ヤボ用で本籍地である大阪市住吉区の役所まで。
なに、祖父母の代からの倹しい借家があっただけで、
今や縁故のもの、何もなし。
無案内な場所だけに、昼飯はここと決めてきた。
あべの筋沿いの「あさず」。
昼時間をちょい外して来たが、鰻屋は待つのも味のうち。
いらちの大阪人も旨ければ待つはず。
ここは江戸前だけに、「蒸す」という工程が挟まる分時間がかかる。
お、意外と出てくるのん早いやないか。
さては、白焼きまで済ましてたんかいね。まぁまぁ、致し方おまへんな。
蒸してからタレ浸けながら焼き上げるから、柔らかい。
軟らかいからして、こうした身を持ち崩すのは残念。
ま、味とはそう関係ないけどね。
焼きの加減はいい具合。
鰻が出てくればもう後は一心不乱に。 酒もおちおち飲んでいられない。
若い主人は鰻屋での長い修業を経ての独立ではなく、短期間働いたのち、
自力で勉強したとお母さんから聞いた。 ま、いいんではないか。
肝吸い、香の物
日頃はあまりお呼びのかからない奈良漬けだが、
鰻の時はどうしても欲しくなる。
山椒は最初からいっぱい振りかけるバカがいるが、後半の味変で使うべし
つれが頼んだ、櫃まぶし。
小さいが深さがあって、ご飯はたっぷり。
女性には丼持って掻き込む訳にもいかず、
お櫃によそって食べる櫃まぶしが人気なのもわかる。
ご飯が多いのでお裾分けに浴する。
これはこれで旨いなあ~
最後はだしをかけて
これで残りの日本酒をきゅ~っと
上方落語の「軒付け」では浄瑠璃の度胸試しとして
家々を回って、玄関先で語る。
三味線は「うまいことやったら、鰻のお茶漬け出てきまっせ」の口車に騙される。
この三味線、「トテチントテチン」「チリトテチン」「テンツテンテ~ン」
の3つしか弾けない超初心者。
久々の鰻に、ふとこの話を思い出す。てんつてんてん。