らんかみち

童話から老話まで

村祭りの神事を飲むことと見つけたり

2007年10月07日 | 暮らしの落とし穴
 朝の6時頃から海神社にぼくたちが立て籠もっていると、宮出しの神事を執り行う神主さんが現れ、皆さん先ずはお神酒と称して1合ほどの日本酒を飲みました。やがて、うやうやしい祝詞の後に、「う~~~~」と唸りながら、大きな白マスクに白手袋のいでたちで、神主さんが御神体を神社から御輿に移動せしめました。

 こうして村祭りは始まったんですが、御輿の担ぎ手はお爺ちゃんばっかり。それで、「とりあえず飲んで気合を入れてからにしようよ」と、朝飯とも朝酒ともつかぬ神事を執り行いました。
 そうして2時間ほどしてすっかり出来上がった頃、最初に訪れた先は中国人労働留学生の住む宿舎でした。

「ニーメンツァーオ(皆さお早うございます」
 と声をかけて入ったんですが、あちら様の驚いたの何の。そりゃそうでしょう、朝も早くから白装束に身を固めたお爺ちゃんたちが、金ぴかに光る異様な物体を担いで押し入ったんですから。
「☆☆××△△!◇◇※※★★?」
 と、よく聞き取れませんでしたが、お御輿に手を合わせて頭を下げてくださいましたので、「謝謝」と聞きかじりの中国語でお礼を述べておきました。

「さ~ぁ、つぎ行くぞぅ!」
 掛け声も勇ましく、ぼくもお爺ちゃんたちも勢い良く御輿を担ぎ始めたんですが、「まだやるのぅ~?」と誰かが口にしたのをきっかけに、御輿は軽トラックに載せてしまいました。この際だから御神体の御意向はお伺いを立てませんでした。
 こんな感じで村中を練り歩くかと思いきや、数軒の家々で腰を据えてじっくりとお神酒をいただき、夕方にお宮入りとなりました。そうです、ただひたすら飲み続けたんです。

 寂しくも宮入の時刻になると、神主さんはほぼ予定通りに現れて下さって……っていうか、ベロベロに酔っ払ってるやんけ! と予期だにしなかった驚愕の一手を放たれて動揺しているうちに、御神体はすばやく御輿神から社に戻されました。しかもさすがはプロですね、酔いを感じさせない太鼓のバチさばきも見事に、神事はつつがなく終わりを告げたのでございます。

 えっ? まだ明日も飲むのぅ~、勘弁してよぅ~!