「生きることについて」 ナジム・ヒクメット
1 生きることは笑いごとではない
あなたは大真面目に生きなくてはならない
たとえば 生きること以外に何も求めないリスのように
生きることを自分の職業にしなくてはいけない
生きることは笑いごとではない
あなたはそれを大真面目にとらえなくてはならない
大真面目とは
生きることがいちばんリアルで美しいと分かっているくせに
他人のために死ねるくらいの
顔を見たことのない人のためにさえ死ねるくらいの
深い真面目さのことだ
真面目に生きるとはこういうことだ
たとえば人は七十歳になってもオリーブの苗を植える
しかもそれは 子どもたちのためでもない
つまりは死を恐れようが信じまいが
生きることの方が重大だからだ
2 この地球はやがて冷たくなる
星々の中のひとつでしかも最も小さい星 地球
青いビロードの上に光り輝く一粒の塵
それがつまり
われらの偉大なる星 地球だ
この地球はいつの日か冷たくなる
氷塊のようにではなく
ましてや死んだ雲のようにでもなく
クルミの殻のようにコロコロと転がるだろう
漆黒の宇宙空間へ
そのことをいま 嘆かなくてはならない
その悲しみをいま 感じなくてはいけない
あなたが「自分は生きた」と言うつもりなら
このくらい世界は愛されなくてはいけない
【チェルノブイリ・ハート】オープニングより引用