ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

グループ登山・・・4

2013年03月20日 23時53分20秒 | Weblog
最初に休憩をとった小屋に戻る手前に何カ所かの岩場があった。
あったのだが、かなり大きな岩場であるにも関わらず、まったく視野に入ってはいなかった。
その時はそれほどまでに体調がすぐれず、真下を向いたままでの下山となっていた。

大岩の真下で休憩をとったが、アウトドア好きの面々がこのまま大人しく引く返すことなどあり得ない(もちろんいい意味で)。
せっかく持参したザイル、ハーネス、カラビナ、コントロールデバイス等々のギアをこの場で活用しようということになった。

残念ながら今の自分には、それに参加できるほどの気力はなかった。
樹木に倒れるようにもたれかけ、持っていた胃薬とビタミン剤を飲み、雪の中に埋まるようにしてしばし目を閉じた。
体は寒い。
寒いが、このまま唯じっとしていることが最も楽な様な気がした。

途中、Mさんが「何か中間着を着なきゃだめですよ。」と言ってくれ、思わずハッとした。
そう、背中がゾクゾクするほど寒かったのだ。
寒いことが分かっていながら、身動きをすることが億劫になってしまっていた。
それこそ低体温症の第二段階へと、まっしぐらに進んでいるさなかだった。

ありがたいひと言に危機感を覚えながら、アルパインジャケットを脱ぎミドルジャケットを一枚着込んだ。
背中からじんわりと温もりが伝わってくる。

再び目を閉じ、しばし雪の中で眠るように安静にしていた。
みんなの声だけははっきりと聴き取れた。
ザイルを用いて下降訓練をしているようだった。

どれほど目を閉じていただろうか。
時間は分からないが、Mさんが特製の珈琲をいれてくれた。
砂糖の甘さの効いた珈琲だったが、この時の甘さはこの上なくありがたかった。
そして体の中から温まってくるのが分かった。
「五臓六腑にしみわたる」とは将にこのことだろう。

体調もそれなりに楽になった(ような気がする)。
吐き気もかなり治まり、みんなの活動の様子を見ていた。
わずかでも体調が戻れば自分なんぞはいい加減なもので、「俺もやってみようかな・・・」などという思いに駆られる。

握力が中途半端に戻っていないことが気がかりだったが、まぁこれくらいであれば何とかなるだろう。



二度目まではザイルのみの「懸垂下降」であり、ウン十年ぶりのチャレンジだった。
三度目にハーネスとコントロールデバイスを用いて降りたが、これがまた何という「楽」!そして「安全!」。
やはり道具は「使ってなんぼ」のものだとしみじみ思えた。