散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

アベノミクスの渦から離れた視点~「事件の囚人」を避ける方法

2013年10月22日 | 経済
「景気回復 裾野広がる」、日経10/14付け、一面トップの見出しである。続けて「株高で弾みがついた消費に続き、円安で潤った企業が設備投資に動き出した。国内需要の勢いは強い」と述べる。

8月機械受注統計では民需が8千億円台まで急回復したデータを開示しているが、それ以外は予測を出しているだけ、データを分析した様子は窺われない。アベノミクス騒動で良く判ったことは、経済学が数値で成立していることを良いことに、データのつまみ食い、半端な予測の安易な使用、が横行していることだ。

そこで、私たち一般人は、全体を示すデータを用いながら、その細部を分析して特徴部分を掴み、全体像を構築する知識人、学者、ジャーナリストを見出すことだ。その内容を理解することで経済動向の筋道、課題を把握できる。

釣雅雄・岡山大准教授は、9月分貿易統計において、貿易指数の輸出「数量」の伸び率(対前年)が「世界 -1.9%」であり、各地域においても、軒並みマイナスだったことを指摘する。

更に、釣氏は言う。円安により輸出企業の業績は改善したが、これは単純に円安効果、生産量の増加に繋がっていない。更に、金額では輸入の伸びが輸出を上回り,貿易赤字が拡大し続けている。そこで、輸出企業での賃上げは,円安による(電気料金やガソリン価格の上昇などの)家計の負担増加分が,輸出企業で働く人の賃金上昇に回ったにすぎなくなるだけだ。

筆者はアベノミクスが始まった頃に経済に関する記事を初めて書いた。それは、『円安と株高に関する私たちの経済学 130303』であり、アベノミクスと異なる目線から経済を見るべきことを主張し、その中で「円安では、輸入の国民的負担に対して、輸出は大企業(輸出企業)中心の配分に止まる」ことを指摘した。ここへきて、その実態が明らかになってきたようだ。

また、釣氏は景気の回復感の最も大きな要因は「公共投資」だと言う。それは先に挙げた日経の記事と同じ8月機械受注統計を根拠とする。図を示しながら、日経が指摘した民需の8千億円台回復は、一般機械、電機機械、自動車産業での豪華ではなく、「公務」が伸びているのだ。

日経のように都合の良い部分だけを強調するのではなく、細部までデータを見て分析する”常識的な”手法が物事の本質を明らかにするのだ。従って、これは「第二の矢」の効果であって、第一の矢、異次元金融緩和による銀行資金が民間企業に回る現象とは全く違うメカニズムである。

筆者は『黒田バズーカ砲は華麗なる空砲か(2)130416』において「狙いは公共事業の正当化」であり、「黒田バズーカ砲から放たれた金融緩和の空砲は、国債を介して建設投資という“実弾”になって世の中に撃ち込まれる。」と指摘した。

釣氏は公共投資について次のように言う。
「公共投資は…長くは続けられない。…ただ、大胆な金融緩和によって財源が確保できてしまっています。」
「これは、戦前・戦後に日本がかつて経験したように,異常な支出増加とその後の財政破綻という道につながります。ここに恐ろしさがあります。」

筆者の予測は、恐らく多くの人が何となく気が付いていたことなのだろう。しかし、事案が動くにつれて、色々な情報が飛び交い、その動きに巻き込まれて、知らずのうちに「事件の囚人」になりがちなことを改めて胆に銘じる必要がある。それが自己認識の学である。

      
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