それはほかのみんなと変わらない)喜んで密告してくれるタレ込み屋も現れない事件がたまに起こる。捜査というものが真に必要な事件がときたま起こる。そこで初めてゴヤコッドの出番となるのだ。
 今、私がしているのがそれだった。

「死者との誓い」をほぼ10年ぶりに再読する。初めて読んだとき、ページを閉じてちょっと呆然とした。今わたしが読み終わったこれは何だ?オレは今とんでもない作品を読んでしまったのではないか?と。

 何度も「この1冊」で特集したように、わたしはローレンス・ブロックの大ファンだ。ウィットとユーモアに富み、文章の切れ味はするどく(上の文をまず読み込んでほしい)、ありがたいことにたいそう働き者なのでたくさんの著作がある。

殺しのリスト」の号でも紹介したが、彼は三つのシリーズを並行して書き続けている。
1.寡黙な殺し屋ケラー
2.饒舌な泥棒バーニィ
そして、もっとも有名な
3.アル中私立探偵マット・スカダー
のシリーズだ。ああ長くなりそうだ。以下次号

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解説者を評定する~北京オリンピック篇その6「星野ジャパン」

2008-08-26 | スポーツ

20080825k0000m050061000p_size5 北京オリンピック篇その6「地デジの功罪」はこちら

 もう、野球に関してはボロボロのあつかいだ。かつて星野ジャパンを賞揚し、金メダルをとることが“絶対条件”とまであおったマスコミが、である。結果は4勝5敗の負け越し。韓国、キューバ、アメリカには一勝もできなかったし、かつて格下だと侮っていた韓国が9戦全勝で金メダルをとったことを考えれば、確かに惨敗。イチローや両松井がいれば、なーんて無いものねだりをしたところで、他国だって状況はいっしょだし、アメリカにいたっては大学生が先発していたではないか。要因はマスコミがさっそく挙げてくれている。

ストライクゾーンが日本と違い、加えて審判のレベルが低く、コーナーを攻める日本野球に不利だった。

・故障者が多く、24人におさえられたベンチ入りメンバーでは対応しきれなかった。

・国民の期待が大きすぎ、GG佐藤の連続タイムリーエラーなど、プレッシャーに押しつぶされた。

・コーチ陣が専門職ではなく、山本浩二、田淵光一など、星野仙一が自分の同期生で固める仲良しクラブに堕していた。

いちばん過激だったのは「サンデーモーニング」の張本勲で、「(首脳陣は)しばらく出てくるなよっ!」と激昂していた。出てくるな、とは来年行われるWBCの監督を受けるなよ、ってことだろう。

 しかしわたしはこう思う。野球って、こんなスポーツではなかったか。よほどの戦力差がないかぎり、強いチームが必ず勝つとは限らない。日本の9戦全勝って線も十分にありえたはず。ペナントレースを考えてみよう。優勝するチームですら勝率は5~6割である。かつて阪神タイガースとPL学園を戦わせたらどうなるか、というネタで盛りあがったことがあるけれど、10戦して阪神は10勝できるだろうか。巨人は松坂相手の横浜高校に全勝できるか?

 わたしはむしろ「コーナーを攻める投球術など、身内でしか通用しないテクニックだけが進化し、中継ぎやストッパーを固定して“勝利の方程式”なんて思考停止な作戦をとっている反動が出たのではないか」と考える。本番はWBCなのであり、その反省を活かせばいいだけだ。批判が許されなかった星野仙一を、この機会に叩いてしまえとする風潮には賛成できない。熱血漢な星野嫌いのわたしですらこう思っている。みんな、もうちょっと冷静になろう。

次回は「江川  VS 張本

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