私共空手道場の、文武両道の「文」の骨格に据えているのが『南洲翁遺訓』なのです。『南洲翁遺訓』は、主に、政治哲学を説いているので、極めて高度であると同時に難解な文言で綴られています。それを空手道場で修行する、子供たちに教えているのです。どんないい訓戒でも、人が純粋な内に、徹底的に、頭に、身体に、叩き込まなければならない、というのが責任者である私の考え方なのです。
第一章は、「廟堂に立ちて大政を為すは天道を行うものなれば、些とも私を挟みては済まぬもの也。---」
意訳「政府にあって国のまつりごとをするということは、天地自然の道を行うことであるから、たとえわずかであっても私心をさしはさんではならない。---」
こういう難解な、大人でも判らないような文言を、どうやって子供たちに教えるのか、ということです。そこで、内容全てを、それぞれの立場に置き換えて考えよう、ということで理解をさせ、なおかつ原文はそのまま口移しで暗記させるのです。
例えば、「学校で生徒会の役員をするようになったら、どんなことでもずるいことをしてはいけない」というふうに。
そうすると子供たちは正義感が強いから、真剣に学んでくれるのです。人間社会では、歳を重ねるにつれて、建前とか本音とか、いろいろ自分に都合のいいように解釈し運用しているのが実情です。
世界がグロ-バル化した今日、それぞれの駆け引きがあるにしても、真髄・真諦は明確に精神として持っていないと、断罪される場合があると思うのです。これからの世界に生きる子供たちの精神に、魂の骨格を植えてやるというのが、指導者に課せられた使命だと思うのです。そして最終的に、一番大事で強いことは、「勤勉・至誠・謙虚」の精神を持ち続けるということだと思います。