ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

この日がきた・・・・・2

2009年11月13日 22時07分02秒 | Weblog
諸行無常。万物流転。
そんなありきたりの言い尽くされた言葉が身にしみて痛い。

他人の俺がそんなに凹んでどうする。
俺のことなどゴンが知るはずもないだろう。
サッカーの応援など、たかが趣味の世界じゃないか。

できることならそう思い続けていたい。
そう思えたならどんなにか楽だろう・・・。

今でも忘れることができないゴンの思い出がある。
2002年シーズン。
当時は2シーズン制になっており、ジュビロの黄金期でもあった。
ファーストステージを圧倒的な強さで優勝したジュビロ。セカンドステージもそのままの勢いで勝ちまくっていた。
そしてこの試合に勝てばセカンドの優勝か決まるという日の夜。俺はホームスタジアムの最前列にいた。
セカンドでの優勝は、つまりチャンピオンシップの行われない、Jリーグ史上初の完全制覇での優勝を意味した。

「産みの苦しみ」とでも言えばよいのか、90分では決着がつかず、延長戦となった。
先に点を入れた方が勝つ「ゴールデンゴール方式」での延長戦。
目の前での完全制覇を願いながらも、オウンゴールすら絶対に許されないという気の焦りはあった。
だが史上最高の歓喜は、俺のすぐ目の前で起きた。
福西が放ったシュート。そのボールが俺のほんの数メートル前でゴールネットを大きく揺らしたのだ。
「ウオーーッ!!!」と両握り拳を高く突き上げようとしたそのときだった。
一人の選手が看板を飛び越え、俺の方に向かって猛ダッシュして来るではないか。
「えっ、なに?・・・誰?・・・な、なんだ?」
その数秒後、俺は中山雅史という一人の男に抱きしめられていた。
丸太のようなぶっとい腕。その腕が俺を含めた数人の体をがっしりと掴んでいた。
何が何だかわからないまま、ただ「離すもんか。離すもんか」とだけ、そう思い俺も彼の体をわしづかみにしていた。

頭の中は真っ白だった。
ほんの刹那の出来事が、事実であるはずの出来事が夢を見ていたかのように思えた。
俺の隣にいたスキンヘッドの某氏も「かぁ~たまんない!」といった満面の笑みを浮かべていたっけ(笑)
やっと興奮が冷め、気づけば俺のシャツが、腕が、手のひらが、そして首や顔までが汗でべっとりに濡れていた。
自分の汗でないことはすぐにわかった。
そう、彼の、中山雅史の汗が俺の体とシャツに染み込んでいたのだ。

いったんホテルへ戻り、着替えをして応援団仲間との優勝祝賀会へと出かけた。
その夜は、朝の4時頃まで飲んだ。
もちろん顔は洗っていない。手も洗っていない。当然シャワーも浴びていない。
そして応援の時着ていたシャツは、確か一週間ほど洗濯しなかった。
彼の汗を落とすことなどできるはずがなかろう。

中山雅史に抱きしめられた夜。
サッカー史上最高の歓喜を二つも味わうことができた幸せな夜だった。