山本周五郎 「人情裏長屋」 新潮文庫
今回の旅に持参した本は、佐伯泰英の「密命シリーズ」数冊、山本周五郎の文庫本2冊、それにナンプレ、モロッコ・フランス・キューバのガイドブックであった。
途中カナダで義弟から阿川弘之の「南蛮列車」シリーズ2冊、遠藤周作「狐狸庵閑話」を貰った。お礼にこの本を置いてきた。
山本周五郎は人情物を書かせても、大したものだ。もともと長屋で生まれた人だそうだが、人情の機微に通じており、生き方についても損得を越えた大切なものがあることを示唆している。
年をとったせいだろう、何度もホロッとさせられた。
今の日本の風潮に警告を発しているような気がしてならない。日本はもともと暖かい心情の人たちの集まりだったのではないだろうか。周五郎は単に人情を描写しているだけでなく、もうこの本を書いた時代から、失われつつあった、大切なものがあると言っているのではなかろうか。