地区文化祭に出品された大ノコギリである。
出品者によれば「切り倒された大木から板を切り出すためのノコギリ(木挽き鋸)」で代々受け継がれたものだそうだ。
手入れを怠らないから、今でも使うことが出来る、が使いこなす人はいないだろうと言う。
私はこの手の大鋸の使い手を見たことがある。
切り倒された直径が子供の背丈をはるかに越える大木を、縦に二つ割りにする作業であった。
最初の作業は見なかったけれど、既に中ほどまで切り進んでいて、材木の重量で切り口が押しつぶされるのだろう、それを防ぐために切り進んだ隙間のところどころに楔が打ち込んであった。
親方が鋸をゆっくり押して、ゆっくり引く、その時わずかな木挽糠(大鋸屑)が地面に舞い落ちた。
しばらくすると、鋸を引き抜いて丁寧に時間をかけて目立てをする。
鋼を削る鑢の音を聞きながら、親方の真剣な所作を子供達は凝視した。
うなりを立てて大木を切り裂く、現在の帯鋸からは想像も出来ない景色であった。
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