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三九郎炎上す(三九朗の思い出)

2008年12月23日 | 季節の便り
紅いカクタス



完成した三九朗の1階部分は周りを萱や藁で囲うと立派な古代式住居になる。
中心に小さな囲炉裏を作り、そこで焼いて食べる餅が旨かった。
最下位の五番に回ってくる餅は小さな切れ端だったけれど。
隣村の少年たちが完成した三九朗を焼き討ちしようと、徒党を組んで攻め込んでくるという噂が、まことしとやかに流れて、古代住居は夜遅くまで交代で見張番がつく番所の役目も果たした。
実際のところ 昼間村境の畔にこちらを窺う様相の人影が見えた時は緊張が走った。
ずっと時がたって判ったことだけれど、当時の隣村でも同じ噂が流れ、不意の攻撃に備え、斥候を立てていたということだ。
ある日の昼時 古代住居の中にたむろしていた親方の一人が、不用意に火のついた藁松明を振りかざしたところ、松明の火が乾ききった古代住居の天井の藁に燃え移ってしまった。
子供心に、ことの重大さを思い、必死になって消火に手を尽くしたが、天井の藁や萱に吸い込まれるように火の手が広がり、上に向かって燃え上る火の勢いに抗し切れず、呆然として立ちすくんだ。
「逃げろ」の一声で全員が転がるように外に飛び出し、藁灰をかぶった真っ黒な顔で放心したように座り込んで燃え上がる三九朗を見た。
天高く上る煙と、響き渡る青竹の破裂音に大人たちが駆けつけたとき、偶発的事故による火祭は紅蓮の炎をまとって最高潮に達し、ただただ見守るしかなかった。

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