ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

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『ジャズラックに告ぐ』を読んだ、杜撰な本だが、勉強はできた。

2008年06月16日 16時08分30秒 | レバレッジリーディング
JASRACに告ぐ(晋遊舎ブラック新書 5)
田口 宏睦
晋遊舎

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ジャズラックに告ぐ

著作権の問題、特に音楽の著作権と、ジャスラックという団体(俺も会員)に興味があったので読んでみた。

ま、大前提として苦言だが、この本の作りは粗雑だ。著者の立脚点も雑で、全体として粗末な作りと言わざるを得ない。

が、新聞で取り上げられた事例や、その人たちへの取材での生の声を聞くことができるのは評価できる。

問題は二段階あり、
1)お店、ミュージシャン側が著作権について無理解。
2)著作権については理解し賛同するがジャスラックのやりかたには賛成できない

とまとめられる。

1)は問題外であって、著作権は音楽家の糧であり、音楽を愛する人なら良く理解をしなければならない。

2)こそがここで提起されるべき問題だ。

ジャズラックは
・業務を日本においては事実上独占している
・設定している著作権料が高い、官僚的な算定。
・ミュージシャン、作者への支払はグレーでわかりにくい。(これは体験的にもそう思う)
・厳格に著作権者の権利を代行し、とりたてている(特にカラオケ店、ライブハウスなど)。取り立て方が非人道的で強硬。
→おとり捜査のようなことをする(客を装って入店しリクエストをして曲がかかるところを録音し証拠とするなど)
・見せしめの効果(交通違反と同じ)を狙ってか、取り立ては強硬で情け容赦ない、過去に遡って数百万もの請求をすることがある。しかもこれらは合法ギリギリであって、訴訟で負けることはない。
・有力な天下り先になっている
・潤沢な資金を持ち、政治家への献金も巨額
・古賀財団への無利子巨額融資など、不正事件が発生している。不明瞭な事態で有力ジャスラック会員間での訴訟合戦となった。小林亜星、なかにし
れい、などの件。


●たとえばオーケン事件
大槻ケンジ。自分の楽曲を著作に引用したことをジャスラックに咎められて、著作権料をジャスラックに支払った。しかしジャスラックからの支払はなかった、とか。

●新潟ストリートジャズ
街起こしイベント、無料のストリートジャズに、法外な著作権料を要求した。オリジナル曲などの想定がない。

●ジャスラックの由来
勉強になったのは、ジャスラックの由来。(官製組織だった。ウィルヘルム・プラーゲというドイツ人が著作権を無視した日本の現状に憤り、エージェントとして活躍したところ(これは正当だったようだ)、政府から疎まれ、許認可してとされた挙げ句に不許可となった、そのときに許可されたのはいまのジャスラックの元。プラーゲはその後、日本の著作権の父と賞されている)。そして日本における著作権を確立した元祖は、福沢諭吉だったということだ。copyrightを版権と訳したのは諭吉だそうだ。そういえば諭吉は他にも有名な訳語をたくさん作っていたような気がするな。


ウィルヘルム・プラーゲ
日本の著作権の生みの親


ウィルヘルム・プラーゲ―日本の著作権の生みの親
森 哲司
河出書房新社

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今、とんでもないことに気づいた。
世の中にはJASRACが題についている本はこれしかない。
カタカナ表記のジャスラックとついている本は一冊もない。
この本がメチャクチャマイナーなところから出ているのはそのせいか。
テレビでトヨタの批判ができないのと同じだな。

ジャスラック批判は怖ろしいことに、出版界ではタブーなのかもしれない。
いやー、怖いなー。

大丈夫か、俺?


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