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趣向を変えては見たが

2016-02-23 06:43:34 | 


佐伯泰英「たそがれ歌麿」新・古着屋騒兵衛 第九巻 新潮文庫

手堅いファン層をとらえた佐伯泰英の時代劇シリーズ物。この作品で時代物は200巻を越えたという。今回は派手な対決シーンはない。従って剣を交えることも殆ど無いのだが、それでも一定の筆力で読ませるのは、日常会話や生活描写がよく練られているせいなのだろう。

両国の大江戸博物館を観覧した折、江戸時代は我々の考える以上に科学技術は進んでいたことや、日情の組社会が隅々まで入り込んでいたことを感じた。そんな背景を筆者はよく研究しているのだろう。

この巻は絶頂期を越えた浮世絵師の歌麿を登場させ、彼が描く浮世絵が問題を起こしかける。その問題を解決すべく主人公及び一族が活躍する。という筋立てである。前段には江戸を襲った大型台風によって街中に被害が及びその復旧に一族が奮闘しながらも、ちゃっかり隠し普請をするというおまけも付いているが、いつもどおりの見えぬ敵との武闘という筋立てではマンネリ化してきたのを作者も感じているのだろう。

本編を読み終えてふと唐突に、この時代物シリーズに入る前のスペインを舞台にした作品が懐かしくなってきた。スケールもあり武闘描写にも長けた現代シリーズがまた出ないものか。