宴の風景
青年会議所時代の釣り仲間の長男が結婚した。披露宴をするという案内を頂いた。
勿論、勇んで出席した。
友人は焼肉屋を営んでおり、人柄は率直で温かいが、かねて口下手の男だとは思っていた。
場所は彼のお店で、司会進行も彼がやるという。
定刻に着席した。出席者は60人ほどか。
会が始まった。かれは用意したメモを見ながら、口上を述べはじめた。
「足元の悪い中、・・・・」ここで、はやくも彼は絶句。アガったのか、感激したのか、いずれにしても言葉が出てこない。すかさず友人席から「一杯飲ませたほうがなめらかに喋れるぞ(笑)」と野次が飛ぶ。
「・・・それでは只今より披露宴を始めます」「まず新郎新婦挨拶」 新郎はスムーズに「皆さんお忙しい中、足元の悪い中出席くださいましてありがとうございます。(略)」と初々しく、父親よりしっかりとした口調で挨拶を述べた。新婦も誠実で、働き者のようで、可愛い。焼肉屋さんの女将さんにぴったりだ。
「続いて花束授与にうつります。」「おーい、花束は何処だ」「あれっ、まだ用
意してないのか?」(爆笑)
という具合に、小さなつまずきはなんのその、和気藹々、和やかに宴は進む。
親戚、兄弟、父親の友人、近所の人達が、こもごも新郎のところに酒を注ぎに行く。「まあ一杯やれや」本人はニコニコして杯を受ける。
ひと通り終わったところで、出席者の紹介。全出席者を一人一人紹介し、紹介さ
れた人がお祝いを述べる。酒が入っているので、言いたい放題ではあるが、言葉
に険はない。みんな、「よかったなあ、うれしいなあ、お母さんが生きていたら喜
んでくれたろうなあ、お父さんはほっとするだろうなあ、この結婚で商売は安泰だ、これからも仲良くやろう。」とこもごも、自分の息子に話すように温かく喋る。
料理、酒のサービスは、仕入先の派遣社員、パートのおばさん、兄弟、家族が一
体となって甲斐甲斐しく立ちまわる。子供たちもお手伝い。日頃お店を手伝って
いるせいか、たどたどしくなく、子供ながらきちんと役目を果たしている。
畳の席は、日本酒が似合うし、話に花が咲きやすい。すっかり故郷の田舎に来た
ような雰囲気で、出席者は盃を重ねていた。私自身も青年会議所時代の仲間と話ができ、大いにリラックスできた。
友人の人柄をよーく反映した、ほっこりとした人が集まった、温かい集いだった。