らんかみち

童話から老話まで

少子化担当大臣に贈る一冊

2009年02月18日 | 社会
 愛媛県の県庁所在地は松山市で、NHKのウルトラ大河ドラマ「坂の上の雲」の舞台となるのは周知されているでしょうか。今治市からだと一時間くらいなので、お隣っちゃそいうことになるんでしょう。それなのにこの松山市の、とある島を舞台にした本が今治市の本屋さんに置いてないとは、どういうこっちゃ! そのタイトルも「小さな島のちっちゃな学校  汐文社」。今治市内を駆け回ってようやく一軒の本屋さんで見つけました。
 
 かく申すぼくも「野忽那島=のぐつなじま」に興味があったので買ったというより、著者がお師匠さまなので買ったといって良いでしょう。
「都会のこどもたちが親元を離れて、自然の中で暮らし、学ぶ。そんなシーサイド留学制度をもつ、野忽那小学校。22年間で、全国から120名のこどもたちがこの島にやってきました」
 どうやらこの3月で最後の生徒となる少年を送り出した後は休校となるらしく、シーサイド留学も終わりを告げるというのでお師匠さまは筆をとった由。
 
 偶然ですが、我が島で唯一の高校もこの3月で閉校となるそうです。卒業生でもないぼくであっても、一抹の寂しさは禁じ得ません。かつては野球部の甲子園出場を密かに期待したこともあったんですが、今となってはうたかたの夢と消えました。東京は人口が増えたと聞きますが、少子化時代にあって全国どこでも似たような状況があるのでしょう。
 
 発展途上にある国家が激しい新陳代謝を繰り返すかのように人命が軽んじられる一方で、栄枯盛衰のたとえ通り、成熟した国家が老衰を迎えるかのような日本に生きる我々は、幸せなのかそうでないのか。もしかしたらこの本の中に日本の命運を占うキーワードがちりばめられいるかもしれません。お目出度らしい小渕優子少子化問題担当大臣にも是非読んでいただきたい一冊です。

そばもん(ビッグコミック)

2009年02月17日 | 酒、食
 ビッグコミックといえば麻生総理も愛読するらしい隔週で発行される漫画誌で、ぼくも「黄金のラフ」(裸婦のことじゃなくゴルフの話)を読んでます。このコミックは一国の宰相が読んで恥ずかしくないほど充実した内容で定評がある、かどうかしらないけど、最近「そばもん」という、脱サラおじさんがそば職人を目指して悪戦苦闘する様子を描いた話が登場して、その店の名が「夢屋」。まさかぼくの通っていたそば屋がモデルだろうか、と読み始めたけど違ったようです。
 
 夢屋さんは(あえてリンクを張りませんけど)ぼくの先輩格に当たる方が脱サラして始めた店です。ぼくがまだそばを打たなかった頃は、美味しい店だなと思ってたんですが、自分で打てるようになった今では……。
 粉の仕入先はぼくが良く知っているそば粉専門の製粉屋さんで老舗。店主のそば打ち技術は最高なんですが、本来なら40秒ゆでる太さにするところを、30秒ゆでて丁度良いくらいの細麺に切っているのは、ゆで時間を短縮して回転を早くするためでしょう。この細さが仇となって、そばの味わいが汁の風味にかき消されてしまいがちなんです(実はぼくが切るのもかなり細い)。
 
 コミックの「そばもん」で、今回の主人公は「ずる玉」と呼ばれる、こねるときに水が多すぎた玉に粉を後から追加して、「それは切るまでもない『切らず玉』でだ、捨てなさい」と親方に一喝されてしまいます。
 そばって不思議な性質を持っていて、後から水を追加しても粉を追加しても、どちらもうまくつながらない。一発勝負というほどではないけど、慎重に水を追加して行って最後の「括り」というまとめる作業を終えた後は修正がききません。
 
 ところがところが、今回はずる玉が悪玉呼ばわりされてますが、きっと回が進んだころ再度ずる玉が登場して、「この粉はずる玉でないと打てない」なんてセリフが聞かれるはず。
 そばって、うどんと違って本当に奥深いものです。間口は広くて、そば打ち体験教室に行けば幼稚園児でもちゃんとしたそばを打つことができます。なのに自分で道具をそろえて自力で打ってみたら、そう簡単にはいかないんです。
 
 スーパーでそば粉を買って打ってみて「なぜだ、なぜつながらない!」と呆然とすることもありました。そういったそば粉の多くは、ずる玉で打って10分ほど放置することでつながるのだと知ったのは、ぼくがそば打ちを習ったずっと後のことでした。
 あの「そばもん」は絵がもうひとつ好きじゃないんですが、ぼくにとっては実用的な漫画です。たとえば、かけそば=温かいそばの麺を歯ぬかりしないようにどんなブレンドで打つか(スパッと切れるカップそばの歯ごたえが目標)を漫画に教わろうかな、と思ってます。

そのうちセクハラ発言も

2009年02月16日 | 社会
中川財務相、泥酔疑惑に「ごっくんしていない」答弁(朝日新聞) - goo ニュース

 風邪薬メーカーは怒らんかい、どの薬をどんだけ飲んだらあそこまでろれつが回らなくなるんでい! 大麻やっとるんとちがうやろな? というよりあそこまで飲んだら大麻より悪いんじゃないかぁ。
 どこから見ても酔っているようだったけど、大臣に上り詰めるほどの人物が飲んで記者会見に臨むかな? 何者かに一服盛られたと考える方が自然じゃないでしょうか。
 官僚に疎まれて、渦中を「うずちゅう」と、答弁書にルビをふられたという説も聞こえてきたりするなか、ここまでやられたら屈するしかないでしょう。
 もうこの内閣、早いことどうにかしてくれ。クリントン国務長官との会談でセクハラ発言が飛び出してからでは後の祭りだよ!

じゃあこちらは、小池百合子総理でどや!

2009年02月15日 | 社会
金総書記義弟が決定的影響=後継体制で「摂政」に-聯合ニュース(時事通信) - goo ニュース

 今ここで麻生降ろしをやられて困るのは野党じゃないでしょうか。小池百合子総理に定額給付金をばら撒かれた上で解散なんぞやられたら、勝敗は与野党どちらに転ぶかビミョー? いっぺん民主党に任せてみようか、という人が、いっぺん女にやらせてみようか、とブレても不思議じゃないでしょう。小沢さんの顔を毎日テレビで見せられるより、小池さん見ているほうが良いですもんね。
 病床にあるといわれている某国首領様も、小沢さんより小池さんと握手する方がきっと楽しいでしょうから、拉致問題も進展があるかしれません。
 
 外交はそんなもんじゃないだろ、とお叱りをいただきそうですが、国際政治だって人間同士のやることですから、「こいつ、嫌な奴やな」と、首脳同士がはなっから対決姿勢で臨むより和やかムードで始まった方が良いなら、その役割を男に求めるより女に頼んだ方が手っ取り早いというもの。

 しかしながら、鉄の女といわれ、フォークランド紛争を指揮した当時の英国首相マーガレット・サッチャーさんを引き合いに出すまでもなく、上に立った女はおおむね頑なで強烈です。男なんぞに負けるものか、という意識が過剰に働くせいでか、血も涙も無い荒療治をやりたがるように思えます。
 
 小池百合子さんが血も涙も無い人だと言うつもりじゃないですが、日本は今まで外国の言う事を素直に聞きすぎたように思えるので、ここらで厚かましい外国にガツンとかまして欲しいんです。
 サッチャーさんはこういったそうです。"If you want something said, ask a man. If you want something done, ask a woman."
「何か言ってもらいたい事があるなら、男に頼め。してもらいたい事があるなら、女に頼め」と。

売れなきゃ作品とは呼んでもらえない

2009年02月13日 | 童話
「そろそろ売る物を作りましょう」といわれ、「まさか、ぼくの技術ではまだ無理ですよ」と答えたんですが、陶芸教室には、作品を売って教室に還元する、という不文律があるといいます。
 そりゃそうですよね。無料で教えを請い、ろくろを回す電気代よりも安いか知れない教室使用料しか払っていないのは確かに心苦しい。作品が売れてわずかでも教室の足しになればと思います。。

 とりあえず20作品ほどのストックがあるから、これを焼いてみたらどうか、なんて考えていたら先生が、
「あんた、それ全部焼くつもり?」
「はあ、そのつもりですが?」
「フム……。某という人間国宝の陶芸家はね、師匠の門に入って朝から晩までろくろを回し続けたそうですが、2年修行して初めて窯入れが許されたそうですよ」
「……」

 己が作品を省みて、なるほど、ごもっともでございます。こんなサンドペーパーで修正しないといけない出来損ないが売れるはずもないな、と確信しました。せっかくこしらえた物だといっても、引き取り手がいなくては自己満足の域を出ません。釉薬の無駄、窯のスペースの無駄。少なからず思い入れはあるものの、あからさまに出来の悪い10作品ほどを土に戻しました。
 
 昨夜はそばを打って皆さんに食べていただいたんですが、そばだって食べてくれる人がいればこそ打てるのです。出来損なったら自分の胃袋でエネルギーに戻すしかないけど、それにも限度があります。今でこそ、そばが繋がらないという失敗は無くなったけど、初めの頃は捨てるような気持ちで場末の飲み屋に持って行って常連客に食わせたもんです。
 
 それはそれで感謝されたものの、趣味だからといって、いつまでも他人様に評価していただけない物を作っていたのでは成長がありません。ぼくの書く文章も同じで、数打てばどこかの公募に当たるだろうと(まあ実際に当たることもあるけど)駄文ばかり書いてきたのを改めねば、と反省してます。陶芸も、ビギナーだから、で許されてきた粗製濫造は昨日まで。次回からは5月の「吉海薔薇祭り」のバザーに向けた作品にとりかかります。

そばの原点は丸抜き、基本はブレンド

2009年02月11日 | 酒、食
「異業種交流勉強会」という名の飲み会があって、ぼくはそば屋を名乗って手打ちそばを振舞うことになりました。インターネットでそば粉を注文して試し打ちしてみたら、思っていたのと少し違ってました。そば粉は大きく分けて三種類あって、更級、並、田舎の順で味が濃くなるといえば分かりやすいでしょうか。今回届いたのは並に準ずるものだったようです。

 そばの味は店によってずいぶん違います。上品な咽越しを好む土地柄もあれば、ざらついた無骨な麺が好まれる土地もあるようです。関西系はどちらかというと、うぐいす色した並系のそばが多いかもしれません。ところが先日東京に行って二大蕎麦所(勝手に選出)である高尾山と深大寺で食べた限りでは、おおむね、うずら色した田舎系のそばだったように思います。もちろん並と田舎に厳密な境界があるわけでなく、それぞれの店のオリジナルブレンドなんでしょう。
 
 異業種交流勉強会と銘打ってはいるものの、その実態は「B級グルメの飲み会」なので、三種類のそばを打ち分けたく思って今治の粉屋を訪ねたんですが、そう簡単には手に入りません。たまに農家直売品をスーパーで見かけますが、時期が悪くてそれも駄目。仕方ないからインターネットで別の店に再発注して届いた粉を、最初の粉とブレンドして10割で試し打ちしてみたら、とても満足の行くものに仕上がりました。
 
 今までブレンドといえばなんとなく、まがい物、それのみでは低質だから混ぜるんだ なんて考えてたのが恥ずかしい。コーヒーだって単味よりブレンドの方が美味しいじゃないですか。原点にこだわるのもいいけど、ひとつ道を外して歩いてみたら別のものが見えてくることもあるんなら、その後に原点に戻っても良いのでしょう。もっと早くこだわりを捨てて殻を破れば良かった、と今は悔いています。

 写真は粉屋さんの店先においてあった石油発動機。始動はガソリン、始動後の燃料は灯油で、ディーゼルではなくスパークプラグで点火します。冷却はシリンダーの周りに水を溜めて、少なくなったら追加します。焼玉エンジンと同じくディーゼルエンジンに取って代わられる以前、ぼくがこどもの頃に活躍してました。

今治大丸の閉店から一月余り、初めて気がついた

2009年02月10日 | 暮らしの落とし穴
 スーパーの食品売り場が敏感に反応して春物をラインナップしているかもしれない今日の陽気だったけど、ぼくの出足の方がフライングだったようです。味噌煮込みうどんなどの冬物がまだ並んでいて、最後かもしれないぞ、と買い込みました。ついでに生七味も探したんですけど見つかりません。
 生七味は今治大丸に行けばいつでも買えました。昨年の閉店前に一つ買ってあるんですが、賞味期限はそれほど長くない商品なので買い溜めができず、ちょっと残念です。
 
 郊外型の大型スーパーがいろいろ開店してくれたのはいいけど、大丸でしか手に入らなかった商品もあるし、あそこは高かったけどチーズの品揃えが豊富だったんです。
 まあ生七味もチーズも必需品じゃないからどうってことないし、どうしても欲しけりゃインターネットという手があります。ぼくと大丸との接点はその程度のもの。閉めたかったら閉めれてくれてもいいし、今まで良く頑張ったと賞賛したいくらいです。でもぼくが子どもの頃は、決してそうじゃなかったのです。
 
 今治大丸の前進は「大洋デパート」で、ぼくが子どもの頃、同じ○に大の字のロゴマークを持つ大丸が「同じロゴは日本に二つと要らん!」などといったかどうか、その傘下に入ったと聞いてます。
 大洋デパートといわれてもどこにあったんだろう、行ったことがあるはずなのに、と思い出してみたら、そこは高島屋だったりして、すっかり闇の中です。
 でも今の無粋なロゴマークになる前は憶えているし、高校の帰りに立ち寄ったものです。近所にあった「ショッパーズプラザ・ダイエー」も遊び場には都合よかったんですが、当時男子高校生の間で大流行したトレンチコートは大丸で買ったし、入学祝の腕時計も大丸の外商のおじさんから買いました。遊び方もプラザと大丸で違っていたのは、なんといっても大丸にはエレベーターがあったからです。
 
 今では都会でもエレベーターガールはあまりいないのではないでしょうか。でもあの頃は田舎のお爺ちゃんお婆ちゃんはエレベーターの乗り方を知らなかったし、百貨店にエレベーターガールがいなくてどうする! という矜持が当時のデパートにはあったのでしょうか、いつ行ってもきれいなお姉さんが出迎えてくれたものです。
「なあ、帰りに大丸に寄らんか? 麻里絵さん(仮名)ていう美人がエレベーターガールしとるんぞ」
 同窓生に誘われるまま行ってみると、なるほどすごい美人。しかも愛想が良くて、「麻里絵さんって、彼氏いるんですか」みたいな餓鬼っぽい質問しながら、用も無いのにエレベーターで上がったり下がったりする男子高校生の相手をしてくれました。
「きみたち、遊んでばかりいないで勉強しなさいよ」
 あんまりしつこいと、ビシッとたしなめられるんですが、それがまたうれしくて、「ハーイ、また来てもいいですか」と大人しく帰る。まだ男子高校生が素直でウブな時代だったのです。
 
 ぼくたちは決して一人ではエレベーターに乗りませんでした。みんなを誘ってでないと麻里絵お姉さんには会いに行けません。田舎の男子高校生は純情だったんです。
 大人になるにしたがって誰もがそういった純真さを失ってしまうわけですが、帰省して大丸のエレベーターガールのいなくなったそれに乗るたびにあの頃が懐かしく思い出され、切ない気持ちになったものです。

「大人になって働きだしたら、あのウィスキー買うて飲んでみたいのぅ、さぞかしうまいんじゃろう」
 ショーケースの中の舶来ウィスキーを眺めながら、同級生とお金を出し合って安い国産のウィスキーを買い込んで飲んだあの頃の高校生にとって、大丸は単なる百貨店ではありませんでした。都会への道標であり、外国へとつながっているだろう自分たちの未来への入り口でもあったし、青春のランドマークだったのです。大丸が閉店して一月余り経って初めてそのことに気付かされました。

市議選、次回はオレも

2009年02月09日 | 社会
 今治市長選挙は大方の予想通り新人が当選しました。といっても思ったほどの差でなかったのは、大企業を敵に回した現職の善戦といっていいでしょう。これはもしかしたらアッパレかもしれません。

 それにしても落選した現職と同姓同名の市議選の新人さん、トップ当選されました。何かが起きる予感はあったものの、無名の新人が大差のトップ当選とは誰もが驚いたらしく、名前と獲得票数の因果関係を検証したいという人もいるのだとか。しかし地元は、「総力を挙げて応援したのだから、当然の結果だ」としています。有権者になんらかの意識が働いたか知れませんがトップ当選にかわりがあるじゃなし、次回の選挙結果を待って考えてみましょう。
 
 ぼくの応援した市議候補も当選しましたが、2位から最下位当選まで1000票くらいの差しかありません。落選した方でもそんなに差がないから、あともう少し頑張れば! と悔いている方もおられるでしょうし、この人の名前がもし市長候補と同じ姓だったら、疑問票が比例配分されて通ったんじゃないか? なんて同情したくなったりします。
 
 前回の選挙も白熱して投票率75%。今回も73%だったから良い数字ですよね。有権者もけっこうハラハラドキドキを楽しんだんじゃないでしょうか。市議選の預託金がいくらで、得票数がいくらだとそれを没収されるのか知りませんが、次回の市長選挙にぼくと同じ姓の人が立候補したら、ぼくも市議選に出てみようか? なんて考えてしまった今回の選挙結果でした。
 あ、でも市議選に立候補して預託金は没収されるわ、奥さんに逃げられるわ、自棄酒飲んで喧嘩するわと、転落して行った男を間近に見たので、やっぱりやめておきます。

般若さんという仏事と神事のコラボ

2009年02月08日 | 社会
平成21年津倉村大般若波羅蜜多経転読


 当地は村上水軍が根城としていた島のひとつであるといわれております。村上水軍というのは、織田信長軍と戦って敗れて後に豊臣の覇権に屈し、およそ400年前に歴史の表舞台から消えた海賊です。
 ぼくが子どもの頃には海賊の勇姿を見れなかったのは言うまでもないのですが、彼らの血を脈々と受け継いだ末裔たちは海運業を生業としておりました。その隆盛たるや、六本木ヒルズの面積より狭いかもしれない当村にあって、個人所有の貨物船が17杯もあったというほどです。
 
 貨物船といっても当時は機帆船と呼ばれる、焼玉エンジンと帆の両方を駆使して走るという、現代エコ船のさきがけでありながら今となってはすっかりディーゼル鋼船に代わった旧式の木造船です。それらの主な積荷は桜井漆器、つまりお椀だったのです。お椀を積んでいるから文字どおり椀舟と呼ばれ、北は上方、南は九州まで往来し、地元へは九州の炭鉱から石炭を満載して帰って来たといいます。
 
 瀬戸内海は内海とはいえ、鳴門の急流が日本で最も早く、次いで船折瀬戸の名を冠された当地周辺の海が2番目に早いとされています。そんな激流逆巻く海の難所を、400年前の海賊が手漕ぎ舟で自在に往来していたのはすごいことだと地元のぼくでも思います。
 実際、木造船から鋼船へと進化した戦後になっても瀬戸内海の海難事故は後を絶たなかったばかりか、むしろ大型化した客船が沈没し、収容された遺体で漁村の浜が埋め尽くされる大惨事も起きたのです。
 それゆえ本四架橋は瀬戸内沿岸住民の悲願であり、その礎を支えているのは古来より海に飲み込まれてきた無数の霊魂なのです。
 
 したがって当村での最大の関心事は海上交通の安全でした。昔の村人たちが神や仏、すがれるものなら何にでもすがって安全を祈願したであろうことは、海の神様を祀る神社が至る所に存在することでも分かります。
「海神社にありがたいお経を奉納して、お坊さんに拝んでいただいたら、その後利益は僧正効果となって……」みたいなことを考える人がいても不思議ではありません。そこで、明治の時代になって廃仏毀釈の嵐が吹き荒んだとき村を挙げて協賛金を募り、讃岐の某寺から江戸時代に印刷されたお経を救い出したとされるのが、今に伝わる大般若経全600巻なのだそうです。それら一冊一冊のお経の裏表紙の内側には奉納した方の名と、「家内安全」「海上交通安全」の文字がはっきり見ることができます。

 こどもの頃はこのお経が入った箱を大人が担いで村を練り歩き、家々の軒先でその下をくぐったものです。「知恵のお経だから、ご利益で頭がよくなる」といわれてくぐった甲斐も無いぼくの体たらくですが、そういう願いが込められておりました。
「昔は大般若経を担いだ後、皆が集まって般若湯をいただきもって話に興じたもんじゃ」
 村の長老がおっしゃるように、この行事は村民のコミュニケーションを図る意味もあった由。つまりこれは神事と仏事に名を借りてはいるものの、日ごろは船に乗って顔をあわせることの少ない男たちの飲み会、娯楽でもあったと。
 今はもう担ぐことも飲むことも無くなって形骸化した行事なのですが、そこに込められた思いは、この先も連綿として受け継いでいきたいものです。

今治市長選挙によせて

2009年02月07日 | 暮らしの落とし穴
 明日は今治市長市議選挙の日とあって、こんな寒村にもこの数日選挙カーがやってまいります。過疎地の少ない票をあてにしてない候補も多いので昔ほどうるさくないのはいいんですが、候補者が来るたびに作り笑顔で手を振るのもしんどいもんです。意中の候補があるなら他はシカトすれば良いようなもんですが、世の中そう簡単ではないのです。
 過疎化した村はとかくゴミ捨て場の対象にされます。そういった暴挙に対抗するための自衛手段として、議員さんに力になってもらわないといけません。どなたが市長になるか議員になるか分からないので、全ての人に良い顔をしておきたいのです。
 
 ほんの数年前、今治市が市町村合併する前はこんなじゃなかったと思います。選挙になると町が二分され、負けた候補を応援した側の会社は下請けの下、孫受けとなって冷や飯を食わされたこともあるやに聞いてます。でも今回の選挙戦はドロドロしたというより、白熱したクリーンな選挙なのでしょうか。数十年前のこの町の町長選挙では実弾が飛び交ったのですから。
 
 いつの選挙戦のおりだったか、この村には面白いエピソードが伝わっています。
 激戦が予想された町長選挙の投票日、あるお爺さんが投票用紙に「次郎、すぐにかえれ」と書いたとか。お爺さんは電報と間違えたのかもしれませんが、開票時にその票が誰に投じられたものかで一悶着ありました。無効票になるのか、それとも候補者の○○次郎さんに投じられたものか、というわけです。
 
 その選挙の結果がどうなったのかは知らないんですが、今回の市長に立候補している現職と全く同姓同名の市議候補が立ってます。よもや現職への刺客として送り込まれたとは考えられませんが、「現職は落ちる」ともっぱらです。
 ぼくとしてはどちらに投じるべきか良く分かりません。どのみち島嶼部はないがしろにされるでしょうが、どちらの候補にも、せめてこの島をゴミ捨て場の対象にだけはしないで欲しい、と願うばかりです。