遅いことは猫でもやる

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不気味感が湧き上がる

2017-11-14 05:22:35 | 


 雫井脩介「火の粉」幻冬舎文庫 2003年刊

無罪判決を下した裁判官の一家と、その判決を受けた被告人本人との関わりを描いたミステリー小説である。

裁判官の義理の娘(息子の嫁)や裁判になっていた事件の被害者の妹夫妻なども途中から出てきて物語は複雑化する。この作者は初めて読むが、心理描写がなかなか巧である。

平穏で和やかな家庭生活の中にふっと忍び寄る違和感、不気味感、そんなものが少しずつ周りに溜まってゆくのがなんとも不気味である。登場人物の性格分類、行動様式などもきちんと書き分けられておりなかなかの力量の作者である。

謎解きはさしたることはないが、登場人物の言動の様子、の書き分けはかなりの力量の保有者だと思われる。世の中でもう少し評価を受けても不思議ではない著者だ。