地区の老若男女が集まって、公民館で運動会の慰労会が盛大に開催された。
取り寄せた料理の中に、美しく彩色された具が詰まった海苔巻が入っていた。
目を引くピンクの食材は「デンブ」だった。
聞くと若い人はデンブを知らないという。
運動会の楽しみはデンブが入った海苔巻き弁当だった。
デンブは細かにほぐした白魚肉に、たっぷり砂糖を入れて、薄紅色を付けた気持ちが浮き立つような食材である。
寿司飯の上に甘辛煮の干瓢を延し、桜デンブを多めに散らして手際よく巻きあげる。
切りそろえて、切り口が少し見える様に重箱に詰めると仄かに海苔の匂いが漂う。
子供たちは固唾をのんで呑んで見守った。
両端から出た小さな切れ端は、見守る観客の口に入った。
デンブの甘さが体中を駆け巡って、何とも幸せな気分だった。
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