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■第33回 道彩展 (2013年9月18~23日、札幌)

2013年09月25日 20時58分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 5年ぶりに「道彩展」を見た。
 道彩展は、北海道水彩画会による団体公募展で、道内の他の団体展と同じく、一般→会友→会員の3段階からなっている。
 5年前には、会の実質的な指導者であった画家の八木保次さんがご健在だった。その後、会の運営などはどうなっているのだろう。武田輝雄、栗山巽、小堀清順、中田やよひといったベテラン勢は今回も元気に出品していた。会員をふくむ出品者の大半を女性が占めていること、札幌圏からの出品が過半数を占めていることなどは、変わっていないようだった。

 「水彩画」という語から人がイメージするのは、明治期の大下藤次郎や、英国の写実的な風景画・静物画なんじゃないかと思うのだが、道彩展は、荒っぽいタッチの人物画が以前から多かった。
 「水彩画とは、こういうものだ」という固定観念やしがらみの少ない、北海道らしさの現れといえるのかもしれない。
 今回見た限りでは、人物が若干減って風景画が増えたように感じたが、統計をとっているわけではないので、はっきりしない。
 フォーブ調ではない絵が少しは増えてきているようであるが、会場の雰囲気が一変するほどの変化があったわけではないといえそうだ。
 それより、個人的に気になったのは、会員、会友、一般の技倆の差が見ていて分かりづらかったこと。良い絵だなと思ったら、ただの入選だったり、このあたりは筆者と観点が異なるのだろう。

 静物画を見ていると、メルロ=ポンティやモランディじゃないけれど、「物の存在」ってなんだろうと、あらためて考えさせられる。
 たとえば川上睦子「時間」は、卓上の食器などを描いているようではあるが、その紺色の器の輪郭線は溶解して、周囲の空間と溶け合っている。あるいは、黄色い中央部と茶色の矩形の関係はなんだろうと考える。そうやってみていくと、この絵が具象化抽象かなどというのは、どうでもいい問いのような気がしてくる。
 一方で、工藤路子「memory ~RED~」は、背景の卓や壁の境界がなくなって赤一色となり、物の存在が浮き上がってくる。太田智子「百合のある静物」も、ユリやコーヒーミルが際立っている。
 これらの絵は、コトバとは別のアプローチで存在論に迫ろうとしているのだと思う。

 以下、順不同で気になった作品。

大橋頼子「銀杏」 あいかわらず異彩を放っているなあ。クリアな色彩と、精緻な筆運びで、黄色く染まったイチョウの大木を描いている。魚眼レンズでとらえた写真のような構図もユニーク。

辺見富美子「うろこ雲」 太陽や月を入れると画面が幼稚っぽくなりがちだが、満月を中心からわずかに外すことで、この問題をクリアしている。周囲の雲には、オレンジや水色など、意外なほど多くの色がちりばめられている。

伊東幹子「真夏のいろどり」 飛び散る白や黄緑の線と、レモンイエローのしぶきが、爆発するエネルギーを感じさせる。

栗山巽「宙―生命ソラ  イノチ 」 以前のような、天体を思わせる丸が減って、黒い不定形の面が全面に出てきた。建築図のような構築性と、青く抜けていく部分が巧みに配置された構図の妙。

木田喜重「ガーデンと静物と」 青いテーブルに黄緑の水差しなどを真横から描く。マチエールが面白く、他の静物画とはちょっと違った雰囲気を感じた。


 会友。

久野省司「晩秋」 白を基調に枯れた野を描き、寂寥感が非常によく出ている。灰色の空にガンの群れが列をつくっているのが効果的。会員推挙。

林田理栄子「作品 №2」 オーカーを主体に、白や黒の線が躍る。会員推挙。

中島恭代「幸せな椅子」 バラのアーチ、白いいすなど、道具立ては、三越のギャラリーに展示されている二科会員の絵のよう。右側をあけて、奥へと視線を導くようにした構図がうまい。


 入賞、入選。

馬道よしゑ「夏との語らい」 全道展会員の中丸茂平を思わせる、草むらに対する地味な低めの目線。それだけにとどまらない、筆の勢いが、ちょうどいいぐあいに画面に動感を与えている。道彩展賞。

伊勢幸久「耐える」 古い建築を下から見上げた角度が良い。スケール感が出ている。

河井恵子「ふるさと」 どこまでも平らで黄色い野。これがふるさとなんだろうか。



2013年9月18日(水)~23日(月)午前10:00~午後6:00(最終日~4:30)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

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