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北海道美術ネット別館

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■第56回北海道書道展=招待・会員 (2015年4月29日~5月3日、札幌)

2015年05月03日 10時00分35秒 | 展覧会の紹介-書
 北海道書道展は、書では道内最大規模の団体公募展である。
 審査は、漢字多字数、漢字少字数、かな、近代詩文、墨象、篆刻・刻字の6部門に分かれている。
 基本的には、一般、会友、会員の3段階で、これは道内の美術の団体公募展と同じ。ただし、ベテラン会員は「招待会員」という扱いになっている(さらにいえば、中野北溟さんは超別格ということらしく、「招待作家」という肩書である)。
 また、大賞と準大賞は、一般からではなく、会友から選ばれる。

 筆者は、書道についてはまったくのしろうとであるが(書についても、と言うべきかもしれないが)、いくつか目に付いた点や、気に入った作品について述べたい。

 漢字では、馬場怜「花」を挙げたい。
 第1回展で会員に推挙された大ベテランだが、線質は美しく、気品と生命感が伝わってくる。

 会場でいちばんびっくりしたのは、三上雅倫「母 金文による」。
 先日の札幌墨象会展でも、おなじ趣旨の作を見たのだが、そのときから向きが90度回転しているのだ。横に貫く線が縦になっている。その線が最後にうねるのは、前作と同様である。ただし、札幌墨象会展の作と同一ではない(落款を見ればわかる)。

 あふれる力感をたたえる作よりも、空白の美しさを生かし、力をすっと抜いた作が、目に付く。
 青木空豁、藤根凱風、水上祥邦、三橋啓舟、清兼吼、大坪雅子などの面々である。
 紙いっぱいに文字を広げるのではなく、あえて文字のまわりに白い部分を残すと、字が引き立って見えてくる。
 水上さんは「白一色」という字なのに、紙は灰色なのがおもしろい。

 水間臥猪「秋山帯雨」は、「帯」の縦線にこめられた力と、ふっと力を抜いたような「雨」との対比がよかった。

 一方、安藤小芳は、ぱさぱさのかわいた筆をわざと使っているような、不思議な線質の作であった。

 多字数の行草書は、意外と少ない。
 その中では谷雪蘭の「花宮…」が、行書のもつリズム感が感じられて、楽しい。

 島田無響は遺作。「宙 俺の中には何にもないよ カラッポサ」
 死を前にしてのこの境地。

 かな。
 こちらも、線質にぐいぐい力をこめた作はあまり見なかったような気がする。そのかわり、散らし書きのアクロバットというか、下半分に途中まで書いて、最後の7文字だけ最上部に飛ぶといった、大胆なちらし方で書いた作がいつになくめだったように思う。竹内津代「もろともにあはれとおもへ山桜」と来て、「花よりほかにしる人もなし」は最上部に書かれているのだ。川口子、大川瀟湖、乗木美穂子も同様である。

 物故会員として安喰のり子、石井華賀子の作が展示されていた。
 安喰は「あさ寒のすヾめ啼くなり忍竹」。石井は、万葉集の山部赤人。これは、万葉仮名で書かれているので、漢字作品と見るべきか。かなと漢字をつなぐような作品。

 近代詩文も、会友や一般の会場に行くとたくさんあるオーソドックスなタイプの作品が意外と少ない。つまり、詩句の中から印象的なひとことを大きく激しく書き、残りを周囲に書く、直線が多く、線の鋭い作風である。そういう作は、大川濤湖など、あることはあるが、案外と少ない。
 ただし、若い感覚を打ち出しやすいのもこの部門らしく、大高蒼龍「White Out」、井川静芳「0 真新しいゼロ」などは、斬新だと思う。

 ほか、上山天遂は、篆刻よりも字釈の部分が大きな作品がこの数年続いている。
 こういう、ジャンルをまたぐような作は、会員の会場以外ではなかなか見られない。
 ほかにも、力作は多かった。ひとりひとり名前を挙げられず申し訳ありません。

 最後に、中川蘆月は、3月まで放送されていたNHKテレビ小説「マッサン」の主題歌である中島みゆき「麦の歌」を書いている。あらためて読むと、ドラマの物語にぴったりであることが分かり、いい歌詞だな~と、しみじみ感動したことを書いておきたい。
 


2015年4月29日(水)~5月3日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)



【公募作品】5月5日(火)~10日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー

・地下鉄東西線バスセンター前


【会友作品】5月8日(金)~12日(火)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
札幌パークホテル(中央区南9西3)

・地下鉄南北線中島公園から徒歩2、3分


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