タイトル---『南洲翁遺訓』の紹介。第782号 23.03.16(水)
『南洲翁遺訓』第四章は、次のように訓戒しています。
「萬民の上に位する者、己れを慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり----」と。
意訳「人々の上に立って政治を行う者は、先づ以って己を常に省みて、自分の行いを正しくし贅沢や奢りに流されず、節約をして無駄を省き仕事を立派に果たさなければならない。そして人民の模範となって----」(荘内南洲会・小野寺時雄著『南洲翁遺訓』より)
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私が主宰する空手道場では、幼児を含む子どもたちが『南洲翁遺訓』の原文を絶叫しながら暗記しています。そして大半の子どもたちが、この『南洲翁遺訓』をせっせとノートに書いてくるのです。
原文は日常的に使用しない言葉ですから、大人にも難解です。だから私は、子どもたちの次元に置き換えて解説をすることにしているのです。このことは、二年前荘内南洲会人間学講座受講にお伺いした際、懇親会の席で、皆様にお詫びとお願いということで紹介方々お話致しました。
子どもたちに対して、よい行いをしましょう。いばりたい気持ちが出てきても、それをおさえましょう。節約をしましょう。仕事には体当たりして行きましょう。そのことが元気と長生きにつながるのです。そして人々のお手本となりましょう、と何時もお話しています。
有難いことに、日本空手道少林流円心会道場に集う子供たちは大変優秀です。幼児期からこういう素晴らしい金言に触れて育つと、人間が素晴らしく成長するのです。
円心会師範に木場兄弟がいます。二人とも師範となりました。過ぐる13日は薩摩南洲会をしましたが、その席上で『南洲翁遺訓』を拝唱する木場兄師範の読み方は天下一品でした。この若さでと唸り頼もしくなりました。
『南洲翁遺訓』は一通り読んだからもういいやということでなく、何回も繰り返し読むところに意義があるのです。
そして我が出てくるような時は、それを抑え込む真摯な人間性がなければならないのです。そこに来てはじめて南洲翁遺訓の思想が、西郷南洲翁の訓戒が身についたと言えるのです。少しばかり、西郷隆盛研究をしたからて言って、『南洲翁遺訓』を改竄するような思い上がったことをしてはならないのです。なぜなら『南洲翁遺訓』は130年の長きにわたり、西郷隆盛の訓戒として日本人の肌に沁みついているのです。
『南洲翁遺訓』は、節義・道義・至誠・仁愛・清廉・清貧等々を訓えているのです。こういう『南洲翁遺訓』を個人が勝手に改竄した場合、歴史的に指弾され、鉄槌を受ける事必定です。なぜなら、この訓戒は西郷隆盛の精神から吐露した言葉だからです。
『尋問の筋これあり候』には、西郷南洲翁と菅臥牛翁が親しくお話をするところが描かれています。著者は荘内地方の雪まじりの寒風が吹きまくる中、実際に荘内地方を歩いたのだそうです。西郷南洲翁と菅臥牛翁の「徳の交わり」に迫るためです。
西郷隆盛は菅臥牛翁が鹿児島を訪れ、胸襟を開いて親しく語り、そして送る心情を漢詩に吐露しているのです。こういう関係には、何人と雖も介入出来ない、人間の尊厳性があるのです。
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菅先生を送る
相逢ふ夢の如く 又雲の如く、
飛び去り飛び来って 悲しみ且つ欣ぶ。
一諾半銭季子に慚づれども、
昼情夜思君を忘れず。