
道立近代美術館が編集し、北海道新聞社から毎年1冊出ているミュージアム新書は、けっして派手ではないが、地方における美術出版の鑑(かがみ)というかお手本のような存在ではないかと常々思っている(筆者が書けば手前みそっぽいですが)。
たしかに図版は小さいが、それでもカラー・モノクロとも、それなりの枚数が収められているし、長い年月をかけて少しずつ版を重ねていくという出版の方法は、初刷りでおしまい-という使い捨ての風潮を強めがちな近年の中央の出版と対極にある、良心的なものではないだろうか。
ミュージアム新書は、道内在住・ゆかりの美術家の評伝がわりと多いが、今年は、道立美術館の学芸員が、道内各館の紀要などに書いた短い文章を収録している。
それぞれが数ページなので、気軽に読める。
目次を、以下に記すが、じつにさまざまな話題が収録されていることがわかるだろう。
1冊にするほどでもないが北海道の美術史には欠かせない作家やエピソードを丹念に拾っていると思う。
また、札幌ばかり見ていてはなかなか視野に入ってこない佐藤進や村山陽一といった画家や、留萌が「ゆかりの版画家」として大切にしている阿部貞夫にもスポットを当てているのは好感が持てる。
ただし、一部の文章に、「北海道美術の幕開け」と「札幌洋画界の幕開け」を、あっさりとイコールで結びつけたものがあり、大いに疑問を抱いた。おなじ本の中で、小玉貞良や北條玉洞といった画家を発掘しているにもかかわらず…。
あと、「恩地孝四郎の"万歳"」は、北海道の版画界の青春時代を描いて感動的な一文だが、文中の「浅野幌」とは、全道展会員の浅野さんのことだろうか。当時はこういう名前の表記だったのだろうか。
たしかに図版は小さいが、それでもカラー・モノクロとも、それなりの枚数が収められているし、長い年月をかけて少しずつ版を重ねていくという出版の方法は、初刷りでおしまい-という使い捨ての風潮を強めがちな近年の中央の出版と対極にある、良心的なものではないだろうか。
ミュージアム新書は、道内在住・ゆかりの美術家の評伝がわりと多いが、今年は、道立美術館の学芸員が、道内各館の紀要などに書いた短い文章を収録している。
それぞれが数ページなので、気軽に読める。
目次を、以下に記すが、じつにさまざまな話題が収録されていることがわかるだろう。
・開拓史から図画教員へ-北條玉洞 忘れられた明治の日本画家
・明治の洋画家 高橋勝蔵-太平洋を渡った開拓移民の子
・「山ハ絵具ヲドッシリツケテ…」木田金次郎の素描
・小熊秀雄のコラージュ
・リリスの菊ちゃん 札幌洋画の青春期と山本菊造
・上海の外套(上野山清貢)
・北の女流・高木黄史と<ダリヤ>
・アール・デコの漆芸と濱中勝
・パリ派と北海道派(小柳正)
・昭和初期における水彩画振興の一例 佐藤進-水彩画との出会い
・「シマ馬の絵」のこと(国松登)
・荒原の"立てる像"-小川原脩の失われた<人>
・早瀬龍江-遅れてきたシュルレアリスト
・北海道日本画壇の牽引者-本間莞彩
・阿部貞夫と留萌
・難波田龍起と旭川
・アンパンとタピラコ-村山陽一と旭川の仲間たち
・栗谷川健一と札幌オリンピックのデザイン
・小玉貞良筆<蝦夷国魚場風俗図巻>-萬屋印の鮭、海を渡る
・海を渡った蠣崎波響
・初期北斗画会の活動 北海道美術の幕開けを告げる
・アネモネ画会展のこと
・『さとぽろ』と二〇年代・札幌の青春-相川正義の日記から
・札幌詩学協会と外山卯三郎
・函館に渡ったロシアの名画
・彩人社-戦前の函館で試みられた前衛美術運動について
・本間紹夫と北海道の工芸
・「我が心境を一変させて…」人間国宝・黒田辰秋と北海道の木工芸
・北海道独立美術作家協会と新興美術運動
・恩地孝四郎の"万歳"
・「松方コレクション展」の記録
・「無理性芸術株式会社」について
1冊にするほどでもないが北海道の美術史には欠かせない作家やエピソードを丹念に拾っていると思う。
また、札幌ばかり見ていてはなかなか視野に入ってこない佐藤進や村山陽一といった画家や、留萌が「ゆかりの版画家」として大切にしている阿部貞夫にもスポットを当てているのは好感が持てる。
ただし、一部の文章に、「北海道美術の幕開け」と「札幌洋画界の幕開け」を、あっさりとイコールで結びつけたものがあり、大いに疑問を抱いた。おなじ本の中で、小玉貞良や北條玉洞といった画家を発掘しているにもかかわらず…。
あと、「恩地孝四郎の"万歳"」は、北海道の版画界の青春時代を描いて感動的な一文だが、文中の「浅野幌」とは、全道展会員の浅野さんのことだろうか。当時はこういう名前の表記だったのだろうか。