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中井延也「開拓のイメージ」 旭川の野外彫刻(25)

2021年02月07日 12時15分39秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 買物公園と七条緑道の交叉点の中央にそびえ立っているのが、1972年に、買物公園のシンボルタワーとして設置されたこの作品です。



 コールテン鋼で作られ、高さは21メートルもあります。
 27メートルあった多田美波「座標」無き現在、道内でも最も大きな野外彫刻の一つといえるのではないでしょうか。

 中井延也は旭川の隣町、上川管内愛別町生まれ。
 『あさひかわと彫刻』によれば、旭川の常磐中、旭川東高を卒業し、東京藝大に学んでいます。99年に亡くなりました。
 石の抽象彫刻が本領で、鉄の作品は珍しいと思われます。
 故郷の愛別町で制作に取り組んだそうです。
 

 筆者がくどくどと述べるまでもなく、楽しい作品です。

 四角錐の周囲には、馬車の車輪や漁網、魚や海藻、農具のフォークやかんじき、鎖やはしご、舟のいかりなど、さまざまなものが切り抜かれたかたちの平面になって、ちりばめられています。
 視力検査の切れた輪のような形がいくつか並んでいるのが見えますが、馬の足に付ける蹄鉄でしょうか。
 なかば抽象化された人のかたちも取り付けられていて、眺めていて飽きません。

 素材がコールテン鋼なので、ちょうどいいぐあいにさびが浮かんで、開拓時からの歴史の長さを感じさせます。

 てっぺんには円環が、十字形の支えで主塔に接続され、ぐるりと取り囲んでいます。
 双眼鏡がほしくなりますね。
 いろいろな形がつながっている円環です。





 こちらのサイトによると、59年から98年まで新制作展に出品していました。
 64年ユーゴスラビア国際彫刻シンポジウム 参加
 71年~74年帯広市緑ヶ丘公園シンポジウム・ディレクター
 75年八王子市彫刻シンポジウム 参加
とあります。
 彫刻の世界でいう「シンポジウム」は、パネルディスカッションではなく、共同現地滞在制作のような意味合いです。

 多摩美大では71年から助教授。
 83年から亡くなるまで教授でした。

 愛別町の農村公園内には「石の彫刻公園」が2015年に整備され、彼の作品が12点常設されているそうなので、帯広・緑ケ丘公園ともども、いずれ見に行きたいです。




過去の関連記事へのリンク
中井延也「井上靖文学碑」 旭川の野外彫刻(18)
中井延也「舞・I」(北見)





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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白い作品です。 (怜な)
2021-02-07 16:08:11
こんにちは。

買物公園の周辺を何度か歩いています。まったく、気が付きませんでした。
楽しい作品ですね。今度、デジカメで拡大しながらじっくり見てきます。

多田美波「座標」も建物の飾りが、こちらのブログで作品とわかりました。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2021-02-07 18:22:01
怜なさん、こんにちは。
これは見飽きない作品です。
石の彫刻家が鉄の具象作品を作ったという点もおもしろいです。
このシリーズはまだ半分くらい残っているので、よろしくお願いします。
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