タイトル---安岡正篤「天風」を語る。第979号 23.09.15(木)
昨日、円心会・木場啓介師範から(『こころの潜在力』宮本武蔵と中村天風)をご贈呈して戴きました。その中に、標題の項目がありましたのでご紹介します。
◇安岡正篤「天風」を語る
三十数年前、当時の佐藤総理の秘書官として著名な楠田実から、幸運にも安岡正篤(1897~1983)が主宰する「而学会」のメンバーに誘われた。その席で、わたしは中村天風の哲学について安岡先生にうかがった。残念ながら、天風にお目にかかったかどうかはお訊ねしなかった。しかし、その静かな口調から、天風哲学の一端に触れていることが察せられた。
安岡正篤は、いまさら紹介するまでもないが、古今東西の学問に通じ、その知識をベースにリーダーたるものの「人間学」を説いた。
天風を語るとき、その口癖である「物知りより物わかりが肝心」という言葉を聞いた。安岡正篤は、佐藤総理はじめ歴代総理の指南役的な存在でもあった。彼に接すれば接するほどに、わたしは天風哲学を論理的に究め、天風がわたしに何度も語ったように、「人生哲学」の論理を構築せねばならぬとの想いを強くしたものであった。
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天風さんは、武芸にも秀でていたため、軍事探偵の任務を全うし、その過程で自らの人物を作ったのでしょう。その後に欧米を巡り、ヨガをベースに精神美の実践哲学を築かれたのでしょう。あの方は、人物ができていて立派でしたから、知識と思想が身についたことで、そこに彼の実践哲学としての本領があるのです。
人物が根幹で、思想はそれから生まれ出ずる葉や花のようなものです。天風さんの思想は、あの人が持つからこそ傾聴に値する哲学となったのです。
あなたが専門とするシステム工学は、哲学的には「時間」「トータル」「スペース」のそれぞれの原点をいかに把握し、総合的なバランスを、どう保つかという理論であり、『易経』の基本でもあります。天風さんの説く、人間の活力を遺憾なく発揮し、持続させるかにも通じるものがあります。あなたは、この機会に人物をよく勉強して、天風哲学のよき理解者となることです。(安岡正篤)