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■第14回示現会北海道作家展 (2013年10月17~22日、札幌)

2013年10月21日 21時22分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 示現会は1947年、楢原健三や奈良岡正夫ら具象の洋画家が旗揚げした、日展系の団体公募展。
 ただし、北海道作家展はもう少し緩い集まりで、東京で開かれる本展には出品していない人も参加している。

 拝見したのは4年ぶりだと思うが、会場が半分になり、点数も1人1点になっていた。また、長老の米澤栄吉さんが鬼籍に入り、作品が見られないのはさびしい。

 冒頭画像の手前は、中山一博(札幌)「ベンチのある路地裏」 F80。
 これまで小品しか描いたことがなく、初めて挑戦した大作とのことだが、なかなかどうして詩情のある作品に仕上がっている。とくに背後の壁の表情が良い。左下の処理がいまひとつ不確かなため、透視図法がずれて見えるのが惜しい。

 その隣は、藤田敏次(札幌)「岬待春」 F100
 



 草刈喜一郎(帯広)「炭鉱の一隅」 F100

 炭鉱を描き続ける草刈さんが、江別を引き払ったあともこうして新作を出しているのは、ほんとうにうれしい。地味ながら、ふつうなら見過ごしてしまいそうな建物の片隅を、じっくりと描いている。
 それにしてもリアルなタッチだなあ~と感服していたら、なんとこれは、支持体がカンバスではなく板で、表面を彫刻刀で削っているとのことだ! 絵具をずいぶん盛り上げていると思ったのは、実は、支持体自体を削って、凹凸を表現しているのだ。とくに、羽目板の釘穴の表現などは、たしかに筆やナイフを用いて絵の具の盛り上げであらわそうとしても、ここまでうまくやるのは至難の業だろう。
 ただし、草刈さんの名誉のために言っておくが、技法のおもしろさで勝負しているにぎやかな絵では、決してないのである。画面の凹凸は附随的な技法として採用されているに過ぎない。微妙な光と影の具合を見つめる視線の確かさは、今なお健在なのだ。




 石川孝司(北見)「駅―2013年―」 F100

 北見に3年余り住んでいたのに石川さんにお会いできなかったのは残念だが、冬の網走市内の、古い駅舎を題材にしはじめてからもう何年になるのだろう。いい意味でのしつこさが、石川さんの画業の根底にある。
 そういえば、北見にいたのに、釧網せんもう線に乗らなかったのは悔やまれるなあ。




 下田敏泰(札幌)「早春の渓流」 F100

 下田さんお得意の、いざり川の上流である。
 ピンク色があちこちに隠し味的にちりばめられていて、どうしても寒色が主体となる4月10日ごろの風景にいい味を与えている。ただし、遠景の木々が、一見花を咲かせているように見えるので、下田さんは
「この展覧会が終わったら、また描き直します。空だってもう何度も描き直してる。まあ、それが楽しいんですよ」
と笑顔で語っていた。




 右は、河合幹夫(小樽)「夕映えの湿原」 F50=水彩
 フォルムが不分明なのは、湿原の風景画としてはむしろプラスに作用していると思う。
 中央は、多田美智子(札幌)「兆し」 F80
 廃屋をすこし見上げるような角度で描いているのが効果的。空の明るさとうまく対照になっているのだ。

 それ以外の作品は次の通り。千々松さんの作品は刺繍である。

岩佐邦夫(江別)「花咲く霧多布岬」 F100
河越幸子(札幌)「午後の路(スペイン)」 F80
菊地孝子(札幌)「希望」 F100
坂井たかし(釧路)「春風」 F80=水彩
中村昭夫(江別)「夕映えの尾道」 F100
仲浩克(札幌)「春の月寒公園」F50
米本孝(北広島)「美瑛を旅して」 F80
千々松洋子(札幌)「ファミリー(サウンド オブ サイレンス)」=工芸(協力出品)


2013年10月17日(木)~22日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(中央区大通西3 北海道新聞本社 道新ぷらざ内)


□示現会 http://shigenkai.jp/

第10回示現会北海道作家展
第9回(2008年、画像なし)
第8回
2006年(画像なし)
2003年(画像なし)
2002年の小品展(12月20日の項、画像なし)
2001年(画像なし)




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