遅いことは猫でもやる

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浅田ワールド

2011-03-24 14:11:49 | 
浅田ワールド

この頃浅田次郎に凝っている。
友人に「オー・マイ・ガアッ」を勧められて以来だが、最近も「蒼穹の昴」、「珍
妃の井戸」、「中原の虹」の三部作を読んだところだ。

この「月島慕情」(文芸春秋社版)は傑作と言っていいのではないか。この本に
は6編の短編が納められているが、冒頭のこれと、最後の「シューシャインボー
イ」は特にいいと思う。

この著者は、人情の機微、一本気な生き方を書かせたら、当代一ではないかと思
う。以前に読んだ『月下の恋人」もホロッとさせたが、「月島慕情」は気っぷの
良さという江戸っ子気質を余すところなく描いている。
主人公は地方生まれの女性だが、あっと言わせるストーリー展開でうーんと唸ら
せられた。

それとこの人は貧乏人を書くことが得意ではないのか。「中原の虹」でも張作霖
に再三「おれは貧乏人だ」と言わせている。そこが私にも共感を呼んでいるとこ
ろなのかもしれない。

裕福な家庭に育った貴方には、ちょっと違う印象を持たれるかもしれないが。

こうしてみると、浅田次郎は長編よりも中短編に佳作が多いように思える。
勿論、そうでもない長編も多いが、記憶力が衰えてきた、自分の特性かもしれな
い。

だが、まだまだ浅田ワールドは捨てがたい。