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北海道美術ネット別館

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フィリップ・キング「山頂」 釧路の野外彫刻(34)

2012年10月02日 22時48分52秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 「釧路の野外彫刻」シリーズ、まさかの再開である。

 釧路市郊外(つまり、市街地と湿原のはざま)の大規模運動公園には、英国と日本の大御所による大作が1点ずつ設置されており、いずれも見ごたえのある作品になっている。
 これは独断だけど、道内の野外彫刻をけっこう見てきたが、この2点は、屈指の優品といっても過言ではないと思う。

 このフィリップ・キングの作品も、角度ごとに見え方が異なり、周囲をぐるぐる回っていてもちっとも飽きないし、それぞれに妙味がある。

 そして、ずっしりとした量塊の感じをたたえつつも、何か音楽的な、軽快さを併せ持っているようだ。
 



 たぶん、正面はこの位置。
 七つの音階が連想される。
 そこから、鍵盤をたたく音が聞こえてくるような気がする。




 フィリップ・キングは1934年チュニス(チュニジアの首都)生まれ。20世紀英国の最も著名な彫刻家のひとり。
 Wikipediaによると、アンソニー・カロの最も高名な弟子であり、ヘンリー・ムーアの助手としても働いた。
 カロには、ケンブリッジ卒業後、セントマーチンズ美術学校で学んだ。若い頃は、パリにも長く滞在したという。
 のちに、王立アカデミー教授。




 それにしても周辺が広い。
 この運動公園は、例えば陸上競技場からテニスコートに行くには車で移動することが前提となっている。
 北半分は、はるかに続く釧路湿原に接している。



 The stepped cube-cloud
struggles rising while fingers
strike ascending keys.

 懸命に昇る四角い雲の階段、
 指は鍵盤で上昇音を叩きつつ。
  




 北海道とも縁があり、1998年に岩見沢市が開いた彫刻アートキャンプでは、アドバイザーとしても招かれている。
 このとき、北海道新聞の「ひと」欄に載った記事が、彫刻家の人となりをよく描いていて興味深い。



(前略) ケンブリッジ大の学生時代、創造的な仕事に就きたいと、詩や絵画に挑戦、試行錯誤した。学生四十人のデッサンクラスにいたとき、偶然、隣に学生五人だけの彫刻クラスがあった。授業密度の濃さにひかれ、扉をたたいた。それが人生を決めた。

 初期作品は重いイメージ。一九六〇年代後半からは開放感にあふれた作品に。変化のきっかけはアトリエを都会から田舎へ移したことだった。「ビルの谷間で見えなかった空の美しさに気付いた」。そのころ来日し、「上」という方向性を表現した代表作「スカイ」を大阪万博で作った。

 素材に、グラスファイバーを多用する。実は、住まいの上にアトリエがあったため、軽い材料しか使えなかったからだという。偶然の連続。彫刻家として大成するのが神の導きだったかのようだ。

 大好きな芸術家はピカソとマティス。絵画の中に、彫刻の既成概念を壊すヒントが潜んでいるから。アトリエを英、仏に持つ。英国ではキノコ採り、仏・コルシカ島でウインドサーフィンを楽しむ。(以下略)








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