mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

入院の記録メモ(3)青黒い夜空の眼福

2024-02-22 10:02:20 | 日記
 飽きが来るよと友人に言われた入院中に、思わぬ拾いものがあった。病室からの景観である。
 入院当初は「とりあえずこの部屋で」と言われて個室に入った。手術後2日経って、部屋を移りますという。「明るい部屋です」と看護師は口にして移動をうながした。入院する前に4人部屋でいいと答えていたからそちらへ移ると思っていた。
 明るい個室、料金は発生しません。4人部屋は男性の空きがありません、と付け加える。入院一日目に予定していた4人部屋の主たちはどうしたのだろう。「急変」で慌ただしくしていたから、その後の事態でそれぞれ個室へ移ることになったのかしら。
 これまでは病院ビルの正面、西向きの部屋。そこは窓の外を見ることもできなかった。今度は北向きの部屋。窓のカーテンが開け放たれ、ずうっと向こうにさいたま新都心の高層ビル群がみえる。その手前にはおおきな森があり、かつてその森が広がっていたところには戸建ての住宅が所狭しと建ち並んでいる。窓の外の北東側半分には芝川が流れ、その向こうには見沼田圃が二股に分かれて北へと連なっている。
 6階であったから25メートルくらいの高さだったろうか、新都心の高層ビル群は北の大宮駅周辺のビル群へと連なり、さいたま市の商業中心地域の風を吹かしている。それらのずうっと西方向には武甲山の独特の山容が見て取れ、西の方は雲に蔽われている。いかにも天下を睥睨するような景観であった。
 驚いたのは、夜。ちょうど12時頃に目を覚ましたら、外が明るい。カーテンを開けると夜空に上弦の月が驚くほど煌々と輝いていて、その背景の空が漆黒ではなく群青色のもっと深い青黒さを引き受けて半月をバックアップしているように見えて、しばし見惚れてしまった。目を下に転じると住宅地の街頭がポツリポツリとあるばかり。新都心のビルでさえ、多くの灯りを消して寝静まっているようであった。久々に黒っぽい夜景を見たように思った。
 その後の2日間は雲が張り出し、雨も降るような天気であったために青黒い夜空はこれっきりとなったが、思わぬ眼福であった。このことを記しておきたかった。
 こうして都合6日間の入院手術の暮らしは終わった。昨日はペースメーカーの会社からモニターが届いた。これは寝床のすぐそばに置いておくと、私の胸につけた機器から送られる信号を(たぶん)病院においた受信機器に送り、異常があるときには電話機マークが点灯する。その時は私から医師へ電話を入れる、とある。また送受信に問題が生じたときには別のマークが点灯して、機器の管理会社から情報送信がなされてくるのだそうだ。ありがたいといえばありがたい。
 何しろ私が死ぬまでのつき合いになる。こんな風に情報機器のお世話になった老年を送るとは、思いもしなかった。2週間後に、予後の診察。そこから更に2週間後にペースメーカーのチェックと診察と、予定が放り込まれていた。たぶん、この一ヶ月後の様子をみて、術後の模様見を終え、with-ペースメーカーの日常へと移行することになるのであろう。

コメントを投稿