らんかみち

童話から老話まで

タラ鍋を闇鍋に貶めた反省

2007年11月03日 | 酒、食
 冷蔵庫から生タラの切り身を見つけてギクリとなりました。パックがすり替えられていて、いつ購入したものか分からなくなっていたからです。見なかった振りをして捨ててしまえば何のこともないのですが、自分で買ったものなので自分でケリを着けないと、ぼくのアイデンティティーが揺るいでしまいそうでした。

 臭いを頼りに食べられるか否か判断したくはあれど、元々タラというのは傷んでいるような臭いを発するので確信がもてません。真水で洗っても変化が無いので、塩を振って待つこと20分。ようやく臭みが落ち着きました。同時に自分の嗅覚に命を預ける覚悟も出来たので、スライスニンニクを加えてオリーブオイルで炒めてみました。

 しかしニンニクだけでは依然としてタラ特有の臭いが発しているような気がするので、バジルソースを隠し味に垂らしたんですが、後で考えたらこれもいけなかったようです。というのも、どえらい塩辛くて食えたもんじゃなかったんです。今思うと、この時点で塩抜きを考えなかったのが悲劇の始まりでした。

 たとえ198円の特売タラであったとしても、食べ物を易々と捨てることの出来ない性格ですので、翌日改めて料理法を考えたんですが、鍋しか思いつきませんでした。バジルソース仕立てのタラ鍋なんて邪道もはなはだしいんですが、とりあえず小さな鍋で炊きました。ところがバジル味は薄まったものの、タラの身の塩辛さに変化が感じられません。

 スープは水っぽいので、バジルに勝てるであろう八丁味噌を用いて味を付けたら、今度はスープも塩辛くなりすぎて、仕方ないから白菜を投入して薄めてみました。ちょうど良い感じになったところでしばらく煮たら、今度はタラの塩味が抜けてまたスープが辛くなり、また白菜を入れようと思ったら鍋を大きくしなくてはいけません。

 こうして鍋は完成したんですが、その量たるやおよそ三日分はあろうかというほどでした。鍋の中はタラなのか何なのか分からない、ほとんど闇鍋状態です。しかも八丁味噌、バジル、ニンニクがそれぞれ主張して、タラの臭みは消してくれたものの、もはや食い物なのかそうでないのかすら不明なものに変化してしまっておりました。
 こうして命を懸けてまでして得たものといえば、「臭いものには蓋をしろ」という教訓だけでした。

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