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聖徳太子考(4)十七条の憲法

2021-11-12 22:23:44 | Weblog

11月12日(金)晴れ【聖徳太子考(4)十七条の憲法】

聖徳太子と聞けば、「十七条の憲法」を思い浮かべる人が多いと思います。十七条の憲法については、『日本書紀』、『先代旧事本紀』には、推古天皇12年4月3日(ユリウス暦604年5月6日)の条に「十二年…夏四月丙寅朔 戊辰 皇太子親肇作憲法十七條」と書かれているそうですから、太子様は34才になっている頃です。この頃は、文章は漢文です。仮名が使われるようになりましたのは、平安時代以降ですから、原文は漢文ですが、末尾に原文をまとめて掲載します。私自身の勉強の為にもなりますので、書き下し分を次に書きます。

この憲法は、一般民衆に対するものではなく、政治をつかさどる役人たちに対しての憲法です。しかし、現在の私たちにとっても、大変な学びがあります。私にとっては、そう思いました。あらためて感心しています。ただ長いですから、2回か3回に分けて紹介したいと思います。

一に曰く、和を以て貴しと為し、忤(さから)ふこと無きを宗(むね)とせよ。人皆党有り、亦達(さと)れる者少し。是を以て、或いは君父に順はず、また隣里に違ふ。然れども、上(かみ)和(やわら)ぎ、下(しも)睦びて、事を論ずるに諧(かな)へば、則ち事理自(おのづ)から通ず。何事か成らざらん。

*太子様は、血なまぐさい戦いや崇峻天皇の殺害などを見てきて、「和」ほど大切なことは無いとつくづくお思いだったでしょう。「達(さと)れる者少し」という個所も自らを省みてもその通りと思います。現在の政治家の皆さんにも良く味わっていただきたい「憲法」ですね。

二に曰く、篤く三宝(さんぼう)を敬え。三宝とは仏・法・僧なり、則ち四生(ししょう)の終帰(しゅうき)、万国の極宗(ごくしゅうーおおむね)なり。何れの世、何れの人かこの法を貴ばざる。人、尤(はなは)だ悪あしきもの鮮(すく)なし、能(よ)く教ふれば従ふ。それ三宝に帰せずんば、何を以てか枉(まが)れるを直(ただ)せん。

*仏教をこれほどに敬ってくださっていた太子様を、日本仏教にとって有難い存在であったと、あらためて思います。「人、尤(はなは)だ悪あしきもの鮮(すく)なし、能(よ)く教ふれば従ふ。」という個所も噛んで含めるように説いてくださっていると思います。

三に曰わく、詔(みことのり)を承(うけたまは)りては必ず謹(つつし)め。君は則ち天たり、臣は則ち地たり。天覆(おほ)い地載せて、四時順行し、万機通ずることを得。地、天を覆わんと欲(せ)ば、則ち壊るることを致さんのみ。是を以て、君言(のたま)へば臣承(うけたまわ)り、上行へば下靡(なび)く。故に詔を承りては必ず慎め。謹まざれば自から敗(やぶ)れん。

四に曰く、群卿百寮(ぐんけいひゃくりょう)、礼を以て本と為せ。其れ民を治むるの本は、要(かなら)ず礼に在り。上、礼あらざれば、下、斉(ととの)はず、下、礼無ければ、必ず罪あり。是を以て、群臣、礼有れば位次(いじ)乱れず、百姓(ひゃくせい)礼あれば、国家自から治まる。

*礼節の、人間社会に大事なことは、現代でも同じですね。

五に曰く、餮(むさぼり)を絶ち、欲を棄てて、明らかに訴訟(うったへ)を弁(さだ)めよ。それ百姓の訟(うったへ)、一日に千事あり。一日すら尚爾(しか)り、況(いわん)や歳を累(かさ)ぬるをや。頃(このごろ)、訟を治むる者、利を得るを常となし、賄(まかなひ)を見て讞(うったへ)を聴く。便(すなは)ち財あるものの訟は、石を水に投ぐるが如(ごと)く、乏しき者の訴へは、水を石に投ぐるに似たり。是を以て、貧しき民は則ち由る所を知らず。臣の道またここに闕(か)く。

*飛鳥の時代も、「袖の下」の力は横行していたことが分かる一文です。いつの世もそうですかね。人間に欲(物欲でも金銭欲でもなんでも)はつきもの。太子様が「憲法」に明文化して、しっかりと戒めなくておかなくてはならないことなのですね。

原文

一曰、以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。

二曰、篤敬三寶。々々者佛法僧也。則四生之終歸、萬國之禁宗。何世何人、非貴是法。人鮮尤惡。能敎従之。其不歸三寶、何以直枉。

三曰、承詔必謹。君則天之。臣則地之。天覆臣載。四時順行、萬気得通。地欲天覆、則至懐耳。是以、君言臣承。上行下靡。故承詔必愼。不謹自敗。

四曰、群卿百寮、以禮爲本。其治民之本、要在禮乎、上不禮、而下非齊。下無禮、以必有罪。是以、群臣禮有、位次不亂。百姓有禮、國家自治。

五曰、絶饗棄欲、明辨訴訟。其百姓之訟、一百千事。一日尚爾、況乎累歳。頃治訟者、得利爲常、見賄廳讞。便有財之訟、如右投水。乏者之訴、似水投石。是以貧民、則不知所由。臣道亦於焉闕。



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