遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
更新は猫以下の頻度です。

お知らせ

Twitter で更新情報が観られます。やってる方はこちらからフォローどうぞ。
http://twitter.com/gaiki_jp

現代社会の優れた警告書

2016-11-01 06:40:46 | 


相場英雄「ガラパゴス」上下 小学館 2016年刊

久々に面白い小説に出会った。64(ロクヨン)をさらに進化させたような警察小説。本当にフィクションなのか?と思うほどリアルな設定と描写である。

派遣と呼ばれる非正規労働者が正社員になるためにあがく仕組みが形成され、不条理な事件を引き起こす。グローバル企業が、世界的な競争の中で壮絶なコストダウン手段を取る。そのしわ寄せが派遣にも来る。最底辺の派遣労働者、それを差配する人材派遣業、それを利用する大企業、そこに取り入る警察、政治家など様々な人間がうごめく。いろいろな問題解決の手法がいかにもありそうなやり口である。

同時にアベノミクスと称する経済の最前線の実態が生々しく描かれている。働き方革命などという美辞麗句の陰で実態は年収200万の低賃金労働者が続々と生み出されている。「世界で一番企業が活躍しやすい国」とは「世界で一番労働者がこき使われる国」である。と帯に書いてあるが、まさにそのとおりである。この小説は社会学書ではないので、そのあたりを声高に叫んではいないが、実態描写はリアルである。

アベノミクスと称して、資本の論理を推し進めるならば必ずこの小説に書いてあるようになる。ホセ・ムヒカの主張のように、新しい価値観を導入しなければ、資本主義は行き詰まるのではないかということを感じた。現代社会の警告書として十分機能する。一読を強くお薦めしたい一冊である。