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■第28回道彩展 (9月21日で終了)

2008年09月24日 23時41分39秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(文中敬称略)

 デ・クーニングとまではいかずとも、フォーブ調の荒っぽいタッチの絵が多い道彩展。
 ことしも第1室には、会員、会友のそうした傾向の絵が集まっている。

 その中では、青木美樹(小樽)「鳥の来る森」が、ちょっとクレーを思わせる画風ながら興味ふかい。
 全体的にはクリーム色の画肌。左上に月が、右下には水色の色斑が、さらに左下には水色の塊が描かれている。広い中央部には、十字形や細い線が不規則にちりばめられており、独特の詩情をただよわせている。

 道彩展では少数派の写実系として、ベテラン小堀清純(札幌)の名は欠かせない。
 今回の「ランプのある静物」は、題のとおりの落ち着いた1枚だが、ドライフラワーの大きさに比べると、ワインの瓶が小さすぎるように感じられ、なんだかふしぎである。

 中橋るみ子(札幌)「dance」は、マティスの有名な「ダンス」を引用した作品。心地よい静物画に仕上がっている。

 筆者個人としては、第2室が白眉であった。
 道彩展の指導者格である八木保次(札幌)。その両どなりを、栗山巽(江別)「宙-星雲」と、折登朱実(札幌)「浪と星」がかためている。
 八木は自作に「風景」と題しているが、いつものとおり、激しいタッチの熱い抽象である。一時期見られた紫や紺のしぶきは後退し、モノクロームの度合いの高い画面になっている。もっとも、本人は、じぶんの絵は抽象画ではなく風景画だ-とうそぶくのかもしれないが。

 栗山は、宇宙的なひろがりのある抽象画を描き続けており、道彩展でも道展でも、見るのがたのしみなひとり。
 今回も、寒色主体に、美しさと動感のあふれる画面になっているが、近づいて見ると、じつにさまざまなものを表面にはりつけて、画肌の変化を出すことに意を用いているかがわかる。

 折登は、灰色の濃淡が全面にわたるなかに、家の記号のような線がひかれている-というだけの絵。
 かぎりなく抽象に近づいている。
 
 この部屋には新進の大橋頼子(札幌)の「仰樹」もある。
 リアルな筆使いで、大木を下から見上げる視線でとらえている。幹も枝も葉も、すべて緑色の絵の具で描写されているが、諧調は美しく、とりわけコケの質感は、水彩とは思えないほどだ。

 会友に移ろう。
 曽我由紀子(江別)「北大の池III」。
 はすの葉を茶色の太い輪郭で囲んでいるのがめずらしい。花だけが輪郭線を持たずに描かれているのもユニークなアクセント。

 横山順一郎(苫小牧)「待桟の漁船群」。
 厚塗りが効果的。空のレモンイエローもおもしろい。

 真野聡子(札幌)「澱・よどみ」。
 この人もいろいろな種類の紙を貼り付けて、画肌のバリエーションを出そうと悪戦苦闘している。安直なコラージュとは異なる努力に好感を覚えた。

 一般だが、最高賞にあたる協会賞には、小林ゆかり(江別)「耕大な大地(ママ)」が選ばれた。
 さまざまな緑の矩形を組み合わせた抽象画で、あちこちにアーチ型や三角形が配されている。がっしりした画肌がいちばんの魅力かもしれない。

 丹保恵利子(江別)「晩秋」は、サンゴ草の咲く湿原がモティーフだろうか。
 凄絶なまでのさびしさ、孤独感が漂う。

 金田恵伊子(日高管内新ひだか町)「夏霧」は、アヤメなどの花を丁寧に、その上空気感を生かして描いている。

 冒頭で荒々しい作品が多いと指摘したが、賞を受けたり会員に推挙された人の作品を見ると、かならずしも現在の会員の画風とは相容れない人が多い。
 作風の多様化は望ましいことだが、これから道彩展がどのような方向にむかうのかは、まったく予想がつかない。 
 

08年9月17日(水)-21日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


第27回道彩展 会員会友展(08年1-2月)
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