常念が見える部屋から

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季節の移ろいに写真を添えて発信します。

自力更生の道  再会

2010年08月21日 | 来し方
サギソウ
今年は鷺草の育ちが良くて、管理指導を受けている茂木さんに褒められた。
15鉢の中から、一番と自負する一鉢を下げて、ある人を訪ねた。
それはN常務である。
会議の途中で席を蹴って退席され、それ以後23年間交流は途絶していた。
清流 梓川の近く、あの当時と変わらない閑静なお住まいである。
長い歳月の中、その人は、多く変わり、多くは変わらずに立っていた。
持参したサギソウの鉢を玄関の飾り台に置くと、殺風景な空間が一変する思いがした。
戸惑い気味だった主の顔に幾分笑みがさした。
以前はこの飾り台には必ず季節の花が飾られていたのだが




来し方の記

程なく、社命により技術職から営業職に転じ、私の勤務環境は大きく変化した。

工具鞄を持った訪問は、どこからも歓迎されたけれど、書類鞄が歓迎されることはなかった。

そのような中で、会社は再建に向け大きくかじを切った、様々選択肢の中から自力更生を選び、社長同士が昵懇であったN社の好意で同社のN常務の派遣を受け、月1回のペースで更生指導を受けることとなった。

月1ないし2回とはいえ、ぬるま湯に慣れきった我々にとって、妥協が許されないすさまじい時間帯であった。

会社の恥部を公開することに躊躇する役員に向かって「企業の健康診断に必要なことは、正確なデータに基づく冷酷な分析である、そのことが理解できない人間はここにいる必要はない 出て行け」と一喝した。

しかし 長い停滞期に澱のように溜まった不良資産の全容把握は困難を極め、そのうえ新たな不良債権の発生を抑止できなった。

N常務は帳票類を丹念に精査し、疑問点を書き出し、発生事由、解決法、解決期限を厳しく求めて来た。

 苦し紛れの生半可な回答は許されない、N常務のノートに記録されたその日が来ると必ず確認の電話が鳴った。

N常務の本業は、県内屈指の企業N社の常務取締役である、日常業務は多忙を極めていたことは想像に難くない。

その上当社への経営指導は全くの無報酬であった。

無関係ともいえる企業再建に注ぐその情熱は少し時づ社内に感染を広めていった。

それでもN常務の経営哲学が社内に定着するのに約10年を要した。

しかし それは企業にとって大きな財産となって後年花開くことになる。

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