夫れ刻薄既に扇げば、則ち下、百端を生ず。頁652
(訳)それゆえ、道徳の精神は広まらずして、残酷で薄情な風潮が盛んになっております。そもそも、刻薄の風が盛んになれば、下にはさまざまな事件が起こります。頁652
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書籍の紹介
『童心残筆』安岡正篤
雲 水
心は自ら「無限」に憧憬れ、無碍自由を欣求する。しかも自分は如何にも狭くろしい。執拗い、垢染んでゐる、むづ痒い。
͡この「我」と謂ふ蓋をぼろぼろと一思ひに掻きむしって了ひたい。これ程迄に自分を焦ったがらず、正躰の知れぬ悪性の腫物に、グサと小気味メスを刺して、有るだけの膿を絞り出したい。それにも拘わらず、如何しても痒い處に手が届かぬ。メスが振へぬ。堪らなくもどかしくって焦ったい。自然は愛に溢れているではないか。自分は愛に包まれているではないか。なる程夫れには相違ない。然しながら、自分はしっとりとその自然の愛に融合することも出来ない。
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